ゆうあいセンター ボランピオ巻頭インタビュー9月号
インタビュー日時:令和6年7月11日
岡山大学文学部人文学科3回生 小林ゆり
今回は、就学以前の児童を対象に発達支援(療育)や相談支援を行うNPO法人「晴れ」理事長・𠮷井理恵さんに設立経緯から現在の活動内容までじっくりとお話をおうかがいしました。見学させていただいた施設内の様子もレポートします。
① ご自身が活動を始められたきっかけ・経緯はなんですか?
この施設は自宅を改装したものなんです。私一人となり、せっかく両親が残してくれた家ですし、地域のために活用できないかと考えはじめました。
私は幼児教育学科出身で、保育園や障害者施設、高齢者介護を経験し、療育事業をしてみないかと声がかかったこともあったんです。昨今は発達障害の子も増え、どう育てたらよいか親御さんも悩んでいます。そこで、「児童発達支援」と「障害児相談支援」の事業所に改装しようと決心しました。
知人や地域の方々の応援もあり、NPO法人を設立することにしました。職員に給与が払えるかの不安もありましたが、仲間がすごく手伝ってくれて、励ましてくれたことが心強かったですね。
でも、まさか自分がNPOを設立するとは、と今でも思います。2017年7月16日に10名程度で設立総会をして、10月31日に認証されました。
② 活動を続けられる中で印象に残っているエピソード等を教えてください。
大変だったことは、設立から3年目にコロナが流行したことですね。流行初期に職員が罹患し、濃厚接触者や子どもの罹患者もあり、一時閉所したことがありました。
コロナ禍で、職員がずっとマスクをしていなければならないことも、発達障害で表情を読み取ることが苦手な子どもたちにとっては大変な環境だったと思います。言語発達に遅れのある子には、言語訓練のために口元が見える透明のマスクやフェイスシールドを取り入れるようにしていました。
嬉しかったエピソードはたくさんあります。卒園児や保護者から「来れてよかった」「先生のおかげ」という言葉を頂けることが何よりのご褒美ですね。元気そうに学校に通っている様子をみると、胸がいっぱいになります。
また、挨拶ができるようになった等、成長した子どもの姿が見られた時も心躍りますね。
③ 活動を続けられる中で感じられる社会のニーズや認識の変化等について教えてください。
10年前と比べると発達障害に対する理解は広がっているように思いますが、まだ過渡期にあると感じます。
県内の新1年生の約1割が発達障害児の今、療育により子どもが変わると、お母さんが変わり、子どもがさらにぐーんと成長します。お稽古ごとのような感覚で、気軽に利用していただきたいです。
また、相談者のなかには、「うちの子は元気なだけ」「医師から療育に行ってくださいと言われた」と大泣きされる親もいらっしゃいます。しかし、将来困るのはお子さん本人なので、子どもの育て方を伝えていく「親育て」も必要だと感じています。LINEでいつでも保護者が相談できる体制を整えたり、ちょっとした障害児の育て方のコツ・ポイントを積極的に伝えていきたいです。
④ NPO法人「晴れ」の強みや今後の目標とはなんでしょうか。
職員の定着率の高さも自慢です(笑)。設立当初から、経験を積んだ保育士・社会福祉士・精神保健福祉士といった現場経験豊富なメンバーが揃っているので、多角的な視点から児童を見つめ、その子が小中高生になった時の姿をイメージしつつ支援できることが強みだと思っています。
2年後の目標としては、障害児の日中一時支援をしたいと思っています。宿題やおやつを食べながら過ごせる、発達障害児の学童保育のような場所を作りたいですね。
⑤ 本記事の読者に考えて、行動してもらいたいことはありますか。
障害児はちょっとしたことでパニックになりやすいですが、当たり前に、普通に接してほしいです。
また、困っている様子をみかけたら、「何か困っていることはありませんか」と気軽に声をかけてあげてください。発達障害児にとっても、誰にとっても共にやさしい社会にできたらと思います。
見学
NPO法人「晴れ」での療育を行うにあたっての、さまざまな工夫をいくつかご紹介します!
所内の療育室内に飾ってあるカレンダー。すでに過ぎた日付部分は緑のセルで隠し、今日が何日か理解しやすくなっています。全て先生方の手作りだそうです。
子どもたちが、今日何をするのかについて、絵のカードを用いて理解しやすくしています。また、次に自分が何をしたらいいのか意識しながら作業できます。
療育を受ける子どもたちの中には、空間の認識が上手くできないといった理由から、絵を描くことが苦手な子どもたちもいます。そんな子どもたちも療育所内で練習していくことで上達したり、自由に絵を描くことを楽しんでいたりするようです。𠮷井さんや所内の先生に促され、一人の児童が喜んで自分の絵を見せてくれました。
インタビューしてみての感想
発達障害のある子どもたちにとって、幼少期からソーシャルスキルやコミュニケーションの方法を学ぶことのできる療育はとても大切なものだと思いました。また、親子は相互に影響しあっているので、保護者への支援としての「親育て」も欠かせないと感じました。双方への支援を意識することは、「晴れ」さんの重要な活動方針です。保護者や周囲にいる人々が発達障害児と療育について理解し、障害児に対する偏見の解消につながればと思います。この記事が、NPO法人「晴れ」さんの活動と支援の現状をお伝えする一助になれば幸いです。(ゆうあいボランティア 小林)
NPO法人 「晴れ」
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