モダンエルダー 40代以上が「職場の賢者」を目指すこれからの働き方
チップ・コンリー
著述家、ホスピタリティー起業家。
1.これからの時代に不可欠な「モダンエルダー」とは?
「モダンエルダー」――「賢い年長者」を意味するこの言葉は、40代以上の方々にこそ目指してほしい未来の姿です。なぜなら、今まさに10億ドル規模の未公開企業が直面する課題を解決できるのは、この「モダンエルダー」だからです。
デジタルネイティブの若き天才たちが躍進する一方で、彼らのリーダーシップはまだ未熟です。例えば、ウーバーの創業者トラビス・カラニック氏。彼の経営ミスが原因で、取締役会から解雇されたことは記憶に新しいでしょう。このような事例からも明らかなように、若い起業家たちには年長者の「知恵」が必要不可欠なのです。
心理学者ダレル・ワージー博士も「年長者の方が、長期的な利益につながる判断に優れている」と述べています。企業の未来を見据えた戦略的な判断は、経験豊富な年長者に軍配が上がるのです。つまり、年長者の「知恵」と若い起業家の「天才」を掛け合わせることで、最強のビジネスチームが生まれるのです。
さらに著者は、「異なる世代が相互に補い合うことが現代にぴったりだ」と述べています。今、私たちは初めて5世代が同じ職場で共に働く時代に生きています。沈黙の世代、ベビーブーマー世代、X世代、ミレニアル世代、そしてZ世代。長寿化とともに、長く働くことが求められる現代において、ロボットにはできない賢く思いやりに満ちた力が、モダンエルダーにこそあるのです。
2.モダンエルダーの要素
現代社会が抱える複雑な問題に立ち向かうためには、特別な知恵と洞察力を持つ「モダンエルダー」が不可欠です。しかし、年齢を重ねれば誰もがモダンエルダーになれるわけではありません。では、一体どんな人がモダンエルダーと呼ばれるのでしょうか?
モダンエルダーの特徴として挙げられるのは、「➀優れた判断力➁本物の洞察➂心の知能指数④俯瞰的な思考力⑤奉仕の心」の5つです。
➀優れた判断力
過去の判断の失敗から得られる「経験の賜物」。多くの経験を通じて培われた洞察力により、突如現れる問題にも的確に対処することができます。過去の教訓を活かし、柔軟に対応する姿勢こそが、モダンエルダーの真骨頂です。
➁本物の洞察
直感的な洞察力を持つモダンエルダーは、経験豊富なゆえに多くの情報から瞬時に本質を見抜く力を持っています。この編集能力とも言える力は、年長者の特権とも言えるでしょう。瞬時に核心を掴むその力は、まさに「本物の洞察」と言えます。
➂心の知能指数
自分の感情を抑制し、他者の気持ちに共感できる力。それが「心の知能指数」です。モダンエルダーは、自分の感情に敏感でありながら、他人の気持ちを理解し、共感する能力に長けています。忍耐強く相手の感情を読み取るその姿は、まさに成熟した大人の証と言えます。
④俯瞰的な思考力
物事を全体的に捉え、その核心を掴む能力です。中年になると脳の記憶力やスピードは衰えると言われますが、代わりに俯瞰的な思考力が向上します。全体を見渡し、臨機応変に視点を変えることで、問題の核心に迫る力が磨かれるのです。
⑤奉仕の心
未来の世代に前向きな影響を与えたいという心。それが「奉仕の心」です。年齢を重ねることで、自分の立ち位置がより明確になり、これまでの経験や知恵を次の世代に伝えたいという気持ちが強くなります。その奉仕の精神こそが、モダンエルダーの最後の特徴です。
これらの特徴を備えたモダンエルダーこそ、これからの時代に求められる存在です。彼らの知恵と洞察力が、次の世代を導く灯台となるのです。年齢を重ねることが、そのまま価値となる時代。そんな未来を、私たちは迎えつつあります。
3.モダンエルダーへの道
現代の急速に変化する社会で、若き才能が芽吹くためには、経験と知恵を兼ね備えた「モダンエルダー」の存在が不可欠です。では、モダンエルダーになるためには、一体どうしたらいいのでしょうか?著者はその秘訣として、「進化する」「学習する」「コラボレーションする」「相談に乗る」の4つの能力を挙げています。今回はその中から「進化する」と「コラボレーションする」について深掘りしてみましょう。
進化する──「アイデンティティ・ダイエット」で自己刷新
モダンエルダーになるための第一歩は、「進化する」ことです。この進化とは「アイデンティティ・ダイエット」を意味します。自分のキャリアにおける独自の資質や特徴を見つめ直し、刷新する能力を指します。
具体的には、まず同僚や友人に「私のことを思い浮かべる時、どんな特性が見て取れますか?」と尋ねます。その回答を「良い特性」と「課題となる特性」に分けて紙に書き出してもらいましょう。自分自身でも同じ質問に答え、その結果を見比べます。そして、自分のアイデンティティが明確になったら、その中から最も高めたい資質や特徴を選びます。それを伸ばすために、日常生活に取り入れる習慣や行動を決めるのです。変化を受け入れる度量が問われますが、これができれば、キャリアの再構成も容易になります。まさにモダンエルダーとしての道が開けるのです。
コラボレーションする──名指揮者としての役割
次に、モダンエルダーとして欠かせないのが「コラボレーションする」能力です。多くの若いマネージャーは、リーダーシップやチームビルディングに関する経験が不足しています。そこで、モダンエルダーの出番です。若者たちの指導者として、彼らと上手く協力し、彼らを導く役割を果たさねばなりません。
モダンエルダーは、メンバーが不安を抱えずに自分の能力を最大限に発揮できる環境を整え、チーム全体がミッション達成に向けて一体となる規範を作ります。チームを一つのオーケストラと例えるなら、モダンエルダーは名指揮者です。個々の奏者が奏でるメロディーを巧みに束ね、調和のとれたハーモニーを生み出すのです。これこそが真のコラボレーションと言えるでしょう。
モダンエルダーになることは、自己の進化と他者との調和を極めることに他なりません。この二つの能力を磨くことで、若き才能たちにとっての道しるべとなり、未来を切り開く手助けができるのです。あなたもモダンエルダーとしての第一歩を踏み出してみませんか?
まとめ
「歳の甲」ーー年齢を重ねることで得られる知恵や経験を指す言葉です。これは若者が持たない視点や洞察力を意味し、時間の積み重ねによって形成されるものです。経験を通じて得た知識や判断力は、年を取ることの価値を示しています。「歳の甲」は、人生の様々な局面で重要な役割を果たし、個人や社会における成長と成熟を象徴する概念とも言えます。