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「女子学生」か「女性学生」か__日本語のジェンダーについて考察してみる
文責:たけ
※今回はいつもの記事とは少し違った文章で記事を書いてみようと思います。
きっかけは、去年(=2023年)の11月下旬に行われた#YourChoiceProject2周年記念のイベントでした。
そのイベントには東大の教授の方も一人お呼びしたのですが、その先生がイベント内で登壇なさった際、このようなことを仰いました。
「これからは『女子学生』という言葉ではなく、『女性学生』という言葉を使うようにしてほしいです。彼女らはすでに大人です。」
※一年前の私の記憶から書き起こしたセリフなので、一字一句正しいわけではないです。すみません!
この言葉を聞いた当時はそれほど何か感じることもなかったのですが、今になってみるとこの言葉の重要性がわかるような気がします。この記事では、「女子」と言う言葉を軸にして、日本語のジェンダー構造についてちょっとした考察をしてみようと思います。
日本語では「男子」、あるいは「女性」という言葉を使うよりも「女子」という言葉を使う機会がかなり多いように感じます。一番最初に思いつく例で言うと、「理系女子」などでしょうか。この言葉は多くの人が目にしたことがあると思いますが、一方で「理系男子」という言葉をみたことは、私は一度もありません。普通に「理系の女性」と言っても良さそうなところで、「理系女子」と言うこともあるのではないでしょうか。
この仮説を検証してみるために、ネット検索を使って少し実験をしてみました。goo辞書です(※1)。
このウェブ上の辞書機能に、「女子学生」「男子学生」の2つのワードを入れてそれぞれ検索してみました。すると、「女子学生」の方は(和英辞典だけですが)1つヒットしたものがあった一方で、「男子学生」は一切ヒットしませんでした。
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![](https://assets.st-note.com/img/1732080328-gs7DTbEP1KloFH9kL2VC4IvZ.jpg?width=1200)
やはり、「男子」「女子」の使い分けは完全に同じ条件下で行われているものではなさそうです。
「だったら何だって言うんだ」「そんな些細なことを気にしてどうするんだ」と思う人も多いかもしれません(そもそも日本語に関してジェンダーの問題が提起されること自体ないですからね)。ですが、この日本語の違いに関するモヤモヤ感は、決して私自身の個人的な感想ではないことを、先ほど述べたイベントから半年あまり経った時期に知りました。
それとは、私が自分の記事で幾度も参照している本である、東大副学長の矢口祐人氏による著書『なぜ東大は男だらけなのか』を大学の書籍部で購入して読んでいた時期にあたります。この本の序章で、矢口先生も同じ日本語の構造に言及していました。
東大のみならず、どこの大学でも、学生はおとなである。二〇ニニ年からは法的にも大学入学の年齢の十八歳は成年とされるようになった。若い女性が子供扱いされることで、その思考や活躍が矮小化されてしまうことがある。そろそろ「女子大」「女子大生」「理系女子」「女子力」などという表現を改めるべきではないだろうか(※2)。
この「女性に対しても『女子』という言葉を当てはめることで、彼女らの活躍が矮小化される危険がある」という意見に、私は「なるほど」と思いました。もしかしたら、「女子」という言葉の使い方の背景には、なにかしらの構造差別があるのかもしれません。
というわけで、私自身も「女子」という言葉の使い方に少し意識を払ってみることにしました。
そこで、前回の記事での言葉遣いに注意してみました。この記事の中で「女性差別撤廃条約」という言葉を使ったのですが、記事文の校閲段階で、「この条約は「女子差別撤廃条約」ではないのか?」という指摘を受けました(#YourChoiceProjectが公開している記事は、各々のライターが記事を書いた後に必ずチェックが入っています!)。記事の校閲をお願いしている方によると「女子差別撤廃条約」は外務省など公的機関の表記に合わせているとのことだったのですが、先述した矢口先生の主張を引用したり、またそもそもこの条約の英語名が「Convention on the Elimination of Discrimination against Women」であることなどを述べて、そのまま「女性差別撤廃条約」と言う表記を使わせていただくよう説得しました
(小・中学校の英語の授業でもWomen=女性で習うはずなのに、なぜこの条約の和名のときは女子という言い方をしているのでしょうね...)。側から見れば気づかないくらい些細な話ではありますが、ここで自分の意見を受け入れてもらったことには、ちょっとだけいい気分になっています。
※補足すると、「女性差別撤廃条約」という言い方は「ジェンダー法学入門」(※3)という別の本から引用してきたもので、全く存在しない言い方ではありません。
先ほど述べたように、「女子」という言葉の背景になにかしらの構造差別があるとすれば、日本のジェンダーギャップが解消された暁には「女子」という言葉はほとんど使われなくなるのでしょうか。もしそうだとすれば、そんな社会が早く到来することを願うばかりです。
出典・参考文献
goo辞書 - 国語・英語・四字熟語のオンライン辞書 https://dictionary.goo.ne.jp/ 2024/10/16アクセス
矢口祐人『なぜ東大は男だらけなのか』集英社新書 2024年
三成 美保・笹沼 朋子・立石 直子・谷田川 知恵『ジェンダー法学入門 第3版』法律文化社 2019年