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エピソード19 波小僧

19 波小僧

遠州七不思議の1つと数えられる「遠州灘の波小僧」
は、遠州灘一帯で起こる自然現象を指す。

昔からこの一帯では、
海鳴りによって天候を判断していた。
西に音がすれば晴れ、東であれば雨、
さらに東であれば嵐という具合である。
この不思議な自然現象について、古くから
「波小僧」という妖怪にまつわる言い伝えが
残されている。

ある漁師が遠州灘で漁をしていると、
網に奇妙な生き物が引っ掛かってきた。
それは波小僧であった。

漁師はこれを殺そうとしたが、波小僧は
「命を助けてくれたならば、
お礼に雨や嵐の時にお知らせします」と願い出た。

漁師はそれを聞いて、海に帰してやった。
それ以来、波小僧が海底で太鼓を叩き、
海鳴りで天候を知らせるようになったのだという。

また、浜松市には別の伝承が残されている。
少年が田植えをしていると、
親指くらいの波小僧が顔を出した。
波小僧は大雨の日に海から陸に上がって遊んでいたが
日照り続きで海へ帰れなくなったと言い、
気の毒に思った少年は波小僧を海へ帰してやる。
その後も日照りのため不作が続き、
少年が途方に暮れて海辺に立っていると
波小僧が現れる。
波小僧は少年に恩返しをすると言い、
雨乞いの名人である父親に頼んで雨を降らせると
約束する。
そして、波の響きが南東から聞こえれば
雨が降る合図だと言い残して
海の向こうへ帰って行った。
それから間もなく南東から波の音が響いて
雨が降り田畑が潤った。
それ以後、農民は波小僧が知らせる海鳴りで
事前に天気を知ることが出来るようになったと
言われています。

19波小僧 オリジナルストーリー

ここは静岡、浜松の田園地帯。
二人の男が水田を見まわしながら話し合っていた。

父:
まいった今年は本当に雨が降らなすぎる。
このままでは稲も枯れてしまう。
わしらだって米が育たなかったら...

青年:
おっとう、大丈夫だよ神様だって真面目に
働いてるオラたちを見捨てたりはしねえ。
オラ天神様にお祈りしてくるよ。

父:
そうだな、おっとうが悪かった。
じゃ、わしは田んぼを見て回ってくる、
お前も暗くなる前に帰って来るんだぞ。

そう言うと二人はべつべつの道に別れた。
青年の方は村はずれの天神様に向かって行った。

青年:
天神様、お願いです、どうか雨を降らせてくだせえ。

青年は涙をこぼしながら訴えた。

しばらく祈ってから家に帰ろうとすると、
鳥居のあたりに何かが動いている、
青年はそっと近寄りのぞいてみた。
そこには手の上に乗りそうな小さい男の子が
困った顔で立っていた。

青年:
お、お前はうわさの緑のオジサンだな!

小僧:
おい!オレはオジサンじゃねえし、
だいたい緑色してねえし。

青年:
ごめん、ところでどうしたんだ?

小僧:
じつは僕、海の方から来たんだけど、
帰り道わからなくなってしまったんだよ。
お願いだよあんちゃん僕を海まで
連れてってくれよ。

青年:
わかった、ここから海まではお前の足じゃ
1日かけてもたどり着かない、
よしオラが連れていってやる。 
オラの肩に乗れ、ながめがいいぞ。

こうして青年と小さな男の子は夕刻には
遠州灘の海岸沿いに来ていた。

小僧:
ありがとうあんちゃん。
お礼にいいこと教えてあげるよ。
僕のおとうは雨乞いの名人なんだ、
2・3日後に東の方から波の音が聞こえてきたら
雨が降るからね。
じゃあねあんちゃん

3日後、青年が水田で耳をすませていると
東の方から波の音が聞こえてきて、
後を追うように雨が降ってきた。 

青年:
雨だ、雨だ、ありがとう、ありがとう。

こうして水田はうるおい、
その年は無事米が収穫できた。  

この話を農民たちから聞いたこの地の代官は、
その小僧は天神様の使いに違いない。
それなら自分もその小僧を海に連れていき
もっとお宝をもらってやると、
天神様に出かけて行った。

代官は天神様にお祈りもせず、
鳥居に隠れて小僧が来るのを待っていた。
するとまた手の上に乗りそうな
小さい男の子が現れた。

代官:
やっと出たな、緑のオジサン!

小僧:
だがらオレは緑のオジサンじゃねえって!

代官:
すまんすまん、
いやそんなことはどうでもいい、
小僧、ワシがお前を海に連れていってやる
安心しろ! 

といって逃げられないよう虫カゴの中に
放り込んだ。

そして代官と小さい男の子は
遠州灘にやってきた。  

代官:
さあ小僧、海に連れて来てやったぞ、
ワシは雨などいらぬ何か他の宝をよこせ!

こういわれて男の子は何やら口笛を吹いて
亀を呼び寄せた。 

小僧:
さあオジサンこの亀に乗って。
亀が素敵なところにつれて行ってくれるから。

こうして代官は泳げないにもかかわらず、
竜宮城に連れていけとばかりに
目をつぶって亀にしがみついた。

しばらくして目を開けてみると、
そこは小さな離れ小島、もう亀も見当たらない。

途方に暮れていると、
どこからかあの男の子の声が聞こえた。 

小僧:
オジサンはいつも農民たちを苦しめているね。
しばらくここですごすといいよ。
飲み水は雨水をためるといいよ。
東の方から太鼓の音が聞こえたら雨が降るからね。
じゃあね。


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