羽田空港都心飛行ルートは日本の安全を脅かす。-「羽田と成田」日米の思惑
羽田空港都心飛行ルート問題とは
2020年を目処に、東京都心の上空をスカイツリーの高さより低い高度で飛行機が2分に1本飛行するようになることを知っているだろうか。羽田空港の強化に伴い都心の上空を低空で通過し羽田に着陸する新たな2本の飛行ルートだ。表参道、新宿、六本木、渋谷、品川などの繁華街の上空を極めて低空で飛行する。品川駅では、僅か300Mのところを飛行機が通過することになるのだ。南風運用で15時〜19時までと限定的ではあるが、都心には様々な地域から遊びや観光にきている人も多いし、郊外からオフィスや学校に通っている人も多い。商業活動や不動産価値に大きな影響が出るのは間違いない。
例えば都心屈指の繁華街、品川駅付近でビアガーデンやオープンカフェなどを運営している事業者にとっては、ビアガーデンの真上を会話もできない程の騒音がずっと鳴り響いているわけだから、ゆったりと会話なんてできるわけがなく、売り上げが下がるかもしれない。また、飛行ルート上のすぐ近くにはテレビ朝日やNHKなどのテレビ局も立地する。また皇太子殿下がお住まいになられている「赤坂御所」も飛行ルート上からなんと1キロしか離れていない。皇居や、永田町、霞ヶ関も飛行ルートから2.3キロしか離れておらず、目と鼻の先だ。近年、政府はオリンピックの開催に向けて「テロ等準備罪=共謀罪」などを多くの国民の反対を押し切って強行採決するなど、「テロ対策」に全力で取り組んでいるようだが、この永田町のすぐ近くを飛行機がかすめる飛行ルートは「テロ」の危険性は低いと判断したのだろうか。まるで防犯カメラは取り付けたのに鍵は付けない家みたいだ。
考えただけで日本の経済や国家の安全を脅かすことは間違いない。しかも都心飛行ルートに変更したところで1時間あたり10本しか増便することはできないのだ。誰も得をしないことをなぜするのかと、不思議な気持ちになる。国交省は「6503億円の経済効果が見込まれる」などという、どうしたらこんな計算が成り立つのか、寝ぼけすぎにも程がある、なんの根拠もない理論を展開している。
僕の家は港区にあるのだが、まさに羽田空港の都心飛行ルートの真下に該当する。僕の上の上空約600Mを2分に1本飛行機が通過するようになるのだ。
僕も都心飛行ルート問題の存在は3年ほど前から知っていたのだが、つい最近まで、日本の経済・オリンピックのためなら、成田空港の負担軽減のためなら、止むを得ない面もあるのか、と思っていた。
しかしこの問題をよくよく調べていくと、経済のためでも、オリンピックのためでもなく、成田空港の負担軽減のためでもない。ということが分かってきた。
今、このnoteを読んで頂いている人たちの多くは、この都心飛行ルート以外に住んでいる人たちだろう。だけど、自分の家の上には飛行機が通らないから自分たちは関係ない。などとは決して思わないで最後まで読んでほしい。この問題は日本の公共政策の失敗を表わしており、日本の独立を脅かすものであるからだ。
都心飛行ルート問題は、日米国策の「成田空港」の失敗を表している
つい10年程前まで、東京の空港といえば、「国際線は成田、国内線は羽田」これが東京の空港の常識だっただろう。僕も小学校の低学年まではその常識で育ってきた。しかし2012年に開業した羽田空港国際線ターミナルの開業でその常識は崩れた。
そもそもなぜ東京には「羽田と成田」2つの空港があるのだろうか。宇沢弘文著作の『「成田」とは何か』によれば、羽田空港は、1931年に日本初の国際空港として、開業したが当時はわずか52ヘクタールしかなかった。第二次世界大戦後は、米軍に強制的に接収され、占領軍の命令により拡張が進められたのだ。(参考:『「成田」とは何か』)
また、終戦後の1945年9月、羽田空港は、連合国軍の接収命令により、国は当時の住民約3000人を48時間で強制退去させた経緯がある。(14年8月18日 日本経済新聞)
1960年代から、政府内で、新たな空港の建設を求める動きが活発化した。新たな空港の建設をする理由として「高度経済成長で日本の民間機が増加して羽田のキャパシティーが限界になった」と一般的には言われているが、実際には違う。米軍がベトナム戦争による武器輸送と兵士輸送の中継地点として羽田を使い始めた為だ。羽田の米軍の離着陸回数は、なんと月200機に及んでいる。(参考:【「成田」とは何か】)
羽田空港をアメリカのベトナム戦争開戦に伴う日米間の兵士輸送の拡大と戦争の拠点にするために、成田への空港建設はここまで強引に進められたのだ。
しかし実際は、アメリカの野蛮な作戦は見事に失敗した。日米政府による強引で暴力的な成田の住民への弾圧は抵抗に代わり、想像していた以上の反対運動がまきおこった。成田空港の規模は当初の計画より大幅に削減せざるを得なくなり、開港も大幅に遅れた。
結局日米が打ち立てた日本の空港政策は大失敗となり世界中から非難を受けることとなった。その失態をもみ消そうとした結果が、羽田空港の再国際化、そして今回の都心飛行ルートなのではないだろうか。
政府は都心飛行ルート問題で、成田と羽田の周辺の住民間での対立を煽り、成田と羽田の住民を共に蹂躙しようとしている。この問題を見ていると、沖縄の普天間基地と辺野古新基地の問題と重なるところすらある。
どちらも米軍の戦争のために使われた「羽田空港」と「成田空港」。今回の都心飛行ルートの決定は、間接的ではあるが、アメリカの日本に対する弾圧、そしてベトナム侵略という野蛮な行為の結果もたらされた、と言っても過言ではない。
しかし、それだけではない。今回の都心ルートの詳細を見てみると、やっぱりまた「アメリカ」のために利用されていることがわかる。
新飛行ルートで首都上空を危険に晒してまで利益をあげるのは日本ではなく「アメリカ」の航空会社
また、都心飛行ルートで増便されるのはたったの1時間あたり10便。赤坂御所から1キロ、皇居や、永田町、霞ヶ関から2.3キロのところを飛行して、首都に「テロ、落下物、騒音」のリスクと不動産価値の低下による膨大な経済損失を出してまで、政府が都心飛行ルートを推し進める理由はどこにあるのか。
100歩譲って、この増便により日本の航空会社がほぼ全ての増便枠を獲得でき、日本の航空会社の利益に繋がり、日本の国益に貢献できるなら、理解できなくもない。しかし、今回の都心飛行ルートによる新ダイヤの増便枠ではなぜかアメリカの航空会社にも大きく増便枠が与えられるのだ。
羽田空港の国際線発着枠は2020年夏には1日当たり50往復増便されることになり、そのうち24往復が日米路線に割当てられることになった。2019年2月26日財経新聞
日米双方に割り当てられる12枠(往復)ずつに対し、米国側は4社が15路線計19往復を申請した。2月22日Aviation Wire
アメリカのために日本の国益と経済を破壊する暴挙を日本政府はなぜ認めるのだろうか。本当に理解できない。
日本の首都をアメリカに売り渡す政府
政府は地元住民の理解を全く得ないまま、都心飛行ルートを強行しようとしている。この前僕が参加した京急蒲田駅で行われたパネルディスカッションで、国交省の職員は
「地元自治体の承認をまだ得ているとは言えない」と言っていた。
一方で、米軍の横田管制には、事前に丁寧な説明をした上で合意してもらって進めていると言っていた。事前説明に関しても、国民より米軍を優先する政府の姿勢は全く独立国としての振る舞いではない。
さいごに
この羽田空港都心飛行ルート問題の本質は飛行ルート上に自宅がある人だけの問題ではないと僕は思う。国交省は国民に「羽田空港都心飛行ルート」自体を周知させないで、反対の声が広がらないうちに手続きを強行しようとしている。
日本の主権と独立を破壊しようとしている日米両政府から首都の空を守り、安心して生活できる環境を守り抜くために、多くの市民が協力して声を上げていく必要がある。
このnoteを最後まで読んでいただいてありがとうございます。
周りの人たちに「羽田空港都心飛行ルート」のことを周知させて頂けると助かります。また知り合いの議員さんなどにもこの「羽田空港都心飛行ルート」のことを周知させて頂きたいです。情報の拡散、ご協力よろしくお願いします。
関連情報
国土交通省「羽田空港のこれから」HP
みなとの空を守る会HP
引用・参考文献
「羽田空港国際線の増枠、米航空3社が新路線開設を申請」2月26日財経新聞
「羽田発着枠、米航空4社が申請 20年夏から」2月22日Aviation Wire
「成田」とは何か―戦後日本の悲劇(岩波新書)