エピソード67 木霊
67木霊(こだま)
木霊(こだま)とは、樹木に宿る精霊である。また、
それが宿った樹木を木霊と呼ぶ。
また山や谷で音が反射して遅れて聞こえる現象である
山彦(やまびこ)は、この精霊のしわざであるともさ
れ、木霊とも呼ばれる。
木霊は外見はごく普通の樹木であるが、切り倒そうと
すると祟られるとか、神通力に似た不思議な力を有す
るとされる。
これらの木霊が宿る木というのはその土地の古老が代
々語り継ぎ、守るものであり、古木を切ると木から血
が出るという説もある。
「源氏物語」にも「鬼か神か狐か木魂(こだま)か」
とか「木魂の鬼」などの記述があることから、当時に
はすでに木霊を妖怪に近いものと見なす考えがあった
と見られている。
67木霊 オリジナルストーリー
京都のある仏師のもとに僧侶が訪れてきていた。
僧:
やあ、久しぶりですね。
是平藤(ぜぺとう)殿、お元気でしたか。
是平藤:
おぉ~阿闍梨様ではありませんか。
本当にお久しぶりでございます。
して、今日はどうなさいました?
僧:
実はな是平藤殿、高野山の山中で修行中に不思議な木
を見つけましてな、ぜひ見てもらいたいのだ。
僧侶は背負ってきた背負子から3尺はありそうな丸太
を仏師のもとに置いた。
木:
やっと着いたか。
ここはどこだ?
まさか俺を燃やそうってわけじゃねえよな?
是平藤:
なんと!この木はしゃべるのですか阿闍梨様!
僧:
ああ、この木は私が修行中に雨宿りをしていた所のす
ぐ近くのヒノキに雷が落ちてな、その時に魂が宿った
ようで話をするようになった木なのだ。
これは御仏が私に何かを作るよう命じられているよう
に思うのだ、そこで是平藤殿この木で仏を彫ってくれ
まいか?
ぜひ頼む!
是平藤:
阿闍梨様の依頼とあらば引き受けさせていただきます
こんなことはもう二度とないでしょう、私の持つ技を
すべて使い魂を込めて彫らせていただきます!
木:
あ~、もともと魂はこもってるからそれはいいや。
まあかっこよく彫ってくれ、よろしくな。
こうして仏師は工房にこもり一月かけて地蔵菩薩
つまりお地蔵様を彫り上げた。
僧:
おぉ~、さすが是平藤殿すばらしい出来栄えだ、
まるで今にもしゃべりそうだ!
仏像:
おちょくっとんのかいワレ~!
実際しゃべってるの知っとるやろ!
僧:
すまん、すまん。
お前は特別なお地蔵様だ何か名前を付けてしんぜ
よう。
そうだ、チャットGPTってのはどうだ?
仏像:
なんじゃそりゃ~!欧米か?ダメだダメだ!
是平藤:
阿闍梨様、この像はヒノキでできております、
ヒノキの代表といった意味合いで「ヒノキ王」
というのはいかがでしょう?
僧:
なるほど、「ヒノキ王」とな。
それなら文句もあるまい。どうだ「ヒノキ王」?
仏像:
まあ、これ以上期待してもいい名前出てきそうに
ないからこれで手を打ってやら~。
僧:
是平藤殿色々とありがとう。
ではこのヒノキ王は私が寺に持ち帰らせてもらお
う、礼は後で寺の者に届けさせます。
本当に世話になった。
是平藤:
阿闍梨様お待ちください。
この仏像を彫っている時、この木と会話をしてお
りましたところ、びっくりすることが分かったの
です。
この木はウソをつくと伸びるのです!
それは仏像となっても変わっておりません。
僧:
なに!して伸びるのは鼻か?
是平藤:
西洋の人形の話じゃないんだから。
僧:
首か?
是平藤:
ろくろ首じゃないんだから。
僧:
ではどこだ!
是平藤:
伸びるのは、頭です!うそをつくとびどんどん伸
びます。お気をつけくださいませ。
こうして僧侶は仏像「ヒノキ王」を寺に持って帰
って本堂に安置した。
すると仏像がしゃべる噂を聞きつけて地元はもち
ろん、遠方からも一度見たいとお参りに来る者も
増え、あっという間に
「しゃべるお地蔵様ヒノキ王」として有名になっ
た。
それから1年後、この像を彫った是平藤がこの寺
に招かれた。
是平藤:
お久しぶりでございます阿闍梨様。
この寺もたいそう有名になったそうで、本当にお
めでとうございます。
彫った私も鼻が高こうございます。
僧:
おぉ是平藤殿、よかったやっと来てくれたか。
実はこれを見てくれ、ヒノキ王は参拝者に適当な
ことばかり言っているものだから、こんなに頭が
伸びてしまったのだ。
そこで、頼みがあるのだ!
この体の倍の長さになった頭に顔を彫ってほしい
のだ。どうだろう?
仏像:
おいおい、俺はトーテムポールかよ!!
インデアン嘘つかないってかよ!!
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