叫べ!ぶちこめ!小指を立てろ!─『ガールズバンドクライ』感想レポート
█ タイトル:『ガールズバンドクライ』
█ ジャンル:『バンド』『ヒューマンドラマ』
█ 筆者的キャッチフレーズ:ムカつく現実に小指立ててけ!
█ あらすじ
高校2年、学校を中退して単身東京で大学を目指すことになった主人公。
仲間に裏切られてどうしていいか分からない少女。
両親に捨てられて、大都会で一人バイトで食いつないでいる女の子。
この世界はいつも私たちを裏切るけど。
何一つ思い通りにいかないけど。
でも、私たちは何かを好きでいたいから。
自分の居場所がどこかにあると
信じているから。
だから、歌う。
3月、17歳の仁菜は⾼校を中退して東京で一人暮らしを始めた。右も左も分からない⼤都会。ここに出てきたのは、ネットで聞いたある曲に背中を押されたから。そんな時、仁菜はその曲を演奏するストリートミュージシャンと出会う。
(アニメ ガールズバンドクライ公式 より引用)
█ 2024年 春
█ 制作スタジオ
東映アニメーション
█ [監督]酒井和男[シリーズ構成/脚本]花田十輝
█ 作画 ★★★★★★
・フルCGも手描きに近い線。キャラクターの動作もCG特有のカクつきがほとんど無くてとても滑らかで自然。
・リアリティが徹底された背景美術。
・『吉野家』や『丸福』など実際に現実にあるチェーン店や駅をそのまま登場させていて作中と作外世界の境界線が緩められていることで、作中世界の登場人物たちの実在感や生活感が伝わってくる。
・ライブシーンのキャラクターの舞台上での立ち位置や立ち振る舞い、動きにリアリティがある。
・キャラクターの細かい所作は現実感がある一方でアニメ的な表現も見られる。
・手描きとCGそれぞれの良いとこ取りのハイブリッドアニメーション。
・画面奥にいる通行人等のモブキャラもヌルヌル動いてて凄い。
█ 脚本 ★★★★★
・台詞ではなくストーリー中の随所において映像の中で情報の提示や説明をすることで、尺を無駄に使うこともなくテンポ感も損なっておらず非常にコンパクトで巧み。
・アニメあるあるの「謎に金持ちな学生」もすばる(ちゃんと裕福なことに理由付けあり)ぐらいで若者の貧困も避けずにリアルに描写している。
・ストーリー展開も安易なサクセスストーリーではなく非常に地道かつ現実的で納得感があるし、キャラクター設定、背景美術含めてリアリティがあって没入を誘われる。
・複雑怪奇で陰鬱な雰囲気がある現代を生きる若者の屈折した心理を表現するのが上手いし、主人公の仁菜が仲間や現実とぶつかりながら大人になっていく過程が丁寧に描かれている。
・仁菜やルパ、智らトゲトゲメンバーの過去がちゃんと重くて彼女たちの音楽性に深みが出ている。
・現代社会とそこで生きる若者の心理をよく捉えられており、キャラクターに共感できる部分が少なからずある。その上で信念を貫きながら現実に真っ直ぐ立ち向かう仁菜たちの姿と彼女たちの音楽の気持ち良さが刺さる。そりゃ話題にもなるわ。
█ 演出 ★★★★★
・劇中で度々、仁菜たちが「鏡」に反射した自分の姿と向き合う構図の描写があるけど、これは自分の過去や本音、ひいては自分そのものと向き合うことを表現しているのではないだろうか。芸が細かい。
・ライブシーンなど「音」や「心情」といった非視覚的な情報を視覚的に捉えられるような演出(「音」→風、光の粒、「心情」→画面に入る亀裂、カラフルなコード等)が画に迫力を生み出してて巧い。
・ライブシーンから日常パートまでくまなく細かく視点が切り替わるカメラワークの妙。
・ライブシーンの中に過去回想を入れたりMVのような演出が新しい。
・トゲトゲの楽曲を応用した劇伴も素晴らしい👏
・かなり演技は上手いもののキャストが声優ではないということで声を作ってない自然な声質がかえって作品の現実感を醸し出していて完璧にハマってる。
█ キャラクター ★★★★★★
・現代の社会状況を背景とした若者の感性や心理をよく捉えているキャラクター造形で視聴者の共感や理解を誘いやすい設定になっている。それでいてちゃんとアニメのキャラクターらしいキャッチーさやファンタジー感もあって魅力的。
●井芹仁菜 (cv 理名)
本作の主人公でトゲトゲのボーカル。正義感が強くいじめっ子に立ち向かった結果、自分がいじめられてしまい、それをきっかけに父親と確執が生じ高校を中退して上京。臆病ながらも芯が強く自分が信じる正しさに反することに対してはこれでもかと反発するし他人事にも躊躇なく首を突っ込む。要するにめんどくさい奴(笑) 脚本を担当した花田先生も仁菜がめんどくさすぎて仁菜パートが他キャラのパートを圧迫するほど多くなってしまったと語る。そんな彼女の真っ直ぐとした強さとそれが反映された歌声に惹かれるキャラは作中に数多く登場するが、鬱屈としていて理不尽な現実に立ち向かう仁菜のロックなキャラクター性に惹かれた視聴者は多いはず。また、かなり常識外れなキャラで街中で電灯を振り回したりと暴れがちで、結果として本作のコミックリリーフ的な立ち位置のキャラにもなっている。そして、仁菜を演じている理名さんの歌声、歌唱力が半端ないし、演技も素人とは思えないほどに上手い。
●河原木桃香 (cv 夕莉)
仁菜をバンドに引き込んだ張本人でトゲトゲのギター。「退路を断たないと逃げてしまう」と高校を中退し同級生と結成したバンドで事務所とプロ契約するも事務所の売り出し方を受け入れられずに脱退。大人であろうと振る舞うもまだまだ未熟な部分もあるキャラで、仁菜にそこをほじくられたことで心の奥にしまっていた自分の本音と向き合い現実に立ち向かっていく。トゲトゲ楽曲の作詞作曲をしているのはこの桃香だが、やけに仁菜へのラブレターとも取れる歌詞の楽曲が多いのが面白い。また、桃香役の夕莉さんの演技も素人感をほとんど感じない上手な演技をされている。
●安和すばる (cv 美怜)
有名な女優が祖母の世渡り上手なお嬢様でトゲトゲのドラム。不器用なトゲトゲメンバーにツッコミやフォローを入れるポジション。趣味が「レスバトル」なの面白すぎる。トゲトゲの他のメンバーに比べれば、恵まれた環境にいるように思えるが、人の顔色を窺って自分の本音に嘘をついて取り繕ってしまうという視聴者も共感しやすい悩みを抱いているキャラだといえる。「恵まれた(器用な)者には恵まれた(器用な)者なりの悩みがある」という部分で他のキャラとは差別化されてる。そんなすばるが「本音」をさらけ出せる場所としてバンドが描かれてる。失礼なことを言って申し訳ないのだが、すばる役の美怜さんの演技が軽くてまだまだ演技は勉強中なのがわかり易かったけど、逆にすばるのラフなキャラクターとの親和性が高くてそんなに違和感なかった。尻上がりに良くなっていく彼女の演技も本作の楽しみの一つ。
●ルパ (cv 朱李)
南アジア系のハーフでトゲトゲのベース。もともとは智ちゃんと「beki-shoga」というユニットで楽曲を投稿していたが仁菜たちと出会いトゲトゲに加入。穏やかで控えめな態度だが実はかなり攻撃的だったり大酒飲みだったりと謎めいた雰囲気を醸し出している。本作においてルパを掘り下げるエピソードはないのだが、花田先生曰くかえって視聴者の興味を誘う余白になって良かったとのこと。ルパを演じる朱李さんと共に「おもしれー女」。
●海老塚智 (cv 凪都)
警戒心剥き出しのトゲトゲした態度を取りがちなトゲトゲのキーボード。臆病だが芯の強い女の子であり、家出をしている点など含めバックボーンや性格が仁菜と似たようなキャラとして描かれていると思われる。『探偵おばばの事件簿』というすばるの祖母が主役のドラマをリピートして号泣したり、ライブ前に緊張して挙動不審になったりと可愛いところも多くある本作の『萌え』担当。智役の凪都さんはこうした智のキャラクター性とは真逆で陽キャなのがおもろい。
●ヒナ (cv 近藤玲奈)
トゲトゲのライバルバンド・『ダイヤモンドダスト』のボーカルで元仁菜の親友。仁菜がいじめっ子に立ち向かった件をきっかけに絶縁するも陰ながら仁菜を挑発しつつ応援している。恐らくなんだかんだ仁菜の行動を「間違っている」と煽りながらも本音ではそんな仁菜の人間性が大好きなのだろう。現在のダイダスのコンセプトは「アイドルバンド」ということで近藤玲奈さんのフワフワした歌声も絶妙にハマっている。
█ 楽曲 ★★★★★★
ちゃんとストーリーやキャラクターと歌詞がリンクしているし、シンプルに楽曲としてクオリティがかなり高い。この楽曲やキャストの演奏技術の高さがガルクラの人気を支えるのに大きく貢献していると思う。
●1話 東京ワッショイ
[評価]★★★★★
[作画]
・『空の箱』をラストで演奏するシーン、もうMVです。
[脚本]
・アバンで主人公・仁菜の「17歳、東京に来た。負けたくないから。間違ってないから」という台詞だけで、主人公のバックボーンに対する想像力を掻き立て視聴者の興味を引きつけるためのフックを作っている。
・仁菜が雪を珍しがってスマホで撮るといった細かい描写が後に明かされる仁菜の出身地(九州)に繋がる情報となっている。こうした細かい描写での伏線張りが上手い。
・仁菜が「川崎」と「新川崎」を間違えて遠回りしてしまう描写等から台詞ではなく行動で仁菜が地方出身者であることや性格を説明している点が無駄が無くて良い。
・意味を勘違いしてる仁菜が中指立てながら「ありがとうございました」を言うシーンは作中屈指の名シーン。面白い。アイデアが素晴らしいし、このシーンも後の仁菜やトゲナシトゲアリのスタンスを象徴するサインの誕生に繋がっていて細部まで計算された脚本の巧さを感じられる。
・ラストで仁菜が衝動に身を任せて家を飛び出し、本作のテーマを象徴する「中指立ててけ!」を群衆の前で叫ぶ一連の行動が最高にロック。ライブでカタルシスが最高に爆発するまでのお膳立てが整った。最高の導入。
[演出]
・身体から出る「トゲ」で仁菜の負感情を視覚的に表現している点が心理描写として斬新。
・「音」を「風」として具現化する、桃香のライブに衝撃を受けた仁菜の無色の世界が砕け散る描写等、非視覚的な情報を視覚的に捉えられる表現に変換することで映像の中で演奏の迫力を更に高めている。
[楽曲]
・OP『雑踏、僕らの街』is GOD
・『空の箱』is GOD
●2話 夜行性の生き物3匹
[評価]★★★★
[脚本]
・学生とすれ違う度に嫌悪感を示す描写。「私、今週一回も誰とも喋ってない」といったセリフ等で仁菜が社会からはみ出し孤独感を感じている状況を示唆している。
→そこで学生服(嫌悪の対象)を着たすばるが登場。唯一の拠り所である桃香と親しいことに戸惑う仁菜。
→仁菜の表情から遠慮を察するすばる。
・電灯振り回しながらサラリーマンに襲い掛かる仁菜、おもロックすぎる。
・自分を曲げたくない仁菜=桃香「私が忘れていた歌」、桃香が仁菜に惹かれた理由、歌って欲しいと思う理由が全てラストの会話に詰まっている表現。
[楽曲]
・ED『誰にもなれない私だから』is GOD
●3話 ズッコケ問答
[評価]★★★★
[作画]
・ラストのライブシーン、もはやMV
[脚本]
・律儀に手を挙げて道を渡る仁菜
→両親の教育が浸透していることがわかるシーン。仁菜の正義感が強い部分等両親の教育によって形成されたことが読み取れる。
・すばるがメンバー間ですれ違うことの問題について語っているシーンで桃香がダイダスの広告を眺める描写を通して桃香が方針の違いからダイダスを脱退したこととリンクさせているのが巧い。
●4話 感謝(驚)
[評価]★★★★
[脚本]
・すばる回
→1人のキャラクターに焦点を絞って掘り下げる話はだいたい起から結までに2話使ってる作品が多いというかそれが基本型のように思われるが、本作ではほぼ1話の中ですばるが祖母に本音を打ち明けられていないという問題の提起から解決までが描かれている。(実際、完全に解決したのは11話だと思われるが、トゲトゲのライブをすばる祖母が見に来ていてそこですばるが本名を名乗るというさり気ない描写で視聴者が解決したことを理解できるように作られている) こういった部分から、非常にコンパクトにして納得度の高い上手な脚本だといえる。
・エチュードをするシーンで演技がめちゃくちゃ下手な桃香、ここに桃香の自分に嘘をつけないという人物性がしっかり反映されてて良い。
・すばる回なんだけどすばるを振り回す仁菜の面倒くささの方が目立ってるのでもはや仁菜回だよね(笑)
[演出]
・仁菜が桃香に恋愛経験の有無を尋ねるも桃香は無言のままで次の場面に転換したシーン、すき。ちょっと遠くに視点を置いてるのも良い味出してる。「・・・」の雰囲気がめちゃくちゃ演出されてる(笑)
●5話 歌声よおこれ
[評価]★★★★★
[作画]
・現実のライブの臨場感や仁菜たちの躍動感が完璧に表現されたフルCG作画と手描き作画じゃ難しい構図の取り方やカメラワーク。
[脚本]
・桃香の「ごめん」が自分が裏切ってしまったダイダスメンバーに対するものとしても仁菜に対するものしても捉えられる二重の意味を感じ取れる脚本上手し。
・これまでラブライブ等では「変わる」ことを成長として肯定的に捉えてきたのに対して、本作では「変わらない」ことを肯定しありのままの自分を貫くことが描かれている。それが象徴された回であり、トゲトゲのスタンスがガッチリと固まった回だったかな。ラストのライブシーンの爽快感が凄まじい。
・一方で「変わった」"アイドル"バンドのダイダスと「変わらない」"ロック"トゲトゲの対比構造が『ラブライブ』と『ガルクラ』の両作品の対比になっているとも取れるのが面白い。
・花田先生初めガルクラ制作陣にとっては過去に作り上げたモノを超えるための挑戦だったといえるかもしれない。こうした制作背景と後のトゲトゲとダイダスの対決展開が重なっていると考えるとなお面白い。
[演出]
・カメラの1つのシーンでも細かく様々な角度や位置に変えていて視聴者を飽きさせない工夫が伝わる。
[楽曲]
・『視界の隅 朽ちる音』素晴らしい👏
●6話 はぐれ者賛歌
[評価]★★★★
[作画]
・演奏シーンの所作にリアリティありすぎる。
[脚本]
・桃香だけでなく仁菜とダイダス(ヒナ)にも直接的な因縁を設定することで、「ダイダスを倒すためプロを目指す」という物語の新しい方向性に向かう必然性を高くしているのが良い。
→同じくプロとして売れることを目指す智・ルパが加入するのも納得の流れ。
→「売れる」ことと「自分たちのやりたいことをやる」ことの両立その難しさを描く話の始まり。=花田先生も述べているが、これまでラブライブ等で描かれていた話からより踏み込んだ個々人の行動により責任や制約が伴う社会に出てからの話でもある。
[演出]
・プロを目指す方向性に動き始めた仁菜たちを見て浮かない表情の桃香、今後の展開の不穏さを示唆するように窓の外から聞こえる車の音が大きくなって聞こえてくる演出がうまい。
●7話 名前をつけてやる
[評価]★★★★
[脚本]
・親に反目して家を飛び出したという点で仁菜と智の背景をリンクさせている点が面白い。一方で、東京まで自分を気にかけて訪ねてきてくれる姉がいてまだまだ未熟な仁菜と頼りになる親がおらず若くして成熟してる智やルパを対比して見せているのが巧い。
→仁菜がトゲトゲメンバーとの出会いを通して自分の未熟さを痛感し、1歩ずつ成長していく姿が丁寧に描かれている。
・みねさんに触発されて予備校を辞めてバンド一本に絞る覚悟を決める仁菜、ロックすぎる。
[演出]
・桃香がバンド脱退を宣言したシーン、桃香以外の背景が灰色になり、画面に亀裂が入るといった演出が視覚的にインパクトを与えていて良い。アニメならではの演出。
[楽曲]
・『名もなき何もかも』素晴らしい👏
●8話 もしも君が泣くならば
[評価]★★★★★★
[脚本]
・ルパが差別される描写が本作のロックの"重たさ"に重みを増している。「私にもロックは必要ということです」重たい。
・桃香「この後時間あるか」仁菜「ありま……す」断るかのような溜めに仁菜の意固地な部分が現れてて良い。細かい演出。
・殴るのを我慢した桃香(=夢を諦め現実を受け入れる)と引っぱたいた仁菜(=夢を諦めず現実も受け入れない)の対比になっているようで綺麗。
・桃香が仁菜に拘るのは自分に似ている仁菜に自己投影していたから、そして、プロになることを拒むのはかつて自分が挫折した経験から仁菜が同じ道を辿らないように守ろうとしていたから、答え合わせのように明かされる桃香の言動の裏にあった論理と想いが美しい。
・仁菜をかつての自分に重ねて思い出の『箱』の中に閉じ込めようとしている桃香に対して、「私は私だ。桃香の箱の中に勝手に閉じ込めようとするな」という仁菜のアンサーが『空の箱』の歌詞と重なっていて美しい。
・泣き叫ぶ桃香と仁菜の描写からはガールズバンドクライの「クライ」にはロックを通して想いを「叫ぶ」ことと「泣く」ことの2つの意味が込められていることがわかる。
・みっともなく泣き叫ぶ姿はまるで子供のよう。これまでは現実を冷めた目で見つめた大人として振る舞いながら泣き叫ぶ仁菜を慰めてきた桃香が、8話のラストでは子供のように泣け叫び、今度は仁菜がそっと優しく慰めてあげるという逆転的な構図が美しい。
・『空の箱』は空っぽな自分を肯定している曲だけど、仁菜の「空欄」を埋めているのが「桃香」で桃香の「空欄」を埋めてるのが「仁菜」であるという相互関係が8話からは読み取れる。
[演出]
・仁菜の桃香の叫びを自分が大好きで自分を励ましてくれた『空の箱』でかき消してあげる行為が「慰め」を表現しているようで泣ける。
[楽曲]
・『空の箱』をあえて埋めないことはありのままの自分でいることを表しているように思える。作品に対する解釈の幅を広げ深みを増している素晴らしい楽曲。
●9話 欠けた月が出ていた
[評価]★★★★
[脚本]
・智回
・桃香が投げたビール缶を「ナイスビ~ル!」と言いながらキャッチしてグビグビ飲むルパおもろい。
・蛇怖がる桃香かわいい。
・キャラがちゃんと立っているからこそ日常的な会話劇が面白い。
・不器用だけど芯が強くて実直な智と仁菜、似たもの同士な2人の魅力が見える良い回。
・智と智が飼ってる蛇が重なっていて、怖がって餌を食べなかった蛇と怖がって自分の気持ちを晒せなかった智の姿をリンクさせて描いているのが巧い。
●10話 ワンダーフォーゲル
[評価]★★★★★
[脚本]
・今まで接触を避けてた智が仁菜の顔に自分の顔グリグリするシーンの破壊力。
・3話で仁菜が姉にしてもらった膝枕を断る描写が仁菜の自立を表現してるようで良い。
・仁菜の好きな曲を好きだと言う仁菜パパ。それは仁菜が守ってきた仁菜らしさを肯定しているようで多くを語らずともその一つのやり取りで和解を表現していて素晴らしい。
・OP映像のトゲトゲメンバーみんなで空からダイブしてる描写と繋がる。
[演出]
・仁菜がぶつかった家の庭の"棘"が出ていく時に切られてる描写から家族の愛情が感じられる。
●11話 世界のまん中
[評価]★★★★★
[作画]
・野外ライブの臨場感、ステージ上の躍動感が詰まったバケモノ作画のライブシーン。
[脚本]
・牛丼屋以外でもバイトを始める仁菜(=仁菜の自立)
→そんな仁菜を見て祖母に打ち明けることを決心するすばる
→仁菜にかき乱されて触発されてトゲトゲメンバーも成長していく。
・智ちゃんと母親の関係性はもっと描けそう。ぜひ2期で…。
・トゲトゲに小指立てて宣戦布告するダイダス良き。
・ダイダスもダイダスなりに自分たちの「ロック」を目指してもがいてることを表現することで安易に「敵」として扱ってないのが良い。
・ダイダスの曲を耳コピして完璧に弾くルパさんエグい。
・緊張してる智ちゃん可愛い。
・「ギター弾けませーん!」ありのままをさらけ出してる仁菜ええね。
・直接的な描写を入れずともライブを観に来たすばる祖母と本名を名乗るすばるの姿を通してすばるが祖母に打ち明けそれが受け入れられたことがわかるようになっていて巧い。
[演出]
・MVみたいな演出が斬新。
・実際のライブのようなリアリティのある音響が素晴らしい。
[楽曲]
・『Cycle Of Sorrow』 イイネ…。
・『空白のカタルシス』!!!!!!カタルシス爆発しとる。
●12話 空がまた暗くなる
[評価]★★★★
[脚本]
・プロ契約を祝うパーティーで鍋を囲む仁菜、すばる、智を見つめる年長者の桃香とルパ。この画に花田先生がトゲトゲのコンセプトとして挙げてた『家族』が表現されてる。
・ガールズバンドものでプロ契約する展開が新しいしその後のレコーディングや楽曲制作を本格的に描いていて新鮮味がある。
・このままプロ契約して順風満帆に終わることはないだろうとわかりきってる中でダイダスとの対決という期待感ある展開の導入。完璧。
・あれだけ自分の作風にこだわっていた桃香がいざ仁菜たちの生活を背負ってプロ契約したら不安を感じて曲作りの方向性に迷いが生じるのが非常にリアル。
・非情な現実を仁菜に突きつけるラスト、えげつない引き。
・高額なギターに憧れてた仁菜、ラストのリリースされた楽曲の再生回数103回、数字で理想と現実のギャップを見せてくるのが巧い。
[演出]
・ラストのハイテンポな劇伴で視聴者を煽っといて…。
●13話 ロックンロールは鳴り止まないっ
[評価]★★★★
[脚本]
・自分たちの在り方を貫くために事務所を退所するトゲトゲがロックすぎる。
・最後の1話で一気に仁菜とヒナの関係性や過去の掘り下げをしつつトゲトゲの伝説の始まりに纏めてくる構成が巧い。
・最後に『空の箱』を通じて仁菜とヒナの和解を描いてくるのも良い。
・仁菜と同じようにヒナもかつてのダイダスを愛していたことを明らかにした後、ダイダスメンバーを見てムッとするヒナを映す。ヒナも今のダイダスのスタイルを本心では受け入れてないことを示しているのかな。
・「試合に負けたが勝負には負けなかった」というような最終話。自分たちの信じる正しさを貫いたトゲトゲ。本作のテーマが忠実に表現された自然な展開だったと思う。ただやっぱりこのラストでエンタメ的な快感を視聴者が得られているかと言うと微妙なところ。回を重ねる毎にトゲトゲのファンになっていった筆者としては、トゲトゲが武道館のステージに立ってトゲトゲの音楽を認めさせた姿を是非とも観たい。ということで続編来て欲しい終わり方だった。
[演出]
・こたつの上に乗っかってギターを我武者羅に弾く仁菜とそれを呆れた表情で見るすばると智がおもろすぎる。
・桃香の衣装が過去を受け入れて乗り越えたことを表現しているようで良い。
[楽曲]
・『運命の華』は良い曲ではあるが、これまでのトゲトゲの楽曲の曲調とは異なっているし、かなりPOP。そこに桃香の迷いや葛藤、この曲が売れなかった理由が現れている気がする。これを狙っているのだとしたら巧い。
⬛︎ 総括
こんなにどハマりしたのは久しぶりでした。好きなアニメ作品TOP10に入りましたね、これは。今作は『ぼざろ』など最近流行りの「ガールズバンド」を題材にした作品なわけですが、その中でも一番面白かったし出来も良かったと思います。あれだけ話題になるのも納得というか。最近は音楽や創作を通して自己の中に溜まった鬱憤をオープンな場所で表現することで発散することをテーマにした作品が人気を集めていると思われますが、「ガルクラ」も例に漏れずそうした類の作品でした。こういう類の作品が最近流行りがちなことには現代の陰鬱とした閉塞感のある社会状況が大きく反映されている気がします。「ガルクラ」はそうした現代日本社会を生きる若者の心理や感性、生活感をリアリスティックに描くことに成功しているからこそ多くの支持を集める作品になったと考えられるでしょう。と同時に「井芹仁菜」を始めとするキャラクターたちにはちゃんとキャッチャーな個性や共感できる人間性、葛藤苦悩が設定されており、視聴者の興味を引きつける牽引力がありました。特に、主人公「井芹仁菜」が強烈(笑)臆病だけど破天荒な仁菜のハチャメチャで面倒な言動が笑えるし、何より、自分の信念を貫いて困難な現実に中指をいや小指を立てながら真っ直ぐ立ち向かっていく仁菜の姿は観ていて爽快でした。そんな仁菜を起点に交わり時に衝突しながら成長していくキャラクターたちの姿を1クールの中で完璧に表現している脚本も巧みであり、花田十輝先生にとっても今作は傑作の1つになったでしょうね。また、作画も革新的でしたね。制作スタジオは最近だと『THE FIRST SLAMDUNK』や『アニワン』などでそのあまりにも高度でヌルヌル動く作画が評判の「東映アニメーション」。今作では手描きの繊細さと3DCGの立体感や滑らかさを両立させたハイブリッドなアニメーションの制作に挑戦されており、見事成功されたのかなと思います。特に花形であるライブシーンの"映え"が素晴らしい。キャラクターの動きや所作にリアリティが溢れていて、ライブシーンの構図にも奥行が感じられてCG作画の良さが凝縮された躍動感抜群のライブ表現になっています。演出もベタなものから「音」や「心情」を可視化するといった本作ならではの独特なものまであって作画と合わせて良かったです。そして、もともとオーディションで選抜して組んだリアルバンドのメンバーをそのままキャストとして起用してリアルのバンド活動と並行してアニメを制作するという新しいプロジェクトということもあり、「楽曲」もめちゃくちゃめちゃくちゃめちゃくちゃ良いッッッッッ!!!!!!!筆者はもはやアニメとは別にリアルの「トゲナシトゲアリ」というバンドにハマっております。VOの理名さんの歌声、歌唱力が半端ないですし演奏技術も高くて名曲揃いでございます。何ならアニメを観る前に楽曲を聴いてみてほしいです。
とまぁ、ここまで長々と語らせて頂きましたが、『ガールズバンドクライ』は近年でも屈指の名作アニメなのは間違いないわけです。まだ観てないという方はぜひ『ガルクラ』を観て一緒に中指立ててください!!!!!!!よろしくお願いしますッッッッ!!!!!!!!
あ、あと、続編待ってますッッッッッッ‼️‼️
トゲトゲが武道館に立ってるのを観たいんや~~~~~~‼️‼️‼️‼️‼️‼️
【参考】
https://note.com/c_foot/n/n0bc7e444fa2d
https://youtu.be/D1BmidB_9UA?si=nDPkX909t9f53wZi
https://note.com/riioxg/n/nc641b67d6105
https://note.com/celtic_ta1/n/n5f6c27ecb9bc
https://note.com/lucky_godwit84/n/ned5fbfa912c3
https://note.com/shuhei_sa/n/nf1f401d29162
https://note.com/hanyanyafuwa_/n/ne1a8defeb492
https://note.com/obiwannkinappy/n/na18af692ade9
https://note.com/8_y_o_/n/n20c0cae97110
https://note.com/lucky_godwit84/n/n34956522133a
https://note.com/momokaramomota/n/n544f8aa4e7df
https://note.com/momokaramomota/n/n93221bb066af
https://note.com/gfe00571/n/na3135345dfb7
https://note.com/m_miyamoto_529/n/ne07b2cf817b9
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