エピソード72 しろうねり
72白溶裔(しろうねり)
白溶裔(しろうねり)は、鳥山石燕の妖怪画集
「百器徒然袋」にある日本の妖怪。
ぼろ布でできた竜のような姿で描かれ、うねりという
漢字の「容裔」(ようえい)という熟語は
「風でものがなびく様子」を示す。
石燕による解説文には「古きふきんの化けたるもの」
とあり、古い布巾が付喪神化したものと考えられる。
昭和・平成以降の妖怪関連の書籍では、古い雑巾や
布巾がこの妖怪に変化し、人間を襲い、体を覆う不
快な粘液と全身から放つ悪臭で人を気絶させるとい
う解説がしばしば見られる。
2白溶裔(しろうねり)オリジナルストーリー
ここはとある昭和時代の小学校、先生と児童たちが構
内にある古い石倉の中の掃除をしようとしていた。
先生:
いいかみんな、この倉は小学校ができる前からある古
~い建物だ、年一回扉を開けて中の物を虫干ししてい
るんだ。みんな気を付けて手伝ってくれよ。
児童:
はーい。でも先生、こんな古い倉だと怖いモノもあっ
たりしないんですか?髪の毛の伸びる日本人形とか、
河童のミイラとか、お化けが出る掛け軸とか?
先生:
ああ、そういったものはすでに先生が供養しているか
ら...いやいや、それはオカルト雑誌の読みすぎだぞ。
あるわけないだろう。ハハハハハ。
児童:
なーんだ、つまんない。
じゃあさっさとやって終わりにしよう。
あれ、なんだこの入り口のところのボロボロの雑巾、
こんななのに何で捨てられてないんだ?
よーしオイラが捨ててやろう。
うわ~~臭い!気絶しそうだ!
先生:
なにやってる、大丈夫か?
ああ、それは防犯ように生乾きの雑巾を入り口に引
っ掛けといたんだろう、ハハハ。
冗談はさておいてこれは先生が後でやっておくから
みんなは古い本とか虫干し頑張って終わそう。
児童:
はい。
こんなやりとりを学校の敷地の外から聞き耳を立て
て聞いていた男がいた。
そして児童達も帰って夜になった。
古い石倉の前には月明かりに照らされ一人の男が立
っていた。
泥棒:
いや~いい話を聞いたぞ。
たぶんこの倉は百年以上昔から立っているんだ、
そしてこの中には売ればかなりの額になるお宝が
沢山眠っているはずだ。
しかも、所有者もはっきりしてないだろうから
売っても足がつくこともあるまい。
こんないい話ほっとけるわけないだろう。
ヒヒヒヒ。
泥棒は倉のカギを持っていた針金で簡単に開ける
と、懐中電灯をつけて中に入って行った。
泥棒:
ほ~こりゃ凄いな。
金や小判はなさそうだが骨董屋のオヤジが喜びそう
な壷や掛け軸が沢山ある。こりゃいい儲けになりそ
うだ。
そう言って泥棒が倉の中を物色していると、
倉の中を昼間のボロ雑巾が風もないのにフワフワ飛
んできた。
泥棒:
ん?なんかくせぇな。
しかもどんどん臭いが強くなってきている。
な、なんだこりゃ!このボロ雑巾オレを狙って飛ん
できやがった!
泥棒は立ち上げって逃げ出そうとしたが、ボロ雑巾
が男の顔に張り付いて離れなくなった。
泥棒はバタバタ暴れたが気絶したのか倒れて動かな
くなった。
そこへ誰かが飛び込んできた。
そしてなにか呪文を唱えると、倒れている泥棒から
ボロ雑巾を引きはがした。
先生:
やっぱりそうか、お前は妖怪しろうねりだな。
この石倉を建てた時に門番代わりに魂を吹き込まれ
たんだな。
お役目ご苦労さん、でも悪人とはいえ殺しちゃダメ
だ。
この後泥棒は警察に引き渡され、石倉は何事もなく
元の状態にもどった。
妖怪しろうねりのボロ雑巾はというと...
先生:
さあ、洗濯してきれいに臭わなくなったぞ。
ん、大丈夫だこれは泥棒退治のお礼だ、後はちゃん
と倉のジメッとしたところに濡れたまま干しとくか
ら安心しろ。
じゃあな。
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