エピソード29 毛羽毛現
29 毛羽毛現(けうけげん)
毛羽毛現(けうけげん)は、鳥山石燕の画集にある
毛むくじゃら姿の妖怪。
同画集の解説文では希有希見とも表記され、これは
「稀にしか見ることがない」という意味である。
石燕による解説文には「全身に毛生えたる事
毛女のごとくなれば」と毛との関連から
「列仙伝(れつせんでん)」などに記載されている
体全体に毛の生えていたとされる中国の仙人「毛女」
(もうじょ)がその姿のもとになったとして挙げられ
ている。
秦の始皇帝に仕える宮女だったが、秦が滅んだため
に山中に逃れ、松葉を食べて生き延び、170年の歳月
を経た末に空を飛ぶほど身の軽い仙人になった。
体全体に毛が生えていたとされる女性。
昭和・平成以降の妖怪関連の書籍では、毛羽毛現は
家の周囲や床下のように湿った場所に棲み、これが
いる家には調子の悪い人・病人が出るという解説や、
病人を出す性質から疫神の一種と考えられるなどの
解説が書かれている。
29 毛羽毛現 オリジナルストーリー
ここは茨城県の旧家、信男はいたずらが過ぎたため
家の古い蔵の中にお仕置きとし入れられていた。
信男:
まいったな~。
今回はちょっといたずらが過ぎたかな~。
お正月だからってオヤジにのはげた頭に富士山と鶴
を書いたのはまずかったよな~。
オヤジが反省したら出してやるって言ってたけど、
1月だしそろそろ寒くなってきたぞ、このままだと
凍えちまうどうにかこの蔵から逃げ出さないと。
信男は家の陰になって一年中じめじめしている
この蔵にはしょっちゅう悪さをして入れられて
いたが一度も脱出は出来ずにいた。
信男:
今日こそはなんとかしてあの高い窓まで登って
なんとか逃げ出してやる。
それにしても寒いな~なにか羽織るものないかな~。
お、こんなところに何かの毛皮のようなものが
あるぞ、とりあえずこれを羽織ろう。
よいしょっと。
わ!動いた、なんだこれは!
毛羽毛現:
何をする小僧、ワシの体を羽織ろうとするとは!
信男:
わ!しゃべった。この毛皮妖怪か?
お前は何もんだ、なんでこの蔵にいるんだ?
毛羽毛現:
ワシは毛羽毛現。この蔵にもう50年住んでおる。
ここは日も当たらんしじめじめしていて暮らし
やすいんじゃ。
ところでお前はまた悪さして閉じ込められたのか。
信男:
なんだ妖怪、お前は俺が閉じ込めらるの何度も
見てたのか。
それじゃ、俺が小さい頃泣いていたのも笑って
見ていたんだな!ひどい奴だ。
毛羽毛現:
すまんすまん。...ってお前の自業自得じゃろう。
ワシは名前の通り稀有、つまりめったに姿を見せ
ないんだ。ここで会ったも何かの縁しょうがない
温めてやろう。
信男:
お、お前いい奴だな。
ああ、温かい、
気持ちも軽くなったから浮いてるみたいだ、...
...って本当に浮いてる!お前飛べるのか?
毛羽毛現:
ああ、ワシは全身が毛だし妖力で少しくらい浮く
ことも出来るんじゃ。
信男:
それなら俺を蔵の窓まで運んでくれよ。
そうしたら簡単に逃げ出せるじゃないか。
妖怪は信男をくるんでふんわり舞い上がり窓まで
運んであげた、こうして信男は外に逃げだせた。
信男:
ありがとう妖怪助かったよ。
それにしてもお前の毛は本当に温かいな。
寒い冬には俺のオヤジの頭にのせてあげたい
くらいだよ。
オヤジはげた頭気にしていて卵が効くとか、
エビネランが効くとか色々試してみたが結局
ダメだったんだ。
毛羽毛現:
ん、ワシの毛分けてやろうか?
この毛は人の頭にのせればワシの妖力で馴染んで
まるで本人の地毛のようになるんだ。
よし、お前の親思いに免じて今晩お前のオヤジの
枕元に置いといてやろう。
お年玉ならぬ落し毛か、ハハハハ。
じゃあな。
こうして二人は別れた。そして次の日の朝、
信男の父は枕元にふさふさの毛が置いてあるのを
見て涙を流してつぶやいた。
オヤジ:
ありがとう、サンタさん。
かぜのうわさでは、この後この体験を生かし信男
は万人が喜ぶカツラの会社を作ったとか。...
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