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SUNABACO DX12th PBL体験記 ~医師という名の怪物~

SUNABACO DX12thが遂に終了しました。皆さん、お疲れさまでした!

座学後の実技として、PMのニコトラ先生、顧客は保護猫カフェMyaoの店長、私グスクがプログラマーとして役割分担した3人でteam Catを結成し、PBLという名のDXを実行し、プレゼン(ピッチ)を行いました。
そこで有難いことに我らがteam Catは最優秀賞を頂くことができました。

PBL期間中はニコトラ先生主導の下、DX進行とPBL勝利との2つの課題を同時に達成すべく、工夫を凝らしておりました。工夫については、ニコトラ先生がご自身のnoteかXかで書かれると思いますので、座して待っていてください。
(追記)真打が来ました!

私グスクはニコトラ先生に圧倒されるばかりでしたが、能力差がある人と一緒に2週間PBLを行った体験記、というのも悪くないかなと思い記録します。後半に自分用のちょっとした考察をまとめます。


最優秀賞 team C

PBL体験記

PBL期間突入まで

突然リアルの話で恐縮なんですが、妻が妊娠し、予定日が11月でした。
私淑しているフランケン先生が激推ししてたSUNABACOを、子供が生まれて忙しくなる前に体験したいなと思って9月にプログラミングコースを受けてみました。そしたら、楽しくて楽しくて。
ただ、プログラミングコースの卒業制作はアーカイブ貯めすぎで、視聴が追い付いた時には卒業制作の参加申し込みが終わってました。
仕方ないので卒制期間に一人で作ったのが、こちらのXアカウント。医学四大雑誌のアブストラクトを自動で収集、日本語要約、投稿してくれます。

これが悪くない完成度でして。これを作れた感動でこんなツイートを不用意にしたところ、なかまこさん、かりんさん、いぐおさん、あきさんから引用で受講勧められるわ、尊敬のフランケン先生からいいね頂くわ

となり受けることにしたのがDX12thでした。ただ申し込みの時にはPBLには不参加かな…と思っていました

そしてPBL期間直前、子どもも無事生まれ、家の中は戦場に

これはPBL参加しても共同制作者に迷惑をかけるんじゃないか?
でもやっぱりPBL参加したいという気持ちもふつふつと。

意を決してカンパ先生にDM
グスク「週10時間程度しか参加できそうにないのですが、PBL参加してもいいですか」
カンパ先生「大丈夫です!ご安心を」(大嘘)
グスク「よかった、じゃあ頑張ります」

PBL開始

プログラミングコースの過ちを犯さないよう、チーム発表タイミングは事前に確認し、土曜日に初回MTG。その際に役割分担を決定。自分はプログラマーになりました。

そこでニコトラ先生の恐怖の一言「プログラマーが鍵だと思ってます、試すものがパッとできるか」
グスク(これは2週間寝れんやつや)

NotionでMTG開始時にはやるべきことがすでに見える化されており、話がどんどん進む。その場で店長さんにインタビュー開始して、ステークホルダーの整理を行う。
ニコトラ先生「顧客の一番の仕事はインタビューだと思います。明後日までにこの人たち全員にインタビューお願いします
グスク(あ、酷使されるのはプログラマーだけじゃないや)

翌々日のMTG
店長「6名分、インタビューしてきました」
グスク(インタビューの熱量すごいし、聞いて欲しいってお願いした事めっちゃちゃんと聞いてくれてる)
ニコトラ先生が、場をまとめて必要な内容を書き進めていき、Notionでその場でインセプションデッキ完成し、提出。
MTG中に資料が完成しているので、後からの議事録確認によるタイムラグがないのは、その後も非常に助かりました

テーマは「保護猫の里親をデータドリブンで見つける」


後から振り返ると、このテーマ設定時にas-isとto-beの認識を可能な限り深める作業が、後々のエレベーターピッチの変更を可能にしたのだと思います。
どうしてもas-isとアクションからto-beを設定しがちなのですが、アクションは後から増えていきました。同じ単語で表されたto-beでもいろいろな側面があるので、できるだけ多様な面(階層・要素)からのto-be認識共有できればよいと思います。
今回の具体例はMVP 3rdのところで後述します。


MVP 1stにむけて

さて、この段階では当初のto-beは雲をつかむ話でしたが、具体的な何かを動き出す必要があり、要件を相談。ネイティブアプリでpush通知したいよね、なんて話もありましたが、ネイティブアプリの実装は2週間では色々と制約が大きく、結局glideに落ち着きました。
この時点で火曜日夜。猫カフェが火・水休みなので、2日後の木曜日にMVP 1stの投入予定のスケジュールでした。

自分は実は、講義でglideを扱った回は専門医試験の帰りの新幹線で流し聞きしてただけで、この時初めてglide実物を触りました。
glideは作成するときに枠を上から埋めていく感じがあるんですけど、中学生の時に手作りHPをHTMLを手打ちしてbodyを埋めていたあの感じを思い出しました。「これは時間投入による試行錯誤で何とかなる!」という感触を得て、プログラマーとして1st MVP作成に着手し、火夜・水夜の深夜作業を経て、木曜日の早朝に完成しました。
数時間前にクランクアップした素人プロダクトを、実際のお客様に使ってもらうという無茶なお願いも、店長さんは率先して引き受けてくださりました。

この後も店長さんは、深夜作業により当日朝に完成した欠点だらけの素人プロダクトを、気合で実務で当日のお客様に使ってもらい、フィードバックを取ってきてくれます。

1st MVPの図

この辺りで、ニコトラ先生の圧倒的能力を目の当たりにして、自分の役割を考え、以下の2点を意識するに至りました。
①ニコトラ先生のモチベーションを維持する
②ニコトラ先生の手をできるだけ動かさせず、頭を動かさせる

①ニコトラ先生のモチベーションを維持する
能力のある上司はプロジェクトを複数抱えてます。いかに自分のプロジェクトに能力を割いてもらうか、モチベーションを下げないか、はプロジェクト専任の下っ端としては最重要事項といえます。できることは提案された実装は可能な限り素早いレスポンスで実装し、成果をだすことです

なお、店長さんは猫のため!ということで恐ろしいモチベーションでした。

②ニコトラ先生の手をできるだけ動かさせず、頭を動かさせる
to-be設定やストーリーテリングについては、時間投入だけでは覆せない圧倒的な能力差が出ます。そのため上司をできるだけto-be設定に専念させる、頭を使わせる、というのがプロダクトの質の向上につながるかとおもいます。今回、キラーコンテンツの作成をニコトラ先生に担って頂き、手を動かさせたことに反省があるのですが、①モチベーションに大きく寄与したので、まあいいか、という適当な反省です。


MVP 2nd

MVP 1stをなんとなく実装し、木・金の営業で実際のお客様からのフィードバックも頂き、改善してMVP 2ndを投入しました。
機能は入店管理+アンケート+ネコ図鑑。MVP 1stで不評であった動線の悪さを解消し、ネコ図鑑として猫カフェ滞在中に使っていただけるようにUIを向上しました。
お客様からのフィードバックを頂ける程度には見た目や機能から試作品臭さは減り、特に猫と仲良くなりたい常連客には悪くない評価を頂きました。

なお、プログラマーは新生児を寝かしつけながら作業するもグズりMax!、能率上がらずに完徹し、なんとか朝に形にしました。そして店長さんは当日朝に完成したプロダクトを繁忙日にぶっつけ本番で使ってくださいました。稼働初日の午前中に必要な機能が動作せずに、本当ごめんなさい。


ニコトラ先生も後のキラーコンテンツの占いアプリの開発に着手し、皆で手を動かし続けるも、ユーザビリティエンジニアリング的には「本当にこれでto-beに向かっているのか?」という雰囲気は否めず。
ピッチコンテスト目線では、決勝には行けるだろうけど、優勝はワンチャン、程度の手ごたえ。材料と人材からはもっと行けそうなのに…!

そんな中、まさかのなかまこさん、かりんさんにMyaoに来店いただく。
ツイッター見ると、フランチャイズ!?そんなのあり?で発想の違いに脱帽すると同時に、これって、to-beの設定が違うんじゃ…と考え始める

そして、顧客ならインタビューしてもいいはず!ということで、なかまこさん、カリンさんにインタビューを実施。店長さんの熱意もあり、お二人とも快く応じて頂き、「里親にならない遊びにきたお客のナラティブ」「お客にとってのto-be」などを話していただく

そして店長さんが既存の里親約60人(!)にアンケートを取り直して、「実際の里親の60%は最初には遊びに来ていただけ。だんだん里親の気持ちに変わっていった」という新データを確保!

MVP 3rd

なかまこさん、カリンさんのインタビュー解析、里親のアンケートによる新データ、ニコトラ先生がXで見かけた占いアプリの拡散力などを再度揃えてto-beを再検討

as-isと当初取れるアクションから設定されたto-be:
①猫の幸せ→②殺処分数を減らす→③里親を見つける

to-be多様な階層・要素から認識しなおす
当初よりも取りうるアクションが増えているのでto-beを描きやすくなっている
新to-be:
①猫の幸せ
→②殺処分数を減らす
→③-a: 里親候補を増やす
→④-a: 来店者を増やす、特にどれかのネコちゃんを好きになってもらう。

①猫の幸せ
→②殺処分数を減らす
→③-b: 保護猫店を増やす(!)
→④-b:店の金銭的な面を安定させる
→⑤-b:来店者を増やす、リピーターを増やす

ということで、お客さんにネコのことを好きになってもらう方向で、アプリ改修を進める。ニコトラ先生が進めていたGASによるネコちゃん占いも完成(GASによるプログラムが間に合わないんじゃないかと思って、tallyでバックアッププランを設計していたのはここだけの秘密)

完成品として
glideによるホーム画面を基軸に
・google formによる入退店アンケートをリンク
glideの機能で、
・ネコ図鑑のUI
・ネコ投票機能
・今日のランダム猫ちゃん:ボタン一つで今日の推しを提示
を実装し、
・ネコちゃん占いをGASで外部リンク

この頃には私のプログラマー歴も1週間を超え、glideになれてきて、UIもこなれた感じになりました。
ニコトラ先生「投票機能を付けれる?明日の朝までに」 (11.pm)
グスク「ゾス!」
の後、実際に3時間で実装できたのには自分でも驚きました。

あと、こぼれ話として、ネコちゃんの幸せ大事だから、ということで、店長さんの業務負担の減少はプロダクトバックログの中でも常に最低位に置いていました。
普通こんなことすると、業務に使ってもらえなくてフィードバックももらえないのですが。店長さんのモチベーションには改めて頭が下がります。

そして発表会へ

MVP 3rdでかなりいいものが出来て、PBLのストーリーテリングとしても申し分ない形に完成。後はスライド作成して発表会で発表するのみ。

タイトルも「推しねこ」に決定。
picture論文のために以前PCにインストしていたGIMPを使ってロゴを作成。論文はお蔵入りしたので、こちらのロゴは日の目を見れてよかった。

ここで、(個人的)問題が発生。ニコトラ先生のスライド作成能力+プレゼン能力が高すぎて、自分が全然お手伝いできず…
店長さんはナラティブを語るので本番必須ですが、自分は戦力外のにいらない子となってしまいました。

当日に現地参加しない選択肢も出てきたのですが、なんとなく行くべきに思えて、ここで参加しないと自分が変われないような、そんな気がしていろいろなリアル事情を押しのけて参加しました。

結果的には、現地参加できて本当に良かったです。
もちろん参加者交流も非常に有意義だったのですが、やはりニコトラ先生含めた他の参加者が何を見て、どう感じ、どう対策を立てるのかをリアルタイムで見れたことでしょう。これは間違いなく成長につながりました。
現地で参加しなければ、後半の考察は全然内容が違ったと思います。

まあ、発表会本番では自分はやはりいらない子でしたけれども。
決勝のニコトラ先生のプレゼン中の気迫は、後ろからでもすさまじかったです。

感想と考察

ニコトラ先生の能力 (グスク視点)

今回の自分の学びで一番大きかったことは、やはりニコトラ先生の手腕を特等席で見れたことです。驚嘆した能力を挙げていきます。

1. 分析力
 ①勝利条件の達成、必要な要素の抽出。
 ②次の段階に進むのに、現状で不足している要素を見つける。
別の言い方をすると、じゃあ何があれば次に進めるの?、次に進んだ後困らないために今どこまで必要なの?という点の分析
 ★本人曰く「解像度を上げろ」とのことです
2. 言語化能力
 論理構成が適格かつ素早い。なにより端的で、不要な要素を付け足さない。
 ★「ニコトラの言語化ラジオ」というネットラジオを毎日上げられています
3. 安定性
 大量にデータ処理していくと上記の分析の結果がブレそうになるが、ぶれない
4. スライド作成/プレゼン力
 言語化能力と類似しますが、自分の論理構成を、相手が無理なく受け入れられるように伝える
 ★本人曰く、アウトプット量による慣れの問題だそうです
5. 好奇心

あと、ご本人はNotionの伝道師なのですが、上記の本人の特性にあっているのではないかと推察します。

自分の能力では、把握できたのは上記程度なのですが、本当はもっといろいろあると思います。
人は自分の能力の少し上は見えても、遥か上のモノは見えないのです…

問題解決能力

上記1~4の能力が備わっていると、だいたいの問題を解決して、人を動かすことができるんじゃないかな、と思います。
そこで思い出したのが、フランケン先生のラジオでの一節

「問題の形にして答えがあるよ、と出された瞬間にサラッと解いてしまう。そういう種族なんです、医者っていう怪物(クリーチャー)は」 

フランケンラジオ: Dr.F(裏ラジオ) vol.2

今回のニコトラ先生のムーブはまさにこの形で、PBLのピッチコンテストは〇〇という形で解くことができる問題であることを認識され、実力で解決されておられました。
数学で例えるなら、3次方程式まで落とし込めれば、後はスマートでも力業でもいずれにせよ解けきれる、そんな印象でした。

自分に「問題解決能力」をインストールする際の問題

自分も圧倒的な問題解決能力を身に着けたい!自分も医師だけどあんな能力持ってないぞ?というわけで、ニコトラ先生の問題解決能力がどこからやってきたかと考えます。
やはり救急医としての臨床業務をベースとして培われたように見えます。分析力/安定性は救急医の必須技能でしょうし、渉外作業も重要なER Dr.にとっては、言語化/プレゼン能力はやはり必須です。

じゃあ、自分もこのまま臨床業務を続けて、卒後X年目にあそこまで行けるのか?となった時に感じるのは働き方改革の影響です。PGY 7の分際で病院の外部に目を向ける余裕がある、さらにはSUNABACOの作業時間を確保できる。逆説的かもですが、自分がSUNABACOに参加できるこのような状況では、旧来の医者たちが身に着けていたブルドーザーのような問題解決能力を、臨床業務のみで身に着けられるのかは甚だ疑問です。
自分のようなプレ~ポスト働き方改革世代が問題解決能力を身に着けるのは、通常の業務だけでは不十分なのでしょう。空いた時間を何かしらの課外活動にあてる、それも旧来の医者が生命を削っていたかの如く。そんな必要があると思います。

追記:文章化に定評のあるJay先生が、ちょうど同タイミングで近いような意見を載せられていました。非常に読みやすいです。

SUNABACO式ユーザビリティエンジニアリング

さて、働き方改革前世代の医師も含めた、問題解決能力が非常に高い人々、これらの鬼強キャラにとっての唯一残った課題は、問題を設定することになります。
医師の思考方法から真向に反する、我を出すな、ロジカルシンキングをやめろ、というSUNABACO式ユーザビリティエンジニアリングは、問題解決よりも問題の発見や設定に真価を発揮するのではないかと思われました。

SUNABACO式ユーザビリティエンジニアリングを活用して問題を発見し、元々持っていた問題解決能力で解決する。
・・・なんだか、SUNABACO DX/AIのPBL発表会が、鬼がもらったばかりの金棒を振り回している武闘会に見えてきました。

最後に

講義内容も素晴らしかったですし、PBLも参加できて本当に良かったです。自分が医者の仕事以外でも人を助けることができる、というのは貴重で新鮮な体験でした。
team Catのメンバー、そして一緒に学んだ受講生の皆さん、本当にありがとうございました。あと、ニコトラ先生、好き勝手書いてごめんなさい。また、場を作り維持し続けて頂いているSUNABACOのスタッフ様方に感謝申し上げます。
皆様には引き続きお世話になるかと思いますが、よろしくお願いします。

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内科医グスク
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