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ポストパンデミック プレイブック: 高級フレグランスの回復 [VOGUE Business 2021年6月30日]

VOGUE BUSINESSの記事を翻訳しています。

前回はBoF (The Business of Fashion)のポストパンデミックに関する記事を訳しましたが、こちらの記事の見方はどうでしょう。

今回は、

1.  売上好調の波に乗って、高級ブランドがさらにフレグランスに注力
2.  情報の透明性(クリーン)と環境への配慮(サステナブル)はもはや必須
3.  ホームフレグランス人気、ステイホーム緩和でパーソナルフレグランスも
4.  ジェンダーニュートラルが加速、ファッションの流行がお手本

というお話です。

メインテーマからは外れますが、ホームフレグランスの話のところに出てくる、アンソニー・ホプキンスがフレグランスを出したと知ってびっくり。

調べてみると、コロナの影響で飢餓で苦しむアメリカの子供たちを支援する活動と提携しているそう。(一回の購入で最大50食を提供できる仕組み)

私も、もっと仕事をがんばって、このような活動につなげられることが目標です。


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ポストパンデミック プレイブック:高級フレグランスの回復

フレグランス業界は2020年に打撃を受けた。売上が回復するにつれ、ラグジュアリー製品のプレイヤーたちは、ホームフレグランスからセルフケアまで、新しいトレンドに対応しつつある。

BY LUCY MAGUIRE
2021年6月30日 

ルイヴィトンから、200ポンドのアンバー&ティーの香りのメンズ・フレグランス「イマジネーション」が今月発売された。わずか5年前にフレグランス分野に参入し、今年4つ目の新しい香りである。ラルフローレンは先週、同社最大のフレグランス「Ralph's Club」を発表し、シャネルはフレグランスとビューティに特化した実店舗を増やす予定だ。

現在フレグランスにチャンスが訪れている。市場調査会社のNPDグループによると、2020年の落ち込みを経て、今年はアメリカで32%、イギリスで20%の売り上げを伸ばしている。特に中国が好調で、ユーロモニターの予測では、中国でのフレグランスの売上高は来年24%増の24億ドルに達する見込みだ。

「人々は良い香りを求めている。何かに属していたい。自分が特別な存在であると感じたいのだ。2008年に景気後退した後、パコラバンヌ オリンピアの香水を求めて、ジョン・ルイス(イギリスの百貨店)に行列ができた。」と、NPDのイギリスビューティ担当エグゼクティブ・ディレクター、ジューン・ジェンセン・ミルズは言う。現在も似たような状況だが、新型コロナウイルスの大流行の中で新たなトレンドが生まれ、それが市場を大きく変えたのだと彼女は話す。オンライン販売やホームフレグランスが注目されるようになったことに加えて、ブランド各社はユニセックスやクリーンフレグランスなどの優先事項に投資することで、若い顧客にアピールしようとしている。

アイコニックなフレグランスは今でも人気があるが、イノベーティブなアップデートが必要である。「パンデミックの間に、我々のアイコニックなブランドが市場シェアを拡大した」と語るのは、ジャンポール・ゴルチエ、キャロライナヘレラ、パコラバンヌのフレグランスを所有するプーチ社のイギリスのマネージング・ディレクター、セリーヌ・ギルグだ。「パコラバンヌの『1ミリオン』やジャンポール・ゴルチエの『ル メイル』を購入していた消費者は、堅実な投資のために購入した。今消費者が求めているのは、イノベーション、新事業、新技術だ。誰もがその準備をしている。」とギルグ氏は話す。そのためプーチ社は、有名なフレグランスの魅力を維持するために、メッセージをアップデートしている。

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<写真> プーチ社のアイコニックなフレグランス: ジャンポール・ゴルチエの『ル メイル』、パコラバンヌの『1ミリオン』、キャロライナヘレラの『グッドガール

「『1ミリオン』は12年前に発売されたもので、クールなパコラバンヌの子供たちは、2008年当時とは違う。今はもう、きらびやかな世代ではなく、粘り強くて才能のあるやり手の世代なのだ。」とギルグ氏はいう。プーチ社は独立系リサーチグループと協力して、新しい若いフレグランス顧客層について研究した。その後、Vice Mediaのミュージック&カルチャープラットフォームであるNoiseyと協力して新しい才能を発掘し、フレグランスの名前をつけた助成金を提供した。「今の若い人たちにアプローチするには、このようなマーケティングが必要。本物として君臨することが重要で、優れたストーリーテリングが必要となる。」


クリーンフレグランスが
次の新たなフロンティア

消費者は香りの成分をこれまで以上に意識するようになったため、ブランド側はクリーンフレグランスのイノベーションや、より良い香りのサンプリングと香りの持続性を高める新しい処方にシフトしている。

プーチ社は最近、プレステージ香水ブランドのペンハリガンと共同で「AI.LICE」を開発した。これは、実店舗や写真の中の製品をスキャンすることで、香りの種類や原料などの情報が得られるアプリだ。「私たちは、大きなイノベーションを起こしていく。店頭だけでなくオンラインでも、香りが人々の手に届くようなさまざまな方法を考えている。」とギルグ氏は話す。

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クリーンフレグランスとサステナビリティは、大手フレグランスハウスにとっても優先事項である。コンサルティング会社クラインでコンシューマー部門のディレクターを務める、カレン・ドスコウ氏は、「クリーンでサステナブルなフレグランスという完全な透明性は、1年を通して主要なテーマであり、人々の生活を支配するウェルネスアプローチに貢献した。」と述べている。

コティ社は、フレグランス製造時に排出される炭素を原料とするサステナブルなエタノールを使用した最初の企業だ。また、詰め替えやリサイクル可能なパッケージを採用しているブランドもある。ジャンポール・ゴルチエの最新の香り「スキャンダル」は詰め替え可能なボトルを採用しており、ディプティックはハンドケアコレクションに詰め替え可能なガラス容器を採用している。

「特にクリスマスには、店頭に並ぶ商品のパッケージの変化をお客様に実感していただけるだろう。これについては、多くのフィードバックをいただいている。」と、ディプティックUKのマネージング・ディレクター、アマンダ・モーガンは話す。


今後も続くホームフレグランス


カールラガーフェルド、アニヤハインドマーチ、ハリスリードなどのファッションブランドが、パンデミックの間にアロマキャンドルやリードディフューザーを発売したほか、キム・カーダシアン、ドレイク、さらにはアンソニー・ホプキンスなどのセレブリティが、昨年ホームフレグランス製品を発売した。

ディプティックは、パンデミックの際、ホームフレグランスの分野で「大きな」成長を見せたとモーガン氏は言う。ディプティックは、キャンドルの手入れの仕方や、インテリアに合った香りの選び方などのマスタークラスを開催した。しかし、4月にイギリスの店舗が再開されるまでは、パーソナルフレグランスの売上は低迷していた。現在、パーソナルフレグランスの売上は2桁成長を遂げている。

NPDのシニアアカウントマネージャーであるエマ・フィッシュウィックは、次のように話す。「人々が徐々にオフィスで仕事をするスタイルに戻り始める中で、家にいる日もあるというハイブリッドな生活を送っている。消費者は身に着けるフレグランスを再び求めているが、自分がいるときに家を彩るホームフレグランスも求めている。『ジュース』(パーソナルフレグランスの業界用語)の売上は、前年同期比で24%増、ホームフレグランスは43%増となっている。」

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次世代のフレグランス購入層に備えて

社会的意識はもはや避けられない。若い世代ではジェンダーの流動性が当たり前になってきた今、フレグランスブランドは男性用と女性用の香りの二元論を見直すべきだと専門家は言う。Spate社によると、「ユニセックス」な香りの検索回数は、2020年から2021年にかけて23%増加しており、ユニセックスとして販売されているトムフォードのようなブランドは、今年のGoogle検索で上位にランクインしている。

マーク・ジェイコブスの手首に刻まれたタトゥー「I am perfect as I am」(=(世の中が求めるパーフェクトではなく)ありのままの自分がパーフェクト)にインスパイアされた新しいフレグランス、「Perfect by Marc Jacobs」が昨年発売された。コティ社によると、2020年におけるアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアの市場全体で最大のプレステージフレグランスの発売となった。コティ社のチーフコマーシャルオフィサー、イザベル・ボンファンティ氏は、「自分の 『完全な不完全さ』を共有するオープンキャスティングへの招待を含め、あらゆる形の美を祝福することを中心に製品とキャンペーンを創り上げた」と語っている。

ジェンダーニュートラルを採用するブランドがより増えることが期待されている。「男性用フレグランスには、いまだに極端な男らしさの暗黙の了解が多く見られる。新しい世代のジェンダー流動性を反映して、この傾向は弱まるだろう。」とギルグ氏は加えた。

フレグランスは、消費者のトレンドを取り入れるという点でファッションに追随していると、ボンファンティは言う。「世界のフレグランスのトップ10を見てみると、そのうち9つがファッション性の高いブランドであることがわかる」とボンファンティ氏は話す。コティ社の売上も、80%がグッチ、バーバリー、カルバンクライン、ヒューゴボス、マークジェイコブズ、クロエの6つのフレグランスブランドで占められている。

「この6つのブランドは、中国などの市場で消費者の気持ちをうまく捉え、マルチカテゴリーの可能性を秘めており、フレグランスの巨大ブランドになるポテンシャルがある。したがって、このプレステージフレグランスのポートフォリオは、今後の我々の投資とイノベーションの中心となるだろう」とボンファンティは述べている。

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原文はこちら
https://www.voguebusiness.com/beauty/post-pandemic-playbook-the-luxury-fragrance-rebound

(画像:VOGUE BUSINESS)

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