カウンセラーを選ぶときに参考にしてみていただきたい視点
カウンセリングを受けてみたい、と考えられたことのある方も少なくないのではないでしょうか。
どのようなことをカウンセリングでお話されてみたいと考えていらっしゃるかは、人それぞれですが、いずれの内容であっても、悩みを話すこと自体、しかもカウンセラーとはいえ、知らない人に悩みを話すというのは、大変な勇気と決断を要するものです。
その振り絞ってくださったエネルギーから紡ぎ出された言葉を、私たちは大切にさせていただきたいのですね。
ですが、一方でカウンセラーとの相性やカウンセラー側のスキルなどの問題から、カウンセリングがうまくワークしない、せっかく勇気を出して相談したのに逆に傷ついてしまった、嫌な思いをして終わってしまう、といった事態が生じてしまう現状があるようです。
さらに、カウンセリングは保険適応ではないことが多く、どうしても費用がかかるものですから、
「カウンセリング受けるんじゃなかった」
「こんなならもうカウンセリングなんか受けない」
といった思いを抱いてしまうこともあるのですね。
どうしても避けきれない難しさがあることは理解しているのですが、やっぱり、それは残念だなあと思います。
そういった経験はなるべく少なくしていけたら、という願いも持っています。
より安心してカウンセリングを活用していただくにはどうしたらいいだろう、カウンセラーをどのように決めたらいいだろう。
このことについて、少し考えをまとめてみたいと思います。
みなさんの参考になれば幸いです。
✱カウンセラーは誰でも名乗れてしまう(法的規制がない)
悩ましい、難しいなあと感じているのはここ。
日本では、
臨床心理士(民間資格):日本臨床心理士資格認定協会が認定する資格。大学院修了が必須。
公認心理師(国家資格):2017年に新設された国家資格。医療機関、学校、福祉機関などで働くことが前提。
この二つの資格が公的資格とされていて、これらの資格保持者は、専門的な教育・実習を受け、倫理規定にも従う必要がある、とも定められています。
またこの二つの資格は、所持していないものが名乗ることは罪に問われたり、法律違反になったりするため、できません。
なので日本では、病院や施設で働くカウンセラーの殆どは『臨床心理士』や『公認心理師』という資格を持っています。
合格したらそれでOKという訳ではなく、原則的には継続的に学会や研修会に参加し、研鑽を重ねていくように設計されています。
また、一般に「心理カウンセラー」「心理セラピスト」「メンタルコーチ」というような様々な名称でご活躍される方がいらっしゃるようです。
申し訳ないことに、私は正直その実態をよく知らないのですが、独自の機関で行っているカリキュラムや発行している証明証のようなものがあるようで、そこで「○○カウンセラー」「○○セラピスト」というような称号が与えられているようです。
指定の教科書や参考書を用いて、講師に教えてもらうのだと思います。
私も「こんなのがある」と教えてもらい拝見したことがあるのですが、これまで心理学を学んでこられなかった方でも、短期間の受講、またはオンライン受講などすれば、カウンセラーになり人の悩みを聴ける、簡単にカウンセラーになれる、などと紹介されていました。
公的資格を取るのに、大変な時間とコストがかかることを知っている私には、とてもやるせない気持ちになったものです。
「相談」「カウンセリング」というものを、とても軽く扱われているように感じられてしまうのです。
そして、人を助けたい、役に立ちたい、けど学校に行く時間やお金が難しい、と思う人の気持ちに上手に焦点を当てているような…
なんとも複雑な気持ちになります。
問題なのは、○○カウンセラーや○○セラピストと名乗ることへの法的整備がなされていないことです。
現状、日本ではだれでもそのように名乗れてしまいます。
そういった民間資格を制定するのもひとつのビジネスとして存在するのでしょう。
カウンセラーは薬を処方したり、手術をしたりするわけでもなく、主に「お話をきく」仕事なので、そのなかにある技術は見えにくいのかもしれません。
私たちは様々な障害や臨床について学ぶほかに、この「聴く」ということについて、公的資格を取得するためには深く学び、長い時間をかけてトレーニングをします。
さまざまな民間資格について、それがたとえ短期間であっても情熱をもって学ばれることは本当に素晴らしいことです。
そのうえなにか称号を得られた際には、その方にとってモチベーションになるでしょうし、自信にもつながり、とても素晴らしいことだと思います。
それを用いてなにか役に立ちたいと思われることだってとても自然なことだと思います。
ですが、短期間では学びきれない技術もたくさんあります。
公的資格であれば学びきれるかというとそれもそういうことでは決してなく、また公的資格を持っているから善良かというとそうとも言い切れないかもしれない…とモヤモヤしたところではありますが、少なくとも資格をとってからもずっと研鑽は続いていくのです。
公的資格を持っている人のカウンセリング料金が少し高くなりがち(に見える)のは、こうした背景も影響しているのかもしれませんが、裏を返せば、「話を聴く」という目には見えにくい技術を磨いてきたからこそでもあります。
民間資格のカウンセラーは高いものから安いものまでさまざまなようですが…海外ではメンタルヘルスへの意識も高くカウンセリングの質を重要視されていて、厳しい法規制があることが多いです。
それだけ、カウンセリングという”技術”が評価され、「しゃべるだけ」「きいてるだけ」といった誤解を招くような認識は少ないように思います。
ライトに相談できる人になりたい、愚痴を言える存在になりたい、そんな思いで一つの場所になろうと学ばれることをとても素晴らしく、サポーティブな社会をつくっていけたら素晴らしく思います。
こうした事情があるので、それらを踏まえて誰かに悩みを相談しようとするとき、どんな人に相談をするか、事前に相手を確認されてみることをお勧めします。
懸念がある場合には、臨床心理士、公認心理師といった肩書のある方にまずはご相談されることをお勧めします。