ハッピーバースデー to Aさん
8月6日
誕生日を迎えた方がいた。
今年で90を迎える彼。
人生のほとんどの誕生日を複雑な思いで過ごしてきたのだろう。
それは
あの日から四半世紀後に誕生した世代には、
到底、想像が及びもつかない感情だろう。
今は
ここで過ごすしかない状態だけど
それでも、食べる事が大好きで、
彼なりに生きてきて今日がある。
卒寿のお祝いを
大勢の家族に囲まれて祝ってもらえる
彼ではないけど
せめて
私がお祝いの気持ちを伝えるよ。
「Aさん、今日、誕生日なんですね。
卒寿ですよ。おめでとうございます。
お祝いに、私が、パッピーバースデー
歌って差し上げますね。」
笑顔を向ける私の前に
拘縮気味の彼の腕が、勢いよく現れ
まるで、ゲリラ豪雨時のワイパーのように
勢いよく左右に往復を続けた。
全力で拒否られた。