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なんもきかんと、そばにいて

突然だけれど、わたしはわりとなんでも解決したがりだ。
気が短い。
白黒はっきりさせたい。
みたいな感じ。


小さい頃の話

わたしは小学校の時にいじめにあっていた。
今回クローズアップしたいのはいじめの内容ではなく、
そのときの母の対応のこと。

わたしの母は、子供の机の引き出しを勝手に開けるタイプ、
いわゆる過干渉の一種にあたるような感じ。
目の前であけるのではなく、
本人がいないところでやる。
姉の引き出しを開けて
「おねえちゃんには内緒だよ」
と言われたことを覚えている。
ので、
わたしがいないところでわたしの引き出しも
勝手に開けていたのだろうし、
まあその結果、以下のようなことがおこった。

わたしはいじめられているとき、
多分に漏れずだれにも話すことができず、
遺書のようなものをしたためていた。
それをもとに自殺未遂未遂(誤字じゃないよ)、
のようなことをしたこともあるが
それもまたおいておいて。

後日、その遺書まがいのものが母親に見つかってしまったのだ。
ある日、母に寝室に呼ばれ、
「あんたいじめられてるの?」
と聞かれ、頭が真っ白になった。
まさか知られるとはゆめにも思っていなかった。
とっさにわたしはごまかした。

「あれ、じょうだんだよーじょうだん!」

みたいな。正確な言葉は覚えていない。
とにかくおどけた。ごまかした。
すると母は
「いじめられるほうが悪い」
というようなことを言った。
これもまた正確な言葉は覚えていないけれど、
要約するとこうだ、ということだけ覚えている。

もしかしたらわたしがおどけたのがあとかもしれない。
時系列があいまいだけれども、
わたしがそういう意図で受けとったことと、
そして多大なショックを受けたことは真実で、
ああもうこの人にはなにも相談すまい、
と心のシャッターを下ろした。

また別件でさらにシャッターを下したのも
また別の話。

そして大人になった今

そのことを、わたしは乗り越えたと思っていた。
母とは、まあ遅くて長い反抗期を経て
いまではふつーに会話ができているし、
あのときはこんにゃろめ、みたいなことも思っていない。

けれど、こないだ、まあ話の流れで、
そんなことがあったんだよね、と友人に話したら

「そのときなんて言ってほしかったの?」

と言葉をかけられて、
頭が真っ白になるとかよりも前に涙が出た。
全然乗り越えてないやないかーい


そのときは答えが出なかったんだけど、
後日、わたしのなかには答えがあったことを思い出す。

フルバは家族

フルーツバスケット。
くだものがいっぱい。
ではなく、漫画のタイトル。
わたしがいじめられていたときの唯一の心のよりどころだった。

比喩ではなく、わたしのなかの真実として、
心を寄せられるのはフルバだけだった。
フルバの世界だけがわたしに優しかった。
みたいな表現は小説にしかないとお思いだろうか、
でもこれは、ほんとうのほんとうだ。

ちょうどわたしがしんどい時期、
フルバのなかでもいじめられた女の子の話をしている時期だった。
その子にはトールくんがいて、みんながいて、
いいな、いいな、と思いながら、
その優しい世界をよりどころにしながら生きた。
そのあと、さきちゃんの弟のめぐみが、
さきのために祈るシーンも泣いた。
わたしには祈ってくれる人がいないと泣いた。
だからそれを読みながら自分で祈った。

さておき。

フルバのなかで、トール君は少女にたいして、
特別なことは何もしていない。
解決しようとはしない。
どうしたのかも聞かない。
ただ抱きしめて、きさと一緒に日常を過ごしていた。
彼女が自立した時は泣いて喜んで、
そしてただ見守った。

なんもきかんと、そばにいて

冒頭に戻る。
解決や掘り下げも、ときには大事だ。
わたしはそちらのほうが好きだったりもする。
けれど、そうじゃないときだってあるんだ。
あの時の私が、そうだった。

言葉がほしかったわけではない。
解決がほしかったわけではない。
そうかそうかと、ただ抱きしめてほしかっただけなのだ。
しいて言うのなら、
学校には行かなくていいという選択肢がほしかったくらいだ。


そんなわけで。
「いと・くうはく」にはいろいろな想いをこめているのだが
さらにそれが増えてしまった。
こういうのはコンセプトが固まってたほうがいいのよなあ
などと思いつつも。
願いを空間にしまうのは、言い出しっぺの自由なのだ。


なにもしない時間がほしいあなたへ
ワーカーホリックなあなたへ
コミュニケーションが苦手なあなたへ
なんもきかんと、そばにいてほしいあなたへ

空白時間を、ぽっかりと空けて、お待ちしています。
期待せず、ふわふわと。
力まず、ゆらゆらと。

西荻窪
毎週月曜
13時から17時


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