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NHK大河ドラマ「光る君へ」、一条天皇崩御の辞世の句が気になる。

日曜日のお楽しみはNHK大河ドラマ「光る君へ」。
豪華なセットや衣装は眼福、役者の芝居も素晴らしく、シナリオも冴えている出色の出来のコンテンツです。
視聴率は10%を割っていますが、オンデマンドではしっかり視聴数を出しているとのことで安心しています。

このドラマ、役者のハマりっぷりがさすがキャスティングに強いNHK。
一条天皇役の塩野瑛久さんはオーディションで選考されたそうですが、 帝の役を演じるにはキャリアが浅いと判断されてもおかしくないのに、抜擢した人の眼力が素晴らしいし、演じた塩野瑛久さんも度胸が凄い。

帝の役は、歌舞伎役者や伝統芸能の家の御曹司が演じると収まりがいいだろうに、圧倒的な美貌と細やかな演技力で役になりきる。
カメラを長回しして台詞の掛け合いをする難しいシーンも、安定感のある芝居で演じ切ったのを見て、
「これからオファーが殺到するだろうなぁ」
と思いました。

一条天皇の臨終の場面での辞世の句、

露の身の草の宿に 君を置きて
塵をいでぬる ことをこそ思へ

歌の「君」とは誰のことなのか、という話題が盛り上がっていますが、これは皇后宮の定子さまではないかな、と思っています。
第3子の出産に臨んで、死を予感した皇后宮が遺していた和歌は3首。
3つめの

煙とも 雲ともならぬ身なりとも
草葉の露を それとながめよ

この和歌への返歌になっているのでは…。
出産で命を落としてしまうと、現世では仏道に入っていないので、浄土への旅路に向かうことができず、魂は現世を彷徨い続けるのだそうです。

産褥死した皇后宮は次の世に転生することもなく、葬られた土地に茂る草葉の露を頼りに思い出すほかないとするなら、
「露の身の草の宿」
に残されているのは皇后宮で、
「塵をいでぬる(出家する)」
仏道に入り死後は浄土へ向かう一条天皇は、愛する人と2度と会えないという意味ではないのかな、と思いました。

ドラマ中では優雅な物腰の美男子として描かれる一条天皇ですが、記録を見ていくとなかなか気が強い人物だったようで、藤原道長に対しては非常に含むところがあったはずです。
どこで確信しているかというと、生前に父親の円融天皇の陵のとなりに土葬するように公言し、臣下に心づもりをさせている事実。
円融天皇も藤原氏と対立した人物なので、親子で墓所を並べてしかも土葬を求めるというのはなかなかですよね…

一条天皇の死後、わざわざ遺言を違えて火葬にした上、遺骨を埋葬せずに自分の権力が及ぶ場所で管理し続け、葬る場所も生前に希望していた土地からはずらしている。
道長は恨まれているのを知っていたし、怨霊になって藤原氏に祟るのを恐れていたんでしょうね。

「光る君へ」の参考文献に。
一条天皇のファンになること間違いなしの1冊です。

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