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オムライス

暮れゆく街は風もなく
歩いても歩いても
生ぬるい空気が付き纏う

折り返し地点で
古い松の幹に手を充てると
いつもと感触が違う

違っていたのは僕の方だった
何かの力が宿ったような気がする

そういえば妻は今夜の晩ごはんを
まだ決めていないと言ってた

それを当てよう
いやそれでは手ぬるい
僕が決めたメニューを作らせよう

チャーハンを作っていたとしても
ケチャップを入れさせ
薄く焼いた玉子を纏わせよう

そう
オムライスだ

オムライスオムライスオムライス
オムライスオムライスオムライス
僕は念じながら歩いた

人を連れた犬が
立ち止まったまま動かない

そうか
犬は僕の念力を感じて
怯えているのだろう

オムライスオムライスオムライス
オムライスオムライスオムライス

家に帰ると妻は
チャーハンを作っていた

「オムライスを作ろうって
気にならなかった?」

「全然。1ミリも」

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