
「東大の推薦」ってなに? 意外と知られていない「学校推薦型選抜」について詳しく解説
はじめまして。ライターのりんごです。
今回は、2024年度の東京大学学校推薦型選抜で入学した私が、東京大学の学校推薦型選抜を、一般的な指定校推薦、一般入試などと比較しながら、東京大学の学校推薦型選抜に対する解像度を上げていきたいと思っております。
はじめに、簡単に自己紹介をします。私は、2024年度の学校推薦型選抜で法学部に入学しました。出身は、東京都内の中堅私立女子校です。高校時代は、フェミニズムに関心を持ち、男子校で生理について出張授業をする活動を主に行っていました。現在は、教養学部文科一類で、法・政治、フェミニズムを中心に勉強しています。
「学校推薦型選抜」は比較的新しい制度
ここで、「法学部」「教養学部」結局どっちに入学したの?という疑問が生じる方もいらっしゃると思いますが、後述します。
みなさん、「東京大学学校推薦型選抜」と聞くと、どのようなイメージがありますか?
おそらく、物理オリンピックや数学オリンピックなどのオリンピック受賞歴や、研究の学会発表などの華々しい経歴を持った人しか受からないというイメージがある方も多いのではないかと思います。反対に、学校の指定校推薦と同様で学校同士のコネクションで成り立っており、いわゆる裏口入学なのでは?といったイメージがある方もいらっしゃると思います。
まず、その雰囲気を掴んでいただくために、東大学校推薦型選抜についてのおおまかな概要を述べます。
留意していただきたい点として、学校推薦型選抜は、2016年度に始まった比較的新しい制度であるため、年によって諸条件が変更される可能性があります。ですので、受験を考えている方は、自身でその年の募集要項を確認してください。ここでの情報は、2025年度学校推薦型選抜の募集要項、および2024年度学校推薦型選抜における私個人の経験について述べることを明記させてください。
以下は、2025年度学校推薦型選抜の募集要項からの引用です。
“第一に、学校推薦型選抜の目的は、学部学生の多様性を促進し、それによって学部教育の更なる活性化を図ることです。
第二に、東大が期待する学生像は、本学の教育研究環境を積極的に最大限活用して、自ら主体的に学び、各分野で創造的役割を果たす人間へと成長していこうとする意志を持った学生です。何よりもまず大切なのは、上に述べたような本学の使命や教育理念への共感と、本学における学びに対する旺盛な興味や関心、そして、その学びを通じた人間的成長への強い意欲です。
第三に、学校推薦型選抜において期待する学生像は、学校の授業の内外で、自らの興味・関心を生かして幅広く学び、その過程で見出されるに違いない諸問題を関連づける広い視野、あるいは自らの問題意識を掘り下げて追究するための深い洞察力を真剣に獲得しようとする人です。本学の総合的な教育課程に適応しうる学力を有しつつ、本学で教育・研究が行われている特定の分野や活動に関する卓越した能力、 若しくは極めて強い関心や学ぶ意欲を持つ志願者を求めます。”
要約すると、東大が多様性を促進し、学部教育の活性化のために、卓越した高校生を求めているということです。
指定校推薦との違いは?
次に、指定校推薦との比較をしながら、東大の学校推薦型選抜の特徴を挙げていきます。
第一に、合格の確実性に違いがあります。先にはっきり述べますが、東大の学校推薦型選抜は、指定校推薦ではありません。本質的には実力主義の総合選抜型に近いです。
指定校推薦では、高校で枠がすでに存在しており、学校での選抜を通過=ほぼ確実に入学許可を得られると想定されます。なぜなら、高校側と大学の提携が事前にあるからです。
一方、学校推薦型選抜は、高校側と東京大学の提携が事前にあるわけではありません。そのため、推薦の枠が事前に用意されていないため、指定校一覧表などに記載されません。生徒が、推薦を受けたいと主体的・積極的に高校に依頼しない限り、高校側は推薦する必要がありません。
第二に、評価する主体と評価が行われる範囲となる集団に違いがあります。指定校推薦では、あくまでもその高校における高校からの選抜が中心です。一方、学校推薦型選抜では、高校での選抜(最大推薦者数を超える志望者がいれば)に加えて、東大による選抜がメインです。高校での選抜は東大に出願する上で前提であり、その上で東大による選抜がメインの選抜になります。
第三に、評価のされ方に違いがあります。指定校推薦では、高校における同じ学年での相対評価になります。一方、学校推薦型選抜は、東大による絶対評価です。定員は各学部に存在しますが、合格者数は定員数よりも少ない年が多いです。そのため、定員を十分とるために、相対的に一定数の上位を合格させるというよりは、東大側が入学してほしいと感じる人しか合格させない印象があります。
最後に、評価に必要な要素に違いがあります。指定校推薦では、高校3年間の学業成績や課外活動などを、高校の先生が評価するため、基本的にはペーパーテストを受ける必要がありません。一方、東大の学校推薦型選抜は、共通テストの受験、概ね8割以上の得点が必須です。つまり、高校3年生の秋冬は、出願書類の準備や面接の準備と同時に、共通テストの勉強も進める必要があります。
特徴として、あらかじめ学部を決めておく必要なども
次に、一般選抜との比較をしながら、東大の学校推薦型選抜の特徴を述べていきます。
第一に、進学する学部の明確性に違いがあります。一般選抜では、入学後に「進振り」と呼ばれる進学選択の機会があるため、進路や将来やりたいことがまだ決まっていない段階で受けることができます。一方、学校推薦型選抜では、出願時に学部を決める必要があります。なお進学する学部の変更は入学以降不可能ですので、進学選択には参加することができません。そのため、進路や将来やりたいこと、自身が強く興味を持っている分野を出願する際に決めておく必要があります。
私の場合、法学部で合格したので、1,2年生での教養過程を終えた後、法学部への進学が内定しています。このように、学校推薦型選抜は、学部への入学という要素が強いです。学部によって選考方法が大きく異なります。具体的に述べると、求める学生像、それに応じた面接のやり方、募集人数などが特に異なります。
例えば、法学部が求める学生像は、「現代社会、とりわけグローバルな場でリーダーシップを発揮する素質を持つ学生。すなわち、優れた基礎的学力を備えるとともに、現代社会のかかえる諸問題に強い関心を持ち、実社会の様々な事象から解決すべき課題を設定する能力、さらには他者との対話を通じて、その課題の解決に主体的に貢献す る能力を有する学生。」です。一方、経済学部においては、「新しい事業または社会の枠組みを創造しようとする高い志を持ち、その礎となる卓越した能力を有する学生。」となっています。
また、面接についても、法学部は、グループ・ディスカッションおよび個別面接です。一方、文学部は、1日目に小論文を課し、2日目に面接を行います。 7分以内のプレゼンテーションを行います。その後、プレゼンテーション内容その他について面接教員との質疑応答を行います。
第二に、合格するために必要な要素の明確さに違いがあります。一般選抜では、高得点を取るという合格に必要な要素が明確に定まっています。一方、学校推薦型選抜では、合格するために必要な要素が不明確です。オリンピックにおける受賞歴や起業歴があれば、必ずしも受かるわけではありません。華々しい経歴を持っていても落ちる人は落ちます。実際、私自身もオリンピック受賞歴や起業歴はありません。むしろ、文系であれば、オリンピックにおける受賞歴を持っている人はとても少数であると思います。私は、東大とその学部が求める学生像に自身が一致していることを示すことが最も重要であると考えています。高校在学中に行ったことや、それらをどのように大学側に示すかは各個人の創意工夫、その前提となる個性や考え方によります。
東大に推薦で入るメリットとは?
最後に、推薦で入るメリットについて述べます。
なお、推薦はあくまでも入学するための一つの手段であるため、学校生活において、一般選抜の人と大きな違いがあるわけではありません。
第一に、推薦生のコミュニティに属することができます。推薦生のコミュニティにおいては、「推薦生のつどい」が2月と3月に開催され、同期の推薦生との交流ができます。それ以外にも、月に1回ランチ会や交流会が開催されます。私は、推薦生は一人ひとりが強い信念を持った個性的な人が多いので、推薦生のコミュニティは、とても温かく居心地の良いコミュニティだと感じています。
第二に、早期履修ができます。早期履修とは、1,2年生で教養学部にいる間に、進学が内定している学部の通常3,4年生が履修する科目を履修することができる制度です。なお、早期履修の内容は学部によって様々です。高い専門性を持ち、内定する進学先が決まっている推薦生ならではの権利です。
第三に、アドバイザー教員がつきます。推薦生には各学部ごとにアドバイザー教員がつき、日々の学習生活をサポートしていただくことができます。実際に利用している推薦生は少ない印象がありますが、進路や研究で悩みを抱えた際などに利用することができます。
以上、東京大学学校推薦型選抜についてでした。
東京大学の入学試験というと、一般選抜が連想されがちですが、学校推薦型選抜も一つの有益な選択肢であると思います。
是非、前向きに受験を検討していただけますと幸いです。