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エピソード07 泥田坊

07泥田坊

妖怪絵師、鳥山石燕の泥田坊は顔が片目
のみで手の指が3本しかなく、
泥の田んぼから上半身のみを現した姿で
描かれている
北国に住む老人が、子孫のために
買い込んだ田を遺して死んでしまい、
その息子は農業を継ぐどころか
酒ばかり飲んで遊びふけっており、
老人が田を遺して死んだ末、
放蕩息子を怨んで泥田坊という妖怪と化し
夜な夜な田に一つ目の者が現れ
「田を返せ、田を返せ」
とうったえたとある。

手の指が3本しかない事についての説として
人間の手の5本指は
2つの美徳と3つの悪徳を示し、
怒り、貪欲、愚痴という3つの悪徳を
知恵と慈悲の2つの美徳で抑えているので、
3本指の泥田坊は悪徳のみで生きる
卑しい存在ではないかとしている

また「どろたぼう」という名称については、
何もかも台無しにすること、
無茶なことをすることを意味する
「泥田を棒で打つ」ということわざをもとに
鳥山石燕によって名づけとの説がある

なかなか人気の妖怪で、
ゲゲゲの鬼太郎や妖怪ウォッチはもちろん
仮面ライダーシリーズにも
何回出てきている妖怪である


07泥田坊オリジナルストーリー

ここは東北の片田舎、
五作はしみじみと田んぼを眺めている

五作:
あ~おらも汗水たらして働いたおかげで
やっと念願の田んぼを手に入れることができた
それにしても手入れの届いたいい田んぼだ、
これなら今まで以上にいい米をたくさん作れるぞ

五作はたいそういい気持ちで夜を迎え、
さあそろそろ寝ようかと思っていたところ
何やら外から誰かの声が聞こえてくる
こんな夜中に外に出るのは少し怖いが、
声が聞こえるのは自分の田んぼの方
気になってしかたない、
勇気を振り絞り田んぼに行ってみた

月あかりの下何者かが何かを叫び訴えている
自分の田んぼである、怖いが近づき
よく見ると田んぼの真ん中あたり
片目の老人が地面から生えている、
そして指が3本しかない手を突き上げ
「田を返せ~、俺の田を返せ~」と叫んでいる

五作:
お前は誰だ!
なんでおらの田んぼでそんなことを言うんだ!
ここはおらの田んぼだぞ~

泥田坊:
田を返せ~ 俺の田を返せ~
この土地は俺が誰も手を付けようとしなかった
荒れ地を開墾し10年かけて
稲が育つまでにしたんだ! 
そして10年かけてやっと
人並みのコメが取れるまでにしたんだぞー

五作:
それなら何故この田んぼを手放したんだ?

泥田坊:
手放したくて手放したんじゃない!
いままでの無理がたたって
5年前俺は死んでしまった
死に際に息子の耕作にこの田を頼むと約束したのに、
息子は百姓なんてヤダ、
俺は都に行って楽しく暮らすんだと言って
安い値段でこの田を人に売ってしまった。
きっとお前はそいつからこの田を買ったのだろう

五作:
そういうことだったのか、かわいそうに...
それにしても酷い息子だな~

泥田坊:
風のたよりに聞けば、
都に行った耕作はこの田を売った金で
日々遊んで暮らし、
いわゆるパーリーピーポーって奴になっちまった
しかし、仕事もせずに遊んでいれば金も底をつく、
そんな時一緒に遊んでいた芸人
から色々な楽器を教わり
そのうち独自の楽器を作って
そのお囃子でみんなを踊れせ
人気者になり、
名前もDJコウと名乗っているらしい
今では祭りやお城から引っ張りだこで、
実家の残った家族に毎月米や金を
送ってくる自慢の孝行息子だ

五作:
そ、そりゃ良かったじゃないか、
だったらそんなに化けて出なくても
いいんじゃないかい?

泥田坊:
いや!それはそれ。これはこれだ! 
この田は誰にも渡したくないんじゃ
...せっかくここまでこの田を整えてきたのに

五作:
...わかった!
それじゃお前さんの思いはおらが継いで
この田んぼこの辺りで一番の
コメが取れる田んぼにしてやる
そして田んぼの隅にお前さんを祭るホコラを作り
そのコメを供える約束をするよ...
たのむこの田んぼをおれに譲ってくれ

泥田坊:
...そこまで言うならお前にたくそう、
他の奴と約束するより信用できそうだからな。
...約束忘れるなよ
そう言うと片目の老人は消えていきました

その年の秋、
五作はたわわに実った稲穂をホコラに供え、
息子のDJコウを呼び寄せ
盛大に慰霊祭を行いました

泥田坊:
五作ありがとう
...でもそのお囃子は
騒がしくて寝てられんよ

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