エピソード65 くだん(件)
65くだん
件(くだん)は、19世紀前半ごろから日本各地で知ら
れる予言獣(妖怪)。
「件」の文字通り、半人半牛の姿をした妖怪として知
られている。
人間の顔に牛の体を持つ件が、天保7年(1836年)、
京都府宮津市の倉梯山に出現したと触れまわる当時の
瓦版が現存する。
この件は、その先数年連続で豊作が続くと予言し、
また、その絵図を張り置けば家内は繁盛し、厄も避け
られると教示したという。
さらに幕末の錦絵「件獣之写真
(くだんじゅうのしゃしん)」に、牛の子として生ま
れ、予言を残して三日で死ぬと書かれている。
明治時代に現れた時には日露戦争を予言し、昭和の太
平洋戦争時には終戦を予言したという。
世情が不安定になると、顔を出す妖怪なのである。
65くだん オリジナルストーリー
江戸時代の末期のこと、ここは江戸に近いとある村。
飼っている牛が出産するというので大吾は急いで家に
帰る途中だった。
大吾:
町にいってすっかり遅くなってしまった。うちの牛の
さくら元気な子供もう生まれちまったかな~、さくら
も元気でいてくれるといいけどな~。
大吾が自宅に着くと父親が青ざめた青をして牛小屋か
ら出てきた。
大吾:
父ちゃんどうした?何かあったか?
まさか子牛ダメだったのか?
父親は何も言わずただ首を横に振った。
大吾は急いで牛小屋に飛び込んだ。
母牛のさくらは元気に鳴いていた。しかし、さくらが
生んだ子牛が普通ではなかった!
子牛の身体は普通の牛であったがその顔はまるで人間
のものであった!
大吾:
なんてことだ!どうして人の顔の牛が生まれるんだ~
......いや、村の長老に昔そんな牛が生まれたって話
を聞いた気がする。
くだん:
そんなに騒ぐな、俺だって好きでこんな姿で生まれて
くるわけじゃないんだ。
俺は「くだん」、少し先におこる分かる化け物さ。
大吾:
え、お前生まれたばかりなのにしゃべることが出来る
のか!しかも、先におこることが分かるって村の祈祷
師の婆さんみたいだな。
くだん:
俺は化け物だ、言葉は誰かに教えてもらうわけじゃね
え。
それに俺の予言はあいまいじゃない細かく言ったこと
すべて当たっている。
実は俺が今日生まれて来たのには訳がある、今日から
3日間1日ひとつづつ予言を言っていくちゃんと聞く
んだぞ。
今晩、晩飯にうさぎ汁が出る。しかも出るのは茶色の
うさぎの肉を使った鍋だ。楽しみにしていろ。
次の朝大吾は大慌てで牛小屋にやってきた。
大吾:
おいくだん!お前の言った通りだった。
晩飯にうさぎ汁が出た、しかも父ちゃんは白うさぎを
使おうとしたら、山から狼がやってきて白い方をさら
っていったんだ!
それでもう一羽の茶色になったんだ!
なんでお前はそこまでわかったんだ!
くだん:
ふっ、俺は適当に言っている訳じゃない、先のことが
見えるからそれを伝えているんだ。
まあ今回はノストラダムスの話と同じ様だったがな、
あぁこれはこっちの話。
さあ、じゃあ次の予言を言うぞ。
明日夕方虹が出るしかも雨も降ってもいないのにだ。
そして烏もスズメも全ての鳥の鳴き声が聞こえなくな
る。
次の日たしかに夕方西の空に虹が出ていた!
東ではなく西に!
そして大吾が耳を澄ませると朝には鳴いていた鳥の声
は一切なく近くの森も静まり返っていた。
くだん:
どうだった、俺の言った通りになったろう。
では3つ目の予言を言うぞ、
今夜10月2日亥の刻の頃大きな地震が来る!
誰も経験したことのないような大きなやつだ!
俺はこれをお前達に伝えるために生まれて来たんだ!
前の2つはこれを信じさせるためのお前に伝えたにす
ぎん。
さあ大吾村のみんなに伝えろ、夜になったらみんな家
の火を消して山のふもとの神社に集めるんだ!
一人でも犠牲者が少なくなるようにな!
このくだんの話を聞き大吾は夜、戌の刻今の8時から
村の1件1件をまわり「野党がこの村を襲うから神社
に逃げろ」と言って回った。
こうして村人達のほとんどが神社に集まった、
しかし声掛けをした大吾がいない。
村人達も大吾が嘘をついたのかと騒ぎ始めた。
時は亥の刻、10時になった。
その時だった誰も経験したことのない立っていられな
いほどの大きな地震が起こった! 村人みんなは地に
伏せ頭を抱えた。
大吾はいったい?
大吾はまだ村にいた!大吾は寝たきりの近所のお婆さ
んを避難させるため説得して負ぶって家を出ようとし
たが、家が倒れて玄関がふさがってしまっていたのだ
そこに、くだんが牛小屋から抜け出しやってきた。
くだんは小さい体をぶつけて玄関をふさいでいた柱を
どかしてくれた。
くだんは血まみれになっていた。
大吾:
くだん!お前オラがここで身動きが取れなくなってい
るのもわかっていて助けに来てくれたのか!
ありがとう、くだん!死なないでくれ~。
くだん:
よかった二人とも大丈夫だな。
気にするな、俺は予言をすると3日の命なのだ。
どうせなら人助けでもしないと、
俺を信じてくれた大吾のためにもな。
そう言うとくだんはこと切れた。
大吾がお婆さんを連れて高台の神社についた時、
遠くの江戸の町が真っ赤に燃え上がっていた...。
大吾の活躍でこの村からは一人の死亡者も出なかった
のである。
後にこの大地震は「安政の大地震」と呼ばれることと
なる。
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