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エピソード21 むじな
21 むじな
民話や伝承に伝わる獣の妖怪の一種。
昔から化け狐や化け狸同様に人を化かす存在として
知られており、その腕前は
「狐の七変化、狸の八変化、貂の九化け」
といわれる様に狐や狸よりも上手だとされ、
ある古寺に棲んでいた狢は僧侶に化けて6年間も
正体を悟られる事無く成り済ましていたが、
ある日、安心しきっていたのか、居眠り中に
ウッカリ尻尾を出してしまい、正体が露見して
しまったというエピソードがある。
ムジナは小泉八雲の怪談「狢(むじな)」
に登場する妖怪としても知られています。
夜すっかり暗くなった紀伊国坂を一人の男が
歩いていると女がうずくまって泣いています。
男が声をかけても、女はただうつむいて泣くばかり。
必死になだめ、なんとか、顔をあげさせると、
そこにいたのは目も鼻も口もない、のっぺらぼう。
男は腰も抜かさんばかりに驚いて、
あわてて逃げ出します。
走りに走ってたどり着いたのが、
四谷見附のあたりにある屋台の蕎麦屋。
屋台に駆け込んだ男は、屋台の主人に事の顛末
を語ります。
主人は「それは怖ろしゅうございましたな、
ところで、おまえさんが見たというのは
こんな顔かい?」
そう言った蕎麦屋の顔は目も鼻も口もなかった。
余談ですが、ことわざ「同じ穴のむじな」とは
一見すると違って見えても、同類、仲間であること
の例え、悪事を働く同類の意味で使われます。
悪いイメージのことわざとして使われる理由は、
むじなは、仲間と同じ穴で生活する習性があり、
穴を掘れないたぬきが、穴掘りの上手いむじなの穴
を勝手に利用することがあり、人を化かすという
悪いタヌキと同じ穴で生活する習性をもつため、
悪いイメージで使われるのだと言われています。
21むじな オリジナルストーリー
月がとてもきれいな夜だった、男は友人とかなり
飲んでから家までの道をふらふらとごきげんで
歩いていた。
ある橋のたもとに来た時、
見ると橋の真ん中当たりで若い女と思われる人影が
川をのぞき込むように立っていた。
男は酔った勢いもあり、その女に声をかけた。
男:
おい、そこのねえさん、
どうしたんだい?気持でも悪いのかい?
女は振り向いて顔を見せた...すごい美人である!
女:
ありがとうございます。
実は先ほど男にふられ川を見ながら
泣いていたんです。
男:
そら~こんなベッピンさんをふるなんて
とんでもねえ野郎だな!
大丈夫お前さんほどの器量よしなら
男がほっとかねえって。
さあさあ、いつまでも泣いてねえで、よかったらこの
土産にもらったおはぎでも食いねえな。
男はにやりとしながらおはぎの箱を女に向けた。
女:
あら嬉しい、あたし甘いものに目がないの~
そう言った女の顔から眼玉が落ちた、
続いて鼻も口も、...
女の顔は何もないのっぺらぼうになった!
男:う、うわ~バケモンだ~!
男はおはぎの箱を投げだしてその場から逃げ出した。
しばらく走って息も絶え絶えお寺の前あたりに来ると
そば屋の屋台が出ていた。
やっとあえた人間にホッとして、男はそば屋のおやじ
についさっきあったことのてんまつを事細かく語った
しばらく洗い物をしていたおやじだったが、
おやじ:
そりゃ~大変なめにお会いなすったですね~
...ところで、その女の人は、
こんな顔じゃなかったですかい?
とおやじが見せた顔はのっぺらぼう。
男はバタンと気を失った。
おやじ:
フフフ、人間なんてな~たわいもないな。
この程度で化かされて。
さてこいつの身ぐるみ全部いただくとしよう。
そんな事を言っていると何やら前の方から
誰かやってくる。
おやじ:
なんだあいつは肩に鉄砲抱えてやがる、
しかも背中に何かの動物が入った籠しょってやがる。
だ、だれだおめーは?
猟師:
だれだはないだろう、お前たち「むじな」が俺様に
化けて悪さしおってからに、
お前の仲間も捕らえてきてやったぞ。
そういって男はかぶっていた頭巾を取った。
おやじ:
あわわわ~本物ののっぺらぼうだ!
許してくれ~俺たちが悪かった~
そういってそば屋のおやじに化けたむじなは倒れた。
猟師:
おい、おい、
だめだ完全に気を失ってるし、むじなに戻ってる。
情けない、同じ化けることが出来る仲間として
恥ずかしいわ。
さてとこいつもこの籠に入れてと、
あとはこの倒れている男から有り金全部
いただくとしよう。
そこに、夜空から何かが舞い降りてきた!
天狗である。
天狗:
動物の分際で化けて人間をだますとは不届き者が、
ワシが裁いてやろう!
そういって天狗がうちわを振り上げると、
のっぺらぼうは気絶して倒れた。
天狗:
あ~情けない。
気絶してのっぺらぼうからタヌキに戻っているし。
まあ同じ穴のむじなっていうくらいだから
同じようなモノね。
そう言うとタヌキも籠の中に放り込んだ。
天狗:
でも私もこのカッコしてるの疲れるのよね、
エイ。
天狗に化けていたのはキツネだった。
天狗:
よかったわ間に合って、気絶しているこの男
よくうちのお稲荷様にお参りに来るのよ。
たまには借りを返してあげないとね。
そう言ってキツネは山に帰っていった。