エピソード58 金魚の幽霊
58 金魚の幽霊
金魚の幽霊(きんぎょのゆうれい)は江戸時代の戯作
者・山東京伝(さんとうきょうでん)による小説
「梅花氷裂(ばいかひょうれつ)」にある妖怪または
幽霊。
名称は妖怪漫画家水木しげるの著書によるものである
その昔、信濃国でのこと。藻之花(ものはな)という
女性が、ある家に妾に迎え入れられたが、その家の正
妻が隣人にそそのかされ、藻之花を飼っていた金魚の
鉢に頭を突っ込んで殺してしまった。
その金魚鉢にいた金魚に藻之花の怨念が憑いて怨みを
晴らし、正妻もまた怨念によって金魚のような姿に成
り果てたという。
「梅花氷裂」によれば、怨念が憑いて異形となった
金魚がランチュウの始まりとされている。
58金魚の幽霊 オリジナルストーリー
昔、信濃の国に文太という男がおった。
文太は代々続く長者の跡取り息子でお梅という妻がい
たが、それとは別にモエという妾もかこっていた。
はじめは特に喧嘩もなく三人仲良くやっていたが、こ
の半年文太がモエのところに入りびたりになってしま
い、お梅もさすがに堪忍袋の緒が切れてモエのところ
に出向いて行った。
最初はお互い冷静をよそおい話していたが、ちょっと
した言い方で喧嘩になり冷静さを失ったお梅はモエが
飼っていた金魚の鉢にモエの頭を突っ込んで抑え込み
殺した。
冷静さを取り戻し家に帰って来たお梅は、何事もなか
ったかのように振る舞い夜床に就いた、しかしさすが
に寝付けない。
すると真夜中に目を閉じて必死に寝ようとするお梅の
ほほをたたくものがあった。
それは金魚の形をしているが顔がモエそっくりな魚の
ようなモノが宙を浮いていて、ペチペチお梅のほほを
たたいていたのだった。
モエ:
よくもウチを殺してくれたな~絶対にゆるしませんよ
お梅:
ひ~なんだい、私を呪い殺しに来たのかい?
金魚のアンタなんかに殺されてたまるかい!
お梅は近くにあった棒を振り回し金魚のモエを追いか
けて家から飛び出した。すると棒を振り回した拍子に
よろめいて転び、頭を庭の岩にぶつけて死んでしまっ
た。
モエ:
ざまぁ見なさい、ウチを殺した罰よ。
そう言ってモエが見ていると倒れているお梅の頭から
流れる血を飼い猫の玉が舐めた。
すると猫の玉は目の色が変わり立ち上げって宙に浮い
ているモエの金魚に飛びかかってきた!
お梅:
ニャー よくも私を殺したはね。
今度は私の番よ覚悟しいや~!
そう言って金魚に爪の一撃を食らわせた!
金魚はフラフラと落ちてきて犬小屋の前に落ちてきた
犬小屋のポチが金魚に鼻をくっつけてクンクン匂いを
嗅いだ。
すると今度はポチの目の色が変わり唸り声をあげて猫
に飛びかかってきた!
三日後、なんやかんやあってモエとお梅はオオカミと
熊になっていた。
お梅:
アンタなかなかやるな~。こんな関係になっていなけ
れば親友になれていたかもしれないね~。
モエ:
アンタこそ。敵ながらあっぱれやわ。...
...チョット待って、そもそもウチらがこんなこと
になったのは文太のせいじゃないのかい?
お梅:
だったら、私たちの敵は文太よ!この恨みはらさでお
くものか~!
こうしてオオカミと熊は文太の寝所を襲った。
文太:
お、お前たちお梅とモエなのか?
許してくれ、俺が悪かった~あぁ~~。
女中:
ほんと、旦那様も奥様もモエさんもどこ行っちゃった
のかしらね~。
まあいいわ、さて金魚に餌でもあげましょ。
文太:
う、う~夢だったのか?本当にやな夢だった。
ん、なんだ俺の身体?まるでイトミミズじゃねえか!
え、まさか!やめろ落とさないでくれ~。
モエの飼っていた残った金魚は大きく口を開け餌を吞
み込んだ。