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アメリカンドーナツ

玉元花菜(95年生まれ 宜野湾市出身)

 高校一年生の春、一番最初の地理の授業。先生は一枚の白紙を配りこう言った。「なにも見ずに世界地図を描いてみましょう」。突然の話にみんなの「えぇ~」という心の声が聞こえた。地理が大好きな私はなんの迷いもなくジブラルタル海峡から描き始め、思い出せる限り精密に世界地図をなぞったのだった。完成した地図を見せ合い、その個性豊かな地図に話が盛り上がった。その時先生が教えてくれた、これが"マインド地図"だと。

 物心ついたときから私はすでに宜野湾市の西海岸に住んでいた。宜野湾市の西には国道58号線が走っており、そして私の住む"世界"は58号線を主軸にできていた。どこに行くにも58号線を使い、逆に宜野湾市の東に走る国道330号線は全く馴染みがなかったのだ。というのも宜野湾市の真ん中には普天間米軍基地があり、それを取り囲むように宜野湾市の市街地が広がる。この形状からよく、「宜野湾市はドーナツだね」と言われる。宜野湾市の真ん中はぽかんと空洞がある感覚なのだ。私はドーナツの右端にいて左端にはなかなか行かない。

 だからだろうか、申し訳ないのだが私はお隣の浦添や那覇が少し苦手だったりする。そして私の何人か宜野湾市出身の友人も同じ感想を抱いている。なにが苦手って「市の中にまで市街地が詰まっている!」ってところだ。そう、例えるなら彼らは沖縄銘菓のサーターアンダギー。ドーナツで育ってきた宜野湾市民はチーチーカーカー※してしまう。あんなに綺麗に世界地図を描いた私だったが、私のマインド地図はアメリカンナイズドされたドーナツだった。

 みんなのマインド地図はどのような形だろうか? 十人十色のドーナツとサーターアンダギー達が脳裏に浮かぶのだ。

※チーチーカーカーとは:口内の水分が奪われて食べ物が飲み込みづらいこと。焼き芋とかも口いっぱいに頬張るとチーチーカーカーしますよね!
イラスト:玉元花菜

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