SCAJ2024コーヒビレッジ出店者をしらべてみた
いつのまにかできていた、SCAJのオマケ企画(?)コーヒービレッジ。じわじわと出店者が増え、今年はついに130を超えた。それらを筋金入りのスペシャルティコーヒーエンスーシアスト目線でしらべてみたのでここにちょこっと報告をしたい。
前提
おいしいスペシャルティコーヒーを飲みたい、と、1消費者がどうやってそれにたどり着けるのか?という視点で考えてみると、以下の情報が重要になってくるのではないか、と思った。つまり、スペシャルティコーヒーを構成するトレーサビリティのどれが重要なのか?である。
1.SCA評点
コマーシャルコーヒーとの差別化の切り札として最も説得力がある評点。それだけではなく、今もスペシャルティコーヒー市場では最も重要な取引ファクターとして君臨しているので、この評点が高い豆は、焙煎や抽出がヘタでもおいしいのではないか?実際においしいのだが。
2.フレーバーの説明
焙煎したあとテースティングして、どんなフレーバーがその豆から感じるのか、を、供給者がリストしているもの(ただしこの評価は生豆卸が現地でカッピングして評価したものをコピペして紹介しているケースもあるので注意が必要だけど)。
3.焙煎した豆の写真
その商品の写真。焙煎度合や豆の表情をみる。とくに焙煎度合は、供給者によってばらつきが激しい。シティといってフレンチだったり、ミディアムローストといってシナモンだったり。だから実際の商品の写真をみることはとても重要なのである。
意外とどうでもいい情報
自分のコーヒーカップにとって意外とどうでもいい情報は、以下のとおり断言する。
A)生産者情報
農園のおっちゃんの写真とか、農園の畑の写真とか、正直わからない。そのおっちゃんが果たして本当にその人なのかなんて、わからないし、調べない。精製所のミルや発酵層を見せられても、これまたわからない。わたしは消費者。そこらへんで別の仕事をしている人です。供給者ではない。
B)なんちゃらカップ優勝とか何位とか
ゆるコーヒー会のコーヒー豆持ち寄り会を何度も開催して得た結論(そこにいた参加者のべ200人の結論でもあるのだが)、なんちゃらカップウイナーの豆が問答無用でもっともおいしかったことはない。その人の腕は確かにいいかもしれない。が、商業的に収益を取るために、へぼ豆にプレミアムを付けて売りさばかないとやっていけないなどのバイアスがかなりかかっている。本気で焙煎させてそれを、となると、ゲイシャとか出てくるので、今度は消費者のこっちが買えなくなるし、実際にはそういうことがSCAJ会場でホイホイ起こっている。
結構、無いと困る情報
a)標高
こまったときは高いところの豆を買う。これはエンスーシアスト共通の認識です。
b)地域・地区
日本でいうところの「●●県●●村」くらいまで絞り込んでもらいたい。広いとそのエリアからかき集めてひとつのブランドとして販売している、ということなので、フレーバーのクオリティは低位安定に陥る(昔でいう「ブラジルはアーシー」グアテマラは「フルーティー」みたいな、どこで取っても得られる共通のフレーバーをベースにブランドづくりがされるので、なるべく狭い地域に絞り込んでもらえればそれに越したことはない)。
c)品種
ブルボンとか、ティピカとか。エンスーシアストになると、この品種を教えてもらうとおおざっぱなフレーバーの傾向(というかボディのなりたち)を把握できる
d)精製
ウォッシュドは基本中の基本。ナチュラルはひとつの分野。アナエロビックはどれも一緒になるフレーバー、というような
消費者的に、今後重要になると思った情報
ひとつの農園でも複数人で経営していることがあり、そのうちの誰が手掛けたものかで品質に差が出ることがある。ゆえに、農園名に加えてその担当者(だいたい「生産者名」として別枠で登場する)や、ひとつの銘柄ブランドをリリースしたプロデューサー名など。これは銘柄のなりたちによって出てきたり、出て来なかったりし、かつどのくらい関与しているのか、名前だけ貸している風なのとかもあり、まだ要素化できない努力目標という印象。
精製所も上記の生産者名特化と同じことで、どこの精製所に持ち込まれたらどういう商品に仕上がるのか、というのでも差が出ることが多い、と知った。これは、精製所名が出た時点で特定の仕上がりが担保できるから、情報リストに含めていいのでは、ということで、e)精製所、を加える。
では、それらをふまえ、ビレッジ出店者を調べた結果は以下のとおり。「○」はそれがあったということ。「△」は部分的。「×」はなかった、ということである。
SCA評点を全銘柄に記していたのはわずかにひとつ(ただしThreadの記事上でその都度公開しているので不親切なところもある)。インドネシアに特化、コスタリカに特化、というような供給者もいて、それらはその国の中のどこかで、ということがわかりやすいが、だからこそあえてちゃんと書いているかというと、そうでもなくがっかり。
SCA評点では、COE銘柄を取り扱うところはおのずと評点を出すことになるが、順位表示だけで実際の評点が何点だったかは、消費者側がCOEサイトを訪れて再調査しなければいけないという不親切さを出している供給者も複数いた(っていうか、隠しても本体でオークション結果が公開されているので
バレますよ)。
項目の半分以上×印がついている供給者も10以上いたのが驚き。トレーサビリティの基礎の基礎すら出さないでなんでスペシャルティコーヒーを扱っていますって言えるのか?あ、どうでもいい客は来なくて結構、わたしのコーヒーの信者だけ来てくれればいいのよ、っていう考えなら、こういう鎖国みたいな情報開示でもOKなのか(わたしが店をやる場合はこっちを選ぶだろうと思うので、なんとなく非開示の気持ちがわかったりする)。
供給者同士で盛り上がるのは、やめてもらいたい
いいかげん、消費者にやさしい情報開示をしたうえでの商売をしてもらいたいと思う。「このウエットミルってこうなんだよねー」とか、産地を訪れて撮ってきた写真を一般消費者向け販売ページにこれでもかと羅列して何がいいのだろうか。それは供給者同士で別でやってくれ、と思ったこと無数。
同じ銘柄を扱う別々のロースターのページでおなじおっちゃんやおばちゃんの写真が出てくるという「事故」も多数見ている。これは豆卸が公開している産地情報をそのままコピペして掲載している、ということである。カッピング評は卸が実施したもので、ロースターそれぞれがさらにカッピングをして独自の解釈を加えたか、というものと、そうでなく単に出所不明なリストを羅列しておしまい、というのもあった。
消費者がそれを信じるというのは。。。できるのだろうか?
どんな情報開示が消費者にとって必要なのか
そのコーヒーを淹れたときにおいしくあがるのか?ということの一言に尽きる。
たとえば、今回初来日出店のonyxコーヒー。情報開示のすさまじさは群を抜いているが、消費者目線でドリップガイドをそれぞれの銘柄ページで公開している。
ベタだが老舗たりえる運営をしているTHE COFFEE SHOPの銘柄紹介もすばらしいと思う。スペシャルティコーヒー屋共通の敵(?)「酸っぱいコーヒーがキライ」とわざわざ言いに来る客対策として、酸味に対する注釈が付いたフレーバー表がついている。正直謎のところは多々あるが、視覚的直観的表現なので、消費者としては「あー、こういうシャープな感じなのかな?」みたいな想像をすることができるわけで。
せっかく出店しているのだから
爪痕は残してもらいたいが、リストを見るとわかると思うがどこも情報開示は似たり寄ったり。卸の生産者情報をなるべく長文で載せて、という程度のことしかやってない。説明のポイントを産地紹介をしっかりと、ではなくその豆をまず確実に「消費者においしく飲んでもらう」という視点は得られないのだろうか、と思う。