たった2秒でエッセンシャルオイルを抽出する方法 [p&f 2021年11月号]
perfumer & flavoristの記事を翻訳しています。
今回は11月号の中から気になる記事をピックアップ。
エッセンシャルオイルの新しい抽出技術、Evaporative Extractionについてです。日本語では蒸発抽出法でしょうか。検索しても日本語の文献を探せませんでした。
一般的にエッセンシャルオイルの抽出方法は、水蒸気蒸留法、溶剤抽出法、圧搾法が用いられ、最近やっとCO2エキストラクトが売られているのを見るようになったなと思ったら、さらにもっと新しい技術が。
香りが「まるで香水のように」ということで、是非とも嗅いでみたいです！流通するのにはまだ時間がかかるのでしょうか。
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たった2秒でエッセンシャルオイルを抽出する方法
香りの蒸発による抽出は、自然の摂理にかなったものである。
Vapor Distilled社は現在、蒸発抽出技術で45以上の国際特許を取得し申請中だ。
私たちの身の回りには、毎日数え切れないほどの種類の香りが漂っている。どんな香りも揮発性化合物の蒸発に起因する。朝のコーヒーの香り、庭の刈ったばかりの草の香り、ベーカリーのクッキーの香り、春のマグノリアの香り......これらはすべて、揮発性化合物が空気中に自然に蒸発したものである。
私たちが生活に取り入れている植物やハーブは、香りの蒸発という自然のプロセスを経てそのままの姿で存在しているが、既存の抽出方法では、香りの蒸発を利用してエッセンシャルオイルを抽出することはできない。
既存の方法では、溶剤を使用したり、何時間もかけて水蒸気蒸留を行ったり、高圧のCO2抽出を行ったりするため、壊れやすい成分にダメージを与えたり、一部の成分を選択的に抽出して他の成分を残したりすることがある。これらの非蒸発法は、植物本来の姿を再現しておらず、植物の奥深くに閉じ込められた貴重な揮発性成分を部分的にしか抽出できないものがほとんどだ（F-1）。
45の国際特許を取得し、現在申請中の新しい蒸発式抽出プロセスは、抽出技術を恒久的に変え、植物からエッセンシャルオイルを抽出するために蒸発の自然な力を利用する。「Evaporative Extraction™」は、その名の通り、香りが蒸発する自然のプロセスを早め、蒸発した揮発性化合物を高品質なエッセンシャルオイルとして効率的に抽出する。通常であれば数週間かかる香りの蒸発プロセスをわずか数秒に短縮し、元の植物の性質に忠実なエッセンシャルオイルを抽出することができる。
違いを理解する
蒸発式抽出は、50トン以上のプレミアムハーブ製品からエッセンシャルオイルを抽出するために商業的に使用されてきた。サンダルウッド、ホップ、ヘンプ、オリスルート、フレンチオーク、カルダモン、トンカビーンズ、バジル、ナツメグ、ベイリーフ、その他多くの鞘や種、根茎、木などに代表される。植物の奥深くに閉じ込められ、溶剤では簡単に採取されないテルペンや揮発性成分の抽出に優れていることがわかっている。
蒸発式抽出では溶媒抽出のような水分損失がなく、また溶剤が植物の表面下に浸透する力を阻害するという問題も回避できる。蒸発式抽出は乾燥速度を早めたプロセスのことで、揮発性の精油成分が蒸発して植物が実質的に精油で「乾燥」した状態になる。膨張したガスが植物の奥深くにあるエッセンシャルオイルを追い出し、揮発性の植物成分を品質の良い状態で抽出する。
植物にもよるが、蒸発式抽出ではCO2や溶剤抽出法に比べて、到達しにくい揮発性のテルペン成分を3倍もの高収率で抽出することができ、抽出成分に香水のような品質をもたらす（T-1）。蒸発式抽出で採取したホップのエッセンシャルオイルを１滴垂らすだけで、部屋全体をビールのようなフローラルな香りで満たす力があり、ホップの香水のような効果がある。サンダルウッドやオリスルートなど、木や根の素材から蒸発式抽出したエッセンシャルオイルは、元の木の香りを木そのもののように完璧に再現する。
採油率の向上は、同量の精油を製造するために使用する植物原料が少なくて済むことを意味し、オリスやサンダルウッドなどの高額な抽出物を製造するコストを削減することができる。
メリットの発見
蒸発抽出は新鮮な植物から揮発性オイルを直接蒸発させ、蒸発した化合物を凝縮させてエッセンシャルオイルを採取するという、大容量を連続的に供給できるプロセスだ。まず、植物原料が加熱された高乱流の円柱状の機器に連続的に送られる。植物が加熱されると、膨張したガスが奥深くにあるエッセンシャルオイルを追い出す。成分が蒸発し残った植物が取り除かれ、揮発性成分が急速に凝縮されて精油となる。
ほとんどのハーブは、植物が蒸発抽出システムに入ってからエッセンシャルオイルが採取されるまで、約2秒でプロセスが完了する。蒸留法と似ている部分はあるが、蒸発抽出法の方がはるかに速く、より完全で低温での抽出が可能だ。
具体的なプロセスは下記の通り (F-2):
① 加圧送風機で高速の空気をシステム全体に循環させる。
② 空気がヒーターを通過して適温まで加熱され、急速な蒸発を促す。
③ 植物が空気中に送られる。
④ 植物は乱流の激しい機器の中で空気圧によって浮かされる。エッセンシャルオイルや揮発性の植物化合物は数秒で蒸発する。
⑤ 劣化した植物原料を空気流から遠心分離する。
⑥ 揮発性の植物化合物は、特許取得のダイナミック凝縮法を用いて空気流から分離される。
⑦ 揮発性化合物を多く含むエッセンシャルオイルをタンクに回収する。
蒸発抽出法は、水蒸気蒸留法や、抽出物から溶媒を蒸留して回収する必要のある溶剤抽出法に比べて、はるかに少ないエネルギーで抽出することができる。さらに、蒸発抽出法で抽出された後に残る植物原料は乾燥していて危険性はなく、溶剤プロセスで使用された植物原料の廃棄を難しくしている可燃性のリスクもない。消耗品やエネルギー消費、投入材料が全て少なく済むことでコストを削減し、環境への影響を低減することができる（T-2）。
蒸発抽出法の体験方法
蒸発抽出法は、コロラド州ボルダーにある技術開発およびライセンス供与を行うNatural Extraction Systems, LLC（NES）によって発明、商業化された。NES社は、抽出技術から薬物送達技術まで160件以上の特許を取得しており、Vapor DistilledとLifeTonicのブランドを運営している。
NES社は、蒸発抽出技術を用いて製造されたバルク原料やエキスを販売しており、現在、蒸発抽出技術のアプリケーション別独占ライセンスを提供している。
スポンサー：Vapor Distilled
さらに詳しい情報が必要な方はこちらへご連絡ください。licensing@vapordistilled.com
企業サイト: vapordistilled.com
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画像：Perfumer & Flavorist