そろそろ、「ジューシー・フルーツ」を再評価しようではないか。(2024年8月3日改定版)
「時代の徒花」「コミックバンド」「しょせんは歌謡曲」みたいな扱い方をされたジューシー・フルーツなんですが、いえいえ、なかなか実力を持った日本では珍しい「センスの良いポップスバンド」だったのではないかな、と。
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では、私がおすすめする「ジューシー・フルーツ」の名曲5選をご紹介しましょう。
■「十中八九N・G」
作詞:沖山優司
作曲:近田春夫
編曲:Juicy Fruits
1981年2月1日発売
https://www.youtube.com/watch?v=Q_C1CrZLoFI
♬ ここに ナイフが もし あったら ♬ というフレーズのイリアの凄みがカッコいい。
男性陣のコーラスワークも素晴らしい。
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■「これがそうなのね仔猫ちゃん」
作詞・作曲:近田春夫(1981.05.01発売)
サッポロビール「グイミー」CMソング
テレビCMでは「♬ キラキラ ♬」というところが、とてもキャッチーでした。ギターフレーズがひたすらカッコいい。
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■「恋愛スランプ」
作詞:三浦徳子
作曲:柴矢俊彦
編曲:Juicy Fruits
1981年11月発売
https://www.youtube.com/watch?v=BsWmvSfvk6M
♬ 真夜中に占ったトランプに言われた 恋愛スランプ ♬ というところが可愛くてカッコいい。
間奏がなんとなく、サザンオールスターズの「勝手にシンドバッド」みたいになるなど、すべてのフレーズが「どこかで聴いたことがある」既視感だらけの名曲である。
リードボーカルのイリアは、徹頭徹尾「超ファルセットボイス」で貫き通していて、「おとぎの国」に迷い込んだような一曲である。
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■「哀シャローム」
ジューシィ・フルーツ+1(藪本雅子)「哀シャローム」
作詞 三浦徳子
作曲 筒美京平
編曲 Juicy Fruits、戸田誠司
1982年5月発売
https://www.youtube.com/watch?v=6B1F66IMJKI
筒美京平さんが満を期して登場。
♬ 愛しているなら シャローム シャローム ♬ というフレーズは、モロにヒット狙い。
とにかくカッコいい曲であります。
藪本雅子がキーボードで参加。日本テレビ出身のアナウンサーである。
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■「夢見るシェルター人形」
作詞・作曲:セルジュ・ゲンスブール
日本語詞:ちあき哲也
編曲:Juicy Fruits、戸田誠司
1982年7月発売
フランス・ギャルのヒット曲『夢見るシャンソン人形』のカバー。
筒井康隆原作映画『ウィークエンド・シャッフル』のエンディング・テーマです。
私は、映画『ウィークエンド・シャッフル』を観に行って、初めて聴きました。それまで、フランス・ギャル「夢見るシャンソン人形」も聴いたことがなく、「なんてよく出来たポップスなんだ!」と映画を観終わったあと、レコード屋へ走ったことを思い出します。
で、この曲、放送禁止になっていた? くわしいことは「出版工房ひうち」さんのブログから引用させていただきます。
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あなたは、ジューシー・フルーツの歌っていた(アルバム「27分の恋」収録の)「夢見るシェルター人形」という歌を知っているだろうか?
そもそも、ジューシー・フルーツというバンドは、テクノポップ系のオモシロバンドというコンセプトだったと思う。近田春夫のプロデュースによるキャッチ―な音楽(+隠し味としてのひねり、アイロニー感覚)をモットーにしていたように思えた。
デビュー曲の「ジェニーはご機嫌ななめ」や事実上高田みづえとの競作「そんなヒロシに騙されて」のベンチャーズ+GSサウンドなどは、批評性もある印象だった。
この「夢見るシェルター人形」は、レコード発売直後、歌詞が不適切ということで、放送禁止になった。この放送禁止は、通常の、差別、原発、などの社会問題をリアルに歌詞にしたというタイプの禁止(自粛という規制)ではなく、一般人にはアイロニーがわからない、というタイプのものだと思える。
この手のアイロニーをまともに受け止めてしまう一般人は、はたしてどれだけいるのだろうか? 考えてみてもいいと思う。
以下、歌詞(訳詞?)を紹介しよう。
夢見るシェルター人形 (1982年:ジューシー・フルーツ、訳詞?作詞?:ちあき哲也)
〔原曲:夢見るシャンソン人形、フランス・ギャル。作詞・作曲:セルジュ・ゲンズブール〕
*↓ 問題(放送に適さないと問題)になったと思われる箇所
星よりキレイな核ミサイル
弾けて街中が光になったの
授業が無いのは嬉しいけど
一人じゃ愛なんて習えもしないわ
あれから夜はどこかに行ったわ
あれから朝も帰って来ないわ
友達代わりのコンピューター
ホントの太陽の真下が好きなの
私は夢見るシェルター人形
触れたら解けそうな危険な雨でも
このままあの人の胸まで走って
二人の物語続けてみたいわ
しかし、この曲は、全体に逆説的な風刺が効いていて、問題にする方が問題なような気もする。作詞家のちあき哲也の訳詞?も、うまい。ちあきは「飛んでイスタンブール」のような曲や「吾亦紅」のような曲の詞も書くのだ。やはり力があるんだなあ。
いま、イラン、北朝鮮、だけでなく、核保有国、核を本気ではなくそうとしない?国連諸国でも、ぜひ日本語詞で聞いてほしい曲だ。
この曲の詞がやばいのかやばくないのか、あなたにも考えて欲しい。
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■番外編:「東京キケン野郎」沖山優司
この曲、好きなんですよ。プロデューサーも近田春夫が「いまこそ、リズム歌謡だ!」と打ち出した渾身の一曲・・・であったが、あまりヒットしなかった。私はレコード買いました。いまも持っています。MBS「ヤングオーオー」にも沖山さんは出演し、この歌を歌っていました。
沖山優司/東京キケン野郎 (1981年)
作詞・作曲:編曲:沖山優司
イントロのギターフレーズとハンドクラッピングがカッコいいぜ!
男は恋のためなら、東京タワーにも登るし、山手線の線路を走ったりもするのです。
ザ・ぼんちに提供した曲のセルフカバーであることは、あまり知られていません。陣内孝則もカバーしています。
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