2024/10/31(虚)
短歌を作った。作っているうちに日は暮れて、どこにも向かえないならどこに行こう、と小田急線町田駅の脇の方の改札口から出てすぐの出口、百貨店のエレベーターに吸い込まれそうになるのを堪えてようやく出ることができるその出口に立ってみる。五七が歩いてきて、八九の音がする。七八、七六、七七、言葉を文字数に分割する態度がどこまで誠実な行いなのか、分からないでいる。文字を区切っているのは自分で、だったら、とその時坂道に斜めに立った警備員が警棒を落として、手首に紐をかけていなかったから、坂道を転がって自分の方へ勢いよく迫ってくるその赤い光を目で追いかけて、サイドステップの筋肉を久しぶりに使う。それは太ももの奥の方で踏ん張るような感覚だった、そういえば昔も、赤い光は自分の手をくぐり抜けそうになったところで足元で絡まって僅かに留まり、その隙に持ち手の紐を逆の足で押さえつけて、ああ、ああ、ありがとう、と警備員が転がってくるのを僕は、自分じゃないような感じがして眺めた。こんなにサイドステップを踏んだのは、何年ぶりだろう。八五、けれど、世界と関わりあうことが、八五、また、足で踏んづけている警棒の紐をゆっくりと、また転がらないように、首根っこを押さえたまま足の圧力を解放して、見上げたらもう警備員の顔がしっかりと見える。まだ光る、点滅する、その赤い光を手で持て余すことを、あとほんの一瞬、もうほんの一瞬でも、このまま続けていたいと思った。