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エピソード33 手の目

33 手の目

手の目(てのめ)は、鳥山石燕による江戸時代の画集
『画図百鬼夜行』にある妖怪、座頭姿で両目が顔では
なく両手の平に一つずつついている。

岩手県に伝わる民話には、以下のような「手の目」の
話もあるという。
ある旅人が夜に野原を歩いていたところ、盲人が近づ
いて来た。その盲人の両手の平に目玉があり、その目
で何かを捜している様子だった。
旅人は驚いて逃げ出し、宿へ駆け込んだ。
宿の主人に事情を話したところ、主人が答えるには、
あの場所では数日前に盲人が悪党に殺されて金を奪わ
れ、その盲人が悪党たちの顔を一目見たい、目が見え
ないのならせめて手に目があれば、という強い怨みが
手の目という妖怪になったのだという。


33 手の目 オリジナルストーリー

月夜の峠を侍が歩いている。
前から歩いて来た座頭とすれ違った。

侍:
おい、お前、人間じゃないだろう。

座頭:
なにをおっしゃいますお侍様、私は旅の目の見えぬ
座頭にございますよ。

侍は座頭を指さした。

侍:
お前夜だからと気をぬいていただろう。
こんな月の明るい晩には見えてるぞ...
お前の両方の手の平にある目が。

座頭:
し、しまった。すれ違った時お侍様の顔を確認しよ
うとして目を見開いてまじまじと見てしまった。 
お侍様私は何も悪さはしません見逃してください。

侍:
何やら訳がありそうだな、どうしてお前はバケモノ
になってしまったんだ?
よかったら拙者に話してみろ。

座頭:
実はもう一年にもなりますか。
この峠を私が歩いていると、この近くのお堂に集まっ
ていた盗賊たちに見つかってしまいまして、宝の隠し
場所を見られたからには生きては返さぬと、私を寄っ
てたかって切り殺したのです。
しかし私もあまりの無念に何とか盗賊たちを覚えてお
きたいとの一念が、私の両手に目を生えさせたのです

侍:
なるほど、それはひどい話だ。
それでお前はその盗賊たちの顔は覚えているのか?

座頭:
はい、しっかりと!

侍:
ならばこれも何かの縁お前の仇は拙者が取ってやる。

座頭:
ありがとうございます、お侍様! 

二人はガッチリかたい握手をした! 

座頭:
目が~、目が~! 

侍:
アホだなお前

数日後の晩、峠のお堂のところに座頭が立っていた。
そこに三人の盗賊たちがやって来た。

盗賊:
なんだお前死んでなかったのか。いや、あれほど切り
刻んだんだ生きてるはずはねえ。かまわねえバケモノ
だろがもう一度切り殺してやる!

侍:
まてお前達。その座頭から話は聞いた。お前たちの
残虐な振る舞いは許さない。
座頭に代わり拙者が成敗してくれる覚悟しろ。

盗賊たちはいっせいに刀を抜いて侍にかかって来た。
しかし侍はすれ違いざま目に見えぬ速さで二人を切っ
た。 
残った盗賊の一人はあわてて草むらに隠れ、ゆっくり
と侍の後ろに回った。
そして侍の後ろから飛びかかろうとした。

その時座頭が盗賊の前にふさがり、両手の見開いた目
を盗賊に突き出した!
盗賊はビックリしその眼力に一瞬金縛りになった。
そのすきに侍は一振りで盗賊を打ち取った。

侍:
座頭、終わったな。 お前の仇は討ったぞ。 

座頭:
ありがとうございます、お侍様これで思い残すことは
ありません。 
あぁ~涙が止まらない。

侍:
お、お前、両手の目の涙をふくその姿は、左右の手を
こすり合わせて...ハエみたいだな。
よし、この世に未練がなくなったのであれば成仏する
んだぞ。  

侍と座頭は笑顔で手と手をハイタッチした。

座頭:
目が~、目が~。  

侍:
なんだこのコント。

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