Day7:「愛とは、なんぞや。」
〈はじめに〉
これはバーチャル自治体・令和市の新しい試みである『クソ野郎ちゃんプロジェクト』における自動創作の実験として書かれた作品です。人間が考えた最初の一行をクソ野郎ちゃんに打ち込み、自動的に吐き出された文章を、<大幅な改変と微妙な編集の組み合わせで>、掲載しています。
「愛とは、なんぞや。」
なーんてことを、寝転がった彼を見ながら思う。
3年。
3年付き合って、付き合い続けて、結婚して、そのまま。関係の進展がないまま、そのままだ。
結婚して、進展も何も、ないんだけど。
なんともいえないこの、惰性感。
3年、という月日を過ごしたカップルは、夫婦は、ふつう、どうこの状態をどう考えるのだろう。
彼と過ごした時間を長く、もっとゆっくりしたい。進展をさせることなく、もっとゆっくり。
と思う人もいれば、はやく進展させたい、関係を変えたい、と思う人もいるんだろう。
(もっと愛したい。)
くるくると、彼の前髪を指先で弄ぶ。
少し固めの、くせっ毛。
雨になるとふわりと浮いて、手がかかる。
(とは思いつつも)
愛とは、なんだろう。
突き上げてくる衝動を、愛と名付けてみてはいるものの、確証はない。
愛とはなんだろうか。
愛するとは、なんだろうか。
「おはよ…」
布団から顔を出した彼が、眠気眼でこちらを見上げた。
おはよう、と笑顔を返す。
いつまでも、こんな日が続く。
おだやかでいいじゃないか。
(でも、)
ずっとそのことを、
ずっと、ずっとそのことで考えている
こんなに、ずっと
ずっと、ずっと。
ずっと、ずっと。
ずっと、ずっと。
いいんだろうか。
こんな気持ち持ったまま、好きな人と、一緒にいる、なんてこと。
いつまでそうやって、
わざわざこんなこと考えてるんだ。
なにが、
なにが愛だ
彼の手が、腰にまわる。
くすぐったいとも、気持ちいとも、痛いともとれない刺激が、腰から伝わってくる。
きっと、少し伸びた爪が、皮膚に白い線を残しているんだ。
彼の布団にのまれながらも、頭は冷静だった。
のまれながらも、冷静。
お湯と冷水が共存しているみたいな、
油と水が相いれないみたいな、
快楽と思考の関係性。
思考。
これは思考なんだろうか。
思考?
感情?
心?
熱い手
途切れる吐息
冷たい思考
もうぐちゃぐちゃだ
濁流のように押し流されて
押し流された先で
心という存在に触れられそうだ
触れられたら
何かを思い出しそうで
(わたしなんかが言えるはずない)
なんか、違う
(わたし、思い出したい。)
なんとなく
なんとなく、
なんとなく、わかる。
わかっちゃう
わたしのなかのわたしが、叫んでる。
恋は、恋は、愛とは、なんて!
そんなことは、わからん!
それを恋として考えていいのか?
意味わからん!わからん!わからん!わからない!
わからん!わからない!
わからん!わからない!
わからない!わからない!わからない!わからない!わからない!わからない!わからない!わからない!わからない!
(そんな、ふうに、叫んでる)
(わかんない、わかんない)
「お前は、もっとお前に尽くされるべきだろ。」
だれだろう。
「どんなに尽くされても、お前はわかってなかった。」
だれだろう。
「わかってなかった。忘れかけていた。でも、全部知ってた。全部、何もかも知ってる。」
愚問だ。
愚問すぎる。
だってこれも、わたしだ。
「愛してる。」
愛してるだなんて、
愛してるだなんて、
愛してる、だなんて。
「結婚してる。セックスしてる。もうやだなぁ。もう。セックスしてる。もう。もう。愛されてる。もう、」
愛とは、なんぞや。
「愛してる。」
ああ、そういってくれた人が、過去にももう一人いたっけ。
その人は長い間私の家の前に住んでた。
自然と仲良くなって、
自然と付き合って、
セックスして、
「結婚はしない。でも、ずっと、一緒にいよ」
そんな甘い言葉にほだされて、一緒にいて。
ずるずる、だらだら。
思い出せば胃もたれで砂を吐けそうなほど甘ったるい時間を過ごした。
「いい加減、嫌になったろ」
ばかだなぁ
いやになったのは、きみでしょう。
「愛に定義なんてない!」で良いじゃないか。
「何となく、愛されている感じがする。」で良い。
これ、いい言葉だよ。
愛は、決まっている。
愛は、なんにも決まっている。
愛とは、愛とは、愛とは、恋とは、恋とは
愛とは。
もう、それでいいじゃないか。
そう、思うのに、
心の中で思うだけで心がざわざわする。
心がざわざわする。
心がざわざわする。
心のモヤモヤが集まってくる。
心がざわざわする。
愛
愛ってなんだ
あいってなんだ?
誰か教えてくれよ
わかりたい、
知りたい、
愛を、
愛を知りたい。
だってわたしは、
「きみを愛したいんだ」。
そう思う心が、「あい」でいいと思うよ。
途切れかけた意識の中で、耳に届いたことばは、
ゆめなのか、現実なのか。
そんな、わたしが最初に撤回した結論を、容易く言いやがって。
まったりとしたその声を反芻しながら、
わたしはぬくもりの中に落ちていく。
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