【迷曲アワー】三遊亭円丈「恋のホワン・ホワン」。実は「スペクターサウンド」である。
むかし、小さな出版社で働いていたときに、まだデビューしたばかりの槇原敬之氏にインタビューする機会がありました。
「槇原さんは、どんな歌手が好きなんですか?」
「ニック・ロウです」
「おお、そうですか!私も好きでして。とくに『Cruel To Be Kind』が好きなんです」
「・・・はぁ?」
槇原氏は、ニック・ロウの何を聴いていたのであろうか。いまでも疑問である。
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稲増龍夫「歌謡曲 完全攻略ガイド ’68‐’85」を読んでいたら、なんと、ニック・ロウの『Cruel To Be Kind』が日本人にカバーされていたという事実が!
三遊亭円丈師匠が「恋のホワン・ホワン」という珍妙なタイトルでカバーしておりまして。これが、まあ、フィル・スペクターサウンドなんですねえ。「ウォール・オブ・サウンド」という奴です。大滝詠一さんや山下達郎さんが愛したエコーをガンガンに効かせたサウンドです。
円丈師匠の歌は、はっきり言って「下手」です。笑えるくらいに下手です。しかし、ここまで下手だと「味わい」が出てきます。
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こちらが、本家本元のニック・ロウの『Cruel To Be Kind』。わかりやすいポップスです。売れ線です。いいですね、明るいポップミュージックは。
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かくいう、わたくし、大学受験のときに、「暗記ものはすべて捨てよう」という受験戦略をとっていました。おかげで「公式を覚えないと解けない数学」は、二回連続で「0点」。
世界史は「年号を覚えない」ことに。英語は「単語を覚えない」ことにしました。
で、高校3年の英語(リーダーの時間だったかな)の授業で、教師から、「Cruel sea とは何か。はい、君」と当てられ、困ったわたくしは、「クルーエル・・・狂えるように荒れた海」と答えたら、「チミは予習というものをまったくしないんですね。絶対に浪人します」。
まあ、奇跡的に現役合格できたんですが。合格通知をもらって担任の体育教師に電話したら、「そりゃ、お前、絶対になにかの間違えや!とにかく、すぐに入学金を収めてしまえ!金さえ振り込んどったら、あとで、なんとでもゴネて入学にできる」とまるで私の合格が、採点ミスかのようなことをぬかしました。だいたい、体育教師という奴にロクな奴がいない。脳が筋肉でできてるのでしょう。
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この本、いろんな「隠れた名曲」が載っていて、読みながら、ユーチューブで検索すると楽しいです。チェッカーズの「OH!!POPSTAR」という曲も、この本で初めて知りました。イントロのエレキギターが無茶苦茶カッコいいですねえ。世の中、まだまだ知らないことばかりです。
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ちなみに、「Cruel」というのは、「残酷」という意味らしいですね。今日、はじめて知りました。「狂える」でも、あながち間違っていないのではないでしょうか(知らんけど)。