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【政策】日本の"若者政策"とは?

今回は、私たち日本若者協議会が普段取り上げている日本の「若者政策」がどのようなものであるのか、若者がどのような対象と見られているかという観点から広く浅く捉えてみようと思います!

1.そもそも若者政策とは?

そもそも若者政策とは何を指すものなのでしょうか。若者政策に関する権限を持つ「若者政策担当大臣」が各国に設置されているヨーロッパでは次のような定義がなされています。

国の若者政策とは、当該国における若年層の良好な生活状況や機会を保障する政府の公約および実践である。
Youth Policy manual - How to develop a national youth strategy

2014 年に Youth Policy Labs が行った調査によると、世界 198 カ国のうち( 2013 )若者政策が存在する国は 122 カ国( 62 %)存在しており、「若者政策を改訂中または開発中」と回答している国を含めると 80 %を超えてます。

「若年層」が何歳までを指しているのか、法令が体系化されているのかバラバラであるのか、実行力があるのかないのか、各国によって定義が一様に定まらないというのが現状です。それでは日本の政策はどのようにして進められてきたのでしょうか。

2.日本の若者政策とは?

日本の若者政策を規定している法律・大綱で知っておかなくてはいけないものが 4 種類あります。

①子ども・若者育成支援推進法( 2009 年成立)
②青少年育成施策大綱( 2003年、2008 年策定)
③子ども・若者ビジョン( 2010 年策定)
④子供・若者育成支援推進大綱( 2016 年策定)

最も重要なものが 2009 年に成立した「子ども・若者育成支援推進法」です。この法律が成立するまでは「青少年育成施策大綱」と呼ばれる政府の方針が若者政策の方向性を規定していました。子ども・若者育成支援推進法が成立してからは、それに基づき「子ども・若者ビジョン」「子供・若者育成支援推進大綱」が定められ、政策が実行されました。

ここでは「子ども・若者育成支援推進法(縮めて子若法と呼ばれることもある)」という法律が存在すること、様々な名称の政府方針が定められていることを意識してください。

3.それぞれの法令が目指す方向性とは?

そして、それぞれの法令がどのような方向性を持って定められているのかについて深く掘り下げていきましょう。日本の若者政策は法令上、主に 2 つの「変化」があると考えています。

まず第 1 に 2009 年の「子若法」の成立です。青少年育成推進大綱など、子若法成立以前の若者を対象とした政策は長らく青少年の健全育成を目的とされ、育児・教育・就業支援など「保護」される対象と見なされていました。政策形成過程への参画促進に関しては、18歳投票権が成立していなかったこともあり「青年期」のための施策であると位置付けられ、子ども・若者に対する参画促進は記載されていません。

対して、「子若法」とその後作成された「子ども・若者ビジョン」では対照的に、「子ども・若者は、大人と共に生きるパートナー」と位置付けられ子供や若者の政策形成過程や社会への参画が強調されました。子ども・若者ビジョンでは次のように明言されています。

子どもや若者を大人とは一段下の存在として位置づけるのではなく、また逆に、子ども・若者を甘やかすのでもなく、子ども・若者と大人がお互いに尊重しあいながら、 社会を構成する担い手として共に生きていくことを目指します。
(『子ども若者ビジョン』第 2 章基本的な方針. 5 つの理念 )

このように第 1 の変化では、「子供・若者は保護育成の対象」という考え方から「子供や若者も社会の一員であり大人と共に社会を構築する権利主体」であるという考え方に転換しました。その中で主権者教育や審議会への参加など政策形成過程への参画の推進が目指されました。

ただしこの方針によって若者の社会参加が促進されたとは言えません。例えば、現在若者の意見聴取事業として主に、政府より配信される様々なテーマについて意見報告を行う「ユース特命特派員」などが行われています。しかし、特派員として報告した課題・提言が政府の政策過程にどのように取り上げられているか影響力が不透明です。

国連子どもの権利委員会では、各国に対し子ども・若者の意思決定への参画を「制度化」するよう次のように勧告しています。

110.意思決定過程への着実な子どもの参加が、生徒会や学校理事会の生徒代表により、成長と学校の政策と校則の実施について自由に意見を述べる中で、実現されなければならない。これらの権利は、これを実施する当局や学校側の善意に頼るのでなく、法制化される必要がある。
111.学校をこえて、国が教育政策の全側面について地方と全国のレベルで子どもの意見を聞くべきである。とりわけ、教育の諸制度、公式の教育機関と二度目の学習となる非公式の機関やカリキュラム、授業方法、学校組織、基準、予算、子どもの保護などについて、子どもに寄り添った側面を強化すること。

(引用:https://www2.ohchr.org/english/bodies/crc/docs/AdvanceVersions/CRC-C-GC-12.pdf )

こうした視点が抜け落ちているのが今の子供・若者育成支援推進大綱の大きな問題点であると言えるでしょう。

第 2 に、 2016 年における「子供・若者育成支援推進大綱」の成立です。この大綱では、前述した子ども・若者を権利主体とみなす理念が消滅し、子供・若者を保護育成の対象とみなし非行や引きこもりなど若者が抱える問題の解決を重視する方向へと舵を切っています。

前述した「子ども・若者は、大人と共に生きるパートナー」という文言が削除され、「社会形成への参画支援」に関する記述が大幅に減少しています。子ども・若者の意見表明の機会確保や政策形成過程への参画に関する施策方針は完全に削除されており、また社会参加活動に関する記述では、国際交流の推進も削除されています。

こうした背景には「困難を有する子供・若者」についての現状がより厳しさを増していることが挙げられます。

子供・若者が抱えている問題は,生まれてから現在に至るまで成育環境や成育史における様々な問題が複合しており,非常に複雑で多様になっている。
例えば,非行少年については,家庭における虐待や貧困,低学力,発達障害,学校不適応,不就労といった問題を複合的に抱えていることが,いじめの加害者については,成育環境の問題や認知的な偏りなどが問題行動の背景となっている場合も多いことが指摘されている。
『子ども・若者育成支援推進大綱(「子ども・若者ビジョン」)の総点検 報告書』

10 ~ 19 歳の自殺率が 3.1 %( 2020 年)と過去最悪を更新しており、いじめの認知件数は過去最多の61万2,496件となっています。こうしたことからも、子ども・若者をめぐる環境が逼迫しており、「参画」よりも「保護」を優先させたと推測できます。

4.終わりに

日本の若者政策を規定している法律・大綱で知っておかなくてはいけないものが 4 種類あり、中でも2009 年に成立した「子ども・若者育成支援推進法」が最も重要です。成立後、子供・若者育成支援推進大綱が約5年ごとに制定され、若者政策が進められています。

現状、自死件数やいじめの認知件数の増大から子供・若者を保護育成の対象とみなし非行や引きこもりなど若者が抱える問題の解決を重視する方向へと舵を切っています。もちろん重要な観点ではありますが、同時に子ども・若者が意思決定への「参画」も同時に重要な観点です。

現在、3月15日まで新大綱案に関するパブリックコメントが行われています。意見を表明してみてはいかがでしょうか。


参考文献

・両角達平(2016/08/06)「「若者の社会参加施策のこれまでとこれから」についてウェビナーで報告しました。」『Tatsumaru Times ブログも書ける北欧研究者、両角達平の雑記ブログ since 2011』(https://tatsumarutimes.com/archives/24658).最終アクセス2021年/1/11
・松下啓一・倉根悠城(2018)『若者参画条例の提案:若者が活き活きと活動するまちをつくるために』萌書房

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