エピソード48 うわん
48 うわん
うわんは、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』など、江戸時
代の妖怪画にある妖怪。
お歯黒を付けた妖怪が両手を振り上げ、怒鳴りつけて
脅かすかのような姿で描かれているが、正体はわから
ない。
お歯黒は日本の中世には公家や武家の男子も行なって
いたことから、そのような家柄の妖怪、また、妖怪画
ではうわんの手に指が3本しかないが、3本指は鬼の特
徴を意味しているとの説もある。
また、古びた寺の近くに現れ、人が通りかかるとその
名の通り「うわん」と奇声を出して驚かせ、人が気を
抜いたときに命を奪い取ってしまうが、言われた側が
同じように言い返すことが出来ればうわんは逃げ去っ
てしまうとの説もある。
48うわん オリジナルストーリー
ここは江戸、といっても結構な町外れ、古い屋敷が
あった。
そこそこ広い敷地にしっかりした母屋もあるのにしば
らく人が住んでいなかった。
そこにそこそこ若い侍の夫婦が引っ越してきた。
浪人中の侍の夫は頭はそこそこだが細身でひ弱だった
夫:
いや~、知り合いのつてでこんな立派な家を安く手に
入れられたが、後で聞いたこの屋敷バケモノが出るっ
て噂になってるらしい。
そんな事なら断ってたのにな~。
妻:
お前さん何言ってるんだい!
念願のマイホームをこんなウソみたいな値段で手に入
れられるなんて夢のようじゃないか。
それにバケモノが出たって一応道場で免許皆伝のをい
ただいてるお前さんが退治すればいいじゃないか?
夫:
なに言ってるんだい。
あれはたまたま師範との稽古の時、怖くて目をつぶっ
て木刀を振ったら偶然気を抜いててくしゃみした師範
の頭にあたって気絶して、気を取り戻してもうろうと
してた師範がカッコ悪いから
「腕を上げたな、今日からお前は免許皆伝じゃ!」
ってついつい言っちゃったんだよ。
妻:
ノンノンノン。偶然だって師範を倒したんだから、
お前さんは強いんだよ、そう思い込みな!さあさあ、
引っ越しの荷物かたずけて今日は早く寝るよ。
二人は夕方まで引っ越し荷物をかたずけをすると疲れ
たのか夕飯を食べるとすぐに寝てしまった。
そしてその夜、弱そうな侍夫婦がこの屋敷に引っ越し
てきたと聞きつけ泥棒がそーっと入って来た。
泥棒:
しめしめ、引っ越しの疲れですっかり眠っているよう
だな。こんな屋敷に住めるんだから、それなりの金目
のものはあるに違いない。
さてゆっくり探させてもらいますよ。
泥棒は母屋を通り過ぎ奥の古い蔵に進んでいった、
蔵の戸を開けようとするがなかなかあかない、
泥棒こんしんの力で扉を引き開けた。
すると真っ暗な蔵の奥から何かが飛び出してきた!
飛び出てきたモノは大きな声で叫んだ
「うわん!!!」
びっくりした泥棒、腰を抜かして倒れるが、四つん這
いになってなんとかこの屋敷から命からがら逃げだし
た。
次の日、前の晩に大声をあげて誰かが逃げていくのを
聞いた二人は、夫に蔵を見てくるよう言ったが、怖い
からいやだと言う。
何とか夕方までには説き伏せ真っ暗になる前に夫を蔵
の前に連れてきた。
妻:
お前さん、今日こそは男らしい姿、免許皆伝の剣の腕
前見せておくれよ。
夫:
だから何度も言わせるな、...。
もういい、わかった!
お、オレの つ、強いところ み、見せてやるからな
コノヤローバケモノ出てこい!
夫が蔵の空いた扉の前に震えながらも仁王立ちすると
暗闇の奥からのっそのっそと何かが出てくる音がした
そして
「うわん!!!」
夫は硬直したかと思うと白目をむいてその場に倒れた
暗闇から出てきた何かが夫にのしかかろうとした。
妻:
なんてこと!気絶しちまうなんて。でも、こんな夫
でもバケモノに食われちまうのはやだよ~
うわ~~~ん!!!!!!
妻は泣き出した。
その妻の大きな泣き声にびっくりしてバケモノもひ
っくり返った!
恐る恐る妻が近づいてみると、ひっくり返って気絶
していたのは大きなウシガエルだった。
長年この蔵に住むうちに色んな毒気や瘴気にあてら
れどうやら妖怪のように化けてしまったのであろう
が、妻の大声に正気を取り戻したようだった。
妻は夫を介抱し家の中に連れて行って寝かせた。
そして数日後この近所でバケモノ退治の話が噂にな
っていた。
どうやら逃げ出した泥棒が話を広げたようだった。
そして、また後日今度はバケモノ退治を聞きつけた
旗本から士官の話が舞い込んできた。
夫はバケモノの声は聴いたがバケモノ自体はまった
く記憶に無かった。
妻:
なに言ってるんだいお前さん。
お前さんが私を守ってバケモノをやっつけて、その
勢いで倒れた時に頭を打ったから忘れちまったのさ。
さあさあ、せっかくのいい話なんだから頑張って行
っといで!
さあもっと胸をはってなにしろお前様はバケモノ退治
の有名人なんだからね。
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