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XはYなのか

 「XはYだ」式の命題について前回書いたわけだけど、これは実に妙な命題であって、Xは本来どこまでいってもXだし、YはどこまでいってもYであるはずだ。
 「あれはりんごだ」とか「その花はマーガレットだ」とか、そういう表現であれば、未知なる対象の属性を言い当てるという運動がこの命題には含まれるわけだが、「芸術は爆発だ」は、この命題そのものが、世界の秘密を解き明かさんとする意気込みに満ちている。

 あれからつらつらと、面白い「XはYだ」を探していたんだけど、なかなか見つからない。色々考えてようやく思い当たったのがこちら。

血は愛だ。

 押井守監督最新作「ぶらどらぶ」のテーマである。献血という行為は、無償の愛によって成立する、ということをより短く言い切る。発音を正確に模写すると、「ちぃは、あいだ...!」みたいな感じ。

ステーキは、サラダである。

 これは、料理の四面体という、密かな自分の愛読書である文庫本で提示される、驚愕のテーゼである。
 この命題だけを読んだ人にとっては、そんなわけあるかと思うだろうが、この本を読んだ暁には、そうじゃないわけがあるかと思うようになる。

 XとYの隔たりが大きく、かつ論理を追っていくと確かにそうだと納得せざるを得ない、そんなとき、XはYだ式命題は最大の力を発揮する。そんな仮説もあるかもしれない。引き続きもう少し探索してみたい。

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