ブラックパンサーはなぜアカデミー賞を取ったのか
美術賞、衣装デザイン賞、作曲賞とアカデミー賞を三部門受賞した『ブラックパンサー』。コミックを原作としたアクション映画でありながら、なぜブラックパンサーはアカデミー賞を取れたのか。
ブラックパンサーは初の黒人主役ヒーローのアメコミを映画化したものです。世界中で大ヒットしたこの映画の最大のポイントは黒人という存在をテーマにしていることでしょう。
主要なキャストだけでなく監督も黒人。黒人という言葉はちょっと表現が違いますね。アフリカ系。それがこの映画のあらゆるところにテーマとなっています。
ブラックパンサーは表向きはアフリカの小国ながら謎のレアメタル、ヴィブラニウムによって密かに高度で豊かな国であるワカンダを舞台としています。いかにもアフリカな民族衣装を身にまとい部族的な伝統を守り、そこに最先端の科学技術が同居している。まさにアフリカ系の夢の国です。
映画はアフリカ系のファッションやブラックミュージックに溢れています。しなやかなアクションもアフリカ系ならではといえるでしょう。
そんなアフリカ系の夢の国がもしあったら。。。
ブラックパンサーが映画としてすごいのはこの先です。ブラックパンサーは厳しい現実を突きつけます。
もしそんなアフリカ系の夢の国が本当にあったら、それは世界中の苦しんでいるアフリカ系を見捨ていることになるのです。
ワカンダ国王を継承する主人公ティチャラ(ブラックパンサー)がこの現実と向き合っていくのがブラックパンサーのストーリーの中心となります。非常に社会的で重いテーマです。
最後にティチャラはワカンダの開国を決断し、国連でスピーチするのですが、これがまた非常によくできています。世界に開いて助け合うことを訴える主人公ティチャラのスピーチは、自国中心主義を掲げるトランプ大統領の言葉のまさに真逆となるのです。
ただ、アフリカ系が主演、監督を務めてアフリカ系を舞台として映画をつくった。ブラックパンサーはそういう作品ではありません。
ヒーローアクション映画でありながら、アフリカ系という存在を深いテーマとしてそこに盛り込んでいます。だから、ブラックパンサーはアカデミー賞にノミネートし、音楽や衣装の賞を取ることができたのです。