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糸電話

久しぶりに会ったその人は
眠っていた僕を起こして
迷い込んでいた森からも
抜け出させてくれた

昔みたいに
大きな瞳で正面から見つめて
僕を肯定してくれて

つい言ってしまいそうになった
昔何度も言った自慢話を
僕から切り落としてくれた

すっかり醒めた僕は
何度も頷いて話を聞いた

ゆるんで幾つもの輪になった糸を
指に巻き付けているうちに
ちゃんと話せる糸になって
今の音が聞こえ出した

これからの話をしよう
 時間はまだいっぱいある

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