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旅エッセイ 【愛と憎しみのコントラストが強い街、テルアビブ】

とても厳しい空港のセキュリティチェックの後、イスラエルの大都市テルアビブに降り立ったのは2013年初夏のこと。

はじめての国やはじめての街を訪れることは、いつだって心躍る楽しい体験。でもこの時は、緊張感の方が上まわっていた。2020年の今もまだ、戦火の中にある国だから。


テルアビブが好きで現地に友人も多いという、ニューヨーク留学時代に知り合った友人に誘われて、はじめての街を訪れることになった。

彼女からの誘いがなければ、もしかしたら一生訪れることがなかった街かもしれない。


物々しい雰囲気の空港周辺を抜け、タクシーで向かった先はAirbnbで予約した家。広々としていて、品がよく私好みの素敵なインテリア。オーナーは彫りが深く、自然にカールした黒い髪が素敵な美しいダンサーの男性。ひと通り家のことを教えてくれた後、素敵な笑顔で「これからロンドンに住んでいるボーイフレンドと旅行に行くんだ!」と言って鍵を渡してくれた。

テルアビブは芸術の街としても有名で、特にダンサーが多く集まる街でもある。旅に誘ってくれた友人の友人たちもダンサーが多く、皆とても美しい。男も女も。

LGBTにフレンドリーな街としても知られていて、ちょうど私が訪れたこの時は参加者が数十万人とも言われる(2020年は25万人だとか)、テルアビブプライドのパレードが行われていた。

レインボーカラーや煌びやかな衣装を纏った人たちが、通りを練り歩き地中海に面するビーチへ向かってパレードする。誇らしく、力強くて優しくて、そして皆とても楽しそう。参加者にはダンサーも多く、その造形美につい見入ってしまう。

パレードの目的地のビーチでは、大音量にのって躍りまくる人々。自由に自分を表現する、多くの凄まじいエネルギーを強く感じた。


それから、この街はとてもハイテク。2013年当時でも街の到るところではWifiが使えたし、世界中からテック系のスタートアップが多く集まる街。

国際的な街なので、多くの人が英語を話すことができ、コミュニケーションはとてもスムーズ。アジア人だからと言って特別視されることもなく、街の人は優しくフレンドリー。中には日本贔屓の人たちもいて、居心地がよかったこと覚えている。


それから、地中海に面したビーチはとても美しく、温暖な気候と、私が大好きなひよこ豆が多く使われた絶品の料理の数々。エキゾチックな旧市街の美しい街並みを歩き、海に沈む太陽を眺める。極上の体験...。


そんな夢見心地の気分から目覚めさせるかのように、突然、街には空襲警報のサイレンが響き渡る。

突然バスが止まれば、爆弾が仕掛けられているかもしれないという心配を抱かなければならない。

友人の集まりに招待してもらった、地元の人が住む現代的な美しいマンションには、当然のように備え付けのシェルターがある。

そう、ここは未だに争いが続いている街。


空港での物々しい厳重な警備に感じた緊張は、出会った人々や、美しい街並み、美味しい料理によって溶けかけていたけれど、「戦争中」という、同時に存在する事実にも向き合わされる。


愛と憎しみのコントラストが強烈な、とてもとても印象深い街、テルアビブ。またいつか訪れたいと思う、魅力的な街。


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