見出し画像

偽りの僕

起床して間もなく家を出る。
満員間近の電車にはどんよりした空気が蔓延していた。

週に2回の出社。
社会人もどきの僕は、いつもその空気に身体が馴染まない。

毎日脳死で働くようになったら
僕もその空気がしっくりくるようになるのだろうか。


少し早めにオフィスに着いた。
朝ミーティングの前の10分間、なんの目的もなくパソコンを触る。
何を話せばいいのか分からないでいた。

最近、人と話すのが苦手になったかもしれない。
ここ2年弱、一人の時間が増えたからだろうか。

人間、使っていない能力は衰えるもの。
それをことごとく実感する。
元々コミュニケーションが飛び抜けて得意なわけではないが、
前までは普通になんの引っかかりもなく話せていた。
それがここ最近、なぜだか緊張する。顔が、頭が、引き攣る。

昔から嫌だった赤面ぐせ。
それがこの頃、顕著に発揮されてしまう。
狼狽えてしまっているのが嫌なほどわかる。

はぁ。

無理やりテンションを上げて無邪気な僕に変身する。
そうやってハイになると子供っぽくたくさん話せる。
余裕のない好奇心前面の振る舞いは、恥ずかしさを麻痺させてくれる。
僕の逃げの一手。必殺技。超主観的になる感じ。

そうなっている僕自身を最近自覚するようになってきた。
昔までは無意識にそうなっていたし、それがデフォルトであったように思う。
深いコミュニケーションから逃げるようにハイになっている自分を自覚するようになったこの頃は、
そんな状態の僕自身に若干の居心地の悪さを抱くようになった。いや、若干どころじゃないな。

どんな時も自分がどう見られるかを気にしてしまう。
正確には、すごいやつだと、面白いやつだと、充実しているやつだと
思われたいと思ってしまっている。

「出社していない時は何してるの?」

そう聞かれた。
僕は答えた。

「他の案件やったり自分の作りたいアプリ作ってます、、、
 誰かと予定ない時は」

"誰かと予定ない時は"
そんなことを咄嗟につける。つけた後にあーと思って気分がローになる。
そんな当たり前のことをわざわざつけ足す。
もっと誰かと何かをしたいのか、それともただ充実していると相手に思われたいのか。

そうやって架空の自分になろうとしているのが苦しい。

自分の弱いところを見られたくない。芯の部分の。
表面的な部分の弱点はむしろ触れられると嬉しい時もあるんだけどな。

自分の弱いところ、気にしているところに触れられそうになると、
狼狽える。はしゃぎ出す。オドオドする。

今の自分に本当の意味で自信を持てるようになりたい。
どうなればそうなれるのかまだ明確には分からないけど、
全力で生きていることはすごく大事な気がする。




いいなと思ったら応援しよう!