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エピソード35 さとり

35 さとり(覚)

覚(さとり)は、日本の妖怪の一つ、人の心を読む
妖怪として民話が伝えられている。

飛騨美濃の深山に玃(かく)あり山人呼んで覚
(さとり)と名づける。色黒く毛長くしてよく人の言
(こと)をなし よく人の意(こころ)を察す
あへて人の害をなさず、人これを殺さんとすれば、
先その意(こころ)をさとりて逃げ去ると言う。

多くの民話では、山中で人間の近くに現れ、相手の心
を読み「お前は恐いと思ったな」などと次々に考えを
言い当て、隙を見て取って食おうとするが、木片や焚
き木などが偶然跳ねて覚にぶつかると、思わぬことが
起きたことに驚き、逃げ去って行ったとされている。

私の大好きなマンガうしおととらにも「さとり」が出
てきて少女の目の病を治す為他の人を傷つけている。
しかし主人公に間違いを正されると人の動きをすべて
読めるさとりだが主人公が号泣する悲しい結末をむか
えている。


35 さとり オリジナルストーリー

飛騨高山の山中にて小型バスが行方を経った。
後にこのバスは運転手の急病により崖より転落、乗車
していた20名のうち19名が遺体で発見された。

しかし6歳の女の子だけが2週間経っても発見されな
かった。県警は実験的にAIを使った行方不明者捜索
会社にこの女児の捜索を依頼した。
そしてここはその飛騨の山の中。

男:
いや~しかしやれやれだ。たしかに当社の開発したス
ーパーAIはすごく優秀だ。間違いはない! 
しかし都市での実証実験では数々の優秀な成績を残し
たからって、なにもデータの乏しいこの山の中での小
さな女の子の捜索ってのはハードルが高すぎるんじゃ
ないか? 
何を手がかりすればいいんだ。 困った困った。

そう男が悩んでいるうちにもAIは現地の地理、温度
、転落したバスからの距離とうのあらゆるデータから
分析し人間が生存可能な場所を伝えてきた。

男:
はいはい、わかりました、わかりました。
現地から南西1.2キロの地点ね。 行ってみますよ。

男は指示された地点に来るてみたが何もなかった。
男がAIにもう一度再捜索を指示しようとした時、
男の背中側の森の中から声が聞こえてきた。

覚:
後ろは振り向くな。
ほうここに、こんなに早くやって来る人間がいるとは
思わなかった。じゃあ褒美に女の子がいる場所までの
ヒントをいくつかやろう。
お前ならその場所まできっと来られるはずだ、オレは
一足先にその場所でまっている夕方までにはたどり着
けよ、じゃあな。

声は消えた。振り返えると後ろには3枚の木の板が置
いてあり、そこにそれぞれ地形のヒントのようなこと
が書いてあった。 
男は早速その情報をAIに入力し分析を開始した。
AIは本部のスーパーコンピューターからの回答を男
に伝えた。

男:
よし、これなら夕方までには「あの声」の奴のところ
にたどり着けそうだ。 ぜったい女の子を見つけ出し
てやるぞ、待ってろよ!

日が暮れかかった頃、男は小さな滝の前にたどり着い
た。すると滝の横に人間ほどの背丈だが全身毛でおお
われた生き物がこちらを見つめて立っていた。

覚:
やはりお前は日が沈む前にここにたどり着いたか。 
普通はオレは人の前には現れない存在、昔の人間たち
はオレのことを「さとり」と呼んで恐れたもんだ。
オレはお前の考えていることがすべてわかる、お前の
持っているその機械よりもオレは先読み出来る。
フフフ今お前が何を考えているのか当ててやろうか?

今お前は「こいつ人なのか?サルなのか?」と考えた
な。「こいつの毛は自毛なのか、毛皮なのか?」
「どうして考えてること分かるんだ?」と思ったろう
今お前は「こいつには考えを読まれてしまう、この場
から立ち去ろう」「AIを使えばこいつの思考より先
に行動できるか?」って思ったな。 

男は移動するのも難しいし、AIに思考の入力をしよ
うとする間に先読みされてしまうと思いあきらめた。

すこし時間が過ぎた。

覚:
今お前は「もうたくさんだ、俺はただ行方不明の女の
子を探しだしたいだけなのに!」と思ったな、ダメだ
オレに勝たなければ女の子の場所は教えてやらん。

その時二人の上にヘリココプターがやって来た。

男は理解した、二人のやり取りをAIが分析し捜索本
部にヘリの応援を要請したことを。

覚:
オレとしたことが不覚だった、生き物ではないモノの
考えまでは読み取れなかったか。
わかった女の子はこの滝の裏の横穴にいて元気だ。

ただお前に頼みがある、この子は親にずっと虐待を受
けていて人間不信になっている。
今回の事故で両親は死んでしまったようだし、どうか
この子を穏やかに暮らせる所につれて行ってやってく
れ。 お前なら信用できそうだ頼んだぞ。

そう言うとこの生き物は少し涙目でその場を去ってい
った。
しかし、涙で目がかすんだのか木の根に足を引っかけ
転びそのまま滝つぼに落ちていった。

男:
え、偶然の事故は読めないんだな。

この後、男は滝の裏から女の子を保護しヘリコプター
で無事帰還した。

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