総合自動車リサイクル業者D社、令和4年度中小企業診断士2次試験事例Ⅳについて
令和4年度中小企業診断士2次試験事例Ⅳについての深堀を行います。
令和4年度中小企業診断士2次試験事例Ⅳの問題について確認したい方はこちらをご覧ください。
それでは、参りましょう。
1.外部環境
2021年中古車市場規模は調査開始以来最大
■中古車購入の費用総額は、4兆1699億円と推計。
2015年の調査以降拡大傾向にあった中古車市場だが、前年は減少に転じた。今年は前年からの回復にとどまらず、
ここ7年間で最大の市場規模となった。
■1年間の中古車購入率は3.3%で、昨年より0.2ポイント増加した。
■中古車購入台数(延べ)は、269.0万台で、前年より15.4万台増加した。
2.D社分析
(1)概況
事業:総合自動車リサイクル業者
資本金:15百万円
直近売上高:10億3000万円
授業因数:D社53名、同業他社23名
業況:近年の環境問題や循環型社会に対する関心の高まりに伴って順調にビジネスを拡大し、今では海外販網の展開や更なる事業多角化を目指している。
中古パーツのリユース・リサイクルによる販売中心から
良質な中古車の買い取りと再整備を通じた中古車販売事業を新規事業として検討中。
この新規事業には、既存の中古パーツ販売事業ともプラスの相乗効果をもたらすと考えていること。
新規事業のターゲットは、当面は海外市場を中心。
D社は、ノウハウ不足、リスクマネジメントが重要と判断。
外部コンサルタントを加えて検討している。
(2)財務分析
①収益性
●売上高総利益率
◎D社:59.59% 同業他社:31.78%
●売上高販管比率
×D社:45.09% 同業他社:21.95%
●売上高営業利益率
D社:14.50% 同業他社:9.84%
●売上高経常利益率
D社:15.96% 同業他社:9.90%
●売上高当期純利益率
D社:11.17% 同業他社:6.90%
②安全性
●流動比率
◎D社:368.82% 同業他社:224.85%
●当座比率
◎D社:331.01% 同業他社:177.98%
●負債比率
D社:100.34% 同業他社:93.47%
●自己資本比率
D社:49.91% 同業他社:51.69%
③効率性
●総資本回転率
D社:1.70回 同業他社:2.27回
●売上債権回転率
D社:23.75回 同業他社:21.74回
●棚卸資産回転率
◎D社:33.41回 同業他社:22.08回
●有形固定資産回転率
D社:6.12回 同業他社:13.72回
④生産性
●付加価値生産性
付加価値額(百万円)/労働投入量(人)
※付加価値額=経常利益+人件費+支払利息ー受取利息・配当金+賃借料+租税公課+減価償却費の場合は、
D社:43,469万円 同業他社:27,578万円
付加価値生産性は
D社:820.17万円 同業他社:1197.30万円
尚、付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
でも良いとされている
3.設問と回答
(1)セールスミックス、線形計画法
営業利益を最大化する生産・販売量の組み合わせを最適セールスミックスという。その際には、営業利益を最大するセールスミックスを考える時には、固定費を考える前の限界利益を最大化するセールスミックスを計算することになる。
①直接作業時間のみが制約条件の場合
制約条件となる直接作業時間1時間あたりの限界利益を比較する。
製品A:(7,800 円-400 円×4kg-1,200 円×2h)÷2h=1,900 円/h
製品B:(10,000 円-400 円×2kg-1,200 円×4h)÷4h=1,100 円/h
他に制約条件がないため、製品Aを年間最大直接作業時間まで製造する。
製品Aの製造・販売量=3,600h÷2h=1,800 個
利益額=製品Aの限界利益 3,800 円/個×1,800 個-4,000,000 円
=2,840,000 円
②直接作業時間のみが制約条件+原材料の消費も制約条件となる場合
製品Aの製造・販売量をX(個)、製品Bの製造・販売量をY(個)
アルミニウム消費量(kg):4X+2Y≦6,000……①
直接作業時間(h):2X+4Y≦3,600……②
利益額(円):3,800X+4,400Y-4,000,000……③
制約条件①、②の範囲内で、③を最大化するXおよびYを求める。
X=1,400(個)、Y=200(個)
よって、利益額は③より、2,200,000 円
(2)CVP分析
自社で点検整備を行う場合の変動費を算出すると共に、
他社への業務委託費用を比較する。
自社で点検整備を行う場合の変動費(1台あたり)
=直接労務費 6,000 円+間接費 7,500 円×0.3
=8,250 円
中古車の買取価格をX(円)とすると、
他社への業務委託費用は 0.02X(円)となる為、
これが、8,250円より下回っていれば、業務委託する方が良くなる為、
他社に業務委託すべき条件は、0.02X≦8,250(円)
従って、X≦412,500(円)
(3)税引後キャッシュフロー、回収期間法
中古車販売収入:60 万円×20 台×12 か月=14,400 万円
中古車仕入支出:50 万円×20 台×12 か月=12,000 万円
点検整備支出:(1万円+0.45 万円)×20 台×12 か月=348 万円
減価償却費:7,200 万円×(1-0.1)÷15 年=432 万円
よって年間 CFは、
(14,400-12,000-348-432)×(1-0.3)+432=1,566(万円)
回収期間の算出する場合は、在庫投資分も加味して行うこと。
工場拡張投資額7,200万円+在庫投資額1,000万円(50万円×20台)
の8,200万円。
よって、
8,200÷1,566=5.23627・・・≒5,24年
(4)NPV法
工場拡張時(2年目期首)を基準に正味現在価値を計算する。
初期投資額は
(7,200 万円+50 万円×20 台)=8,200 万円
当初5年間の CF(設問2より)毎年 1,566 万円
5年後以降の継続的な CFは、150 万円÷0.06=2,500 万円
5年後の在庫分の取り崩しによる CFは、50 万円×20 台=1,000 万円
従って、
正味現在価値:8,200+1,566×4.2124+3,500×0.7473
=1,012.1684(万円)
(5)リスクマネジメントと財務的観点
リスク
・資金繰りが悪化するリスク
・為替リスク
・価格変動リスク
・資金流動性リスク
リスクマネジメント
・貿易保険
・為替予約による回避
・オプション取引による回避
・現預金と在庫の適性水準化
・ 資 金 計 画 を 策 定し 、 資 金 繰 り に 応 じ た 仕 入 を 行 う 等 に よ り 資 金 シ ョ ー ト を 回 避
以上になります。
まじかに迫った口述試験対策の一助になれば嬉しいです。
最後まで、お読みいただき有難うございました。