一期一会
一期一会という言葉は、茶道家である千利休の言葉で、「一期に一度の会と思って亭主を畏敬すべし」と残したといわれています。
この言葉には、「茶会へ出向く際は一生に一度の出会いだと心得て、客や亭主に真心を尽くしましょう」という意味が込められているそうです。そこから、茶会以外の場所でも「出会いを大切にする」という意味で使われるようになったようです。
◎出会い
先日、日本スポーツコーチング協会の養成講座4期の仲間と集まりました。皆さんが、それぞれの立場役割責任の中で挑戦してきたかたらこと、まるでジャズセッションのような対話になりました。
それぞれ自分が持っている音、表現があり、それを出してみたり、一方でみんなが出してきた音を聞いて自分のなかで取捨選択したり、あるいは挑戦してみたり。
出会って2年、変わらず関わりあえることに感謝ですし、このような関係性を築けたことがまさに全員が一期一会を大事にしているからだと感じました。
◎馬鹿と言われても
トム・ハンクス主演の映画「フォレスト・ガンプ」は日本語タイトルでは「一期一会」の言葉が付いています。公開は1995年で、ちょうど私が小学4年生くらいのときでしょうか。学校でその映画を見た記憶があります。
当時の僕は、勉強は嫌いでしたし(姉兄に比べられるので)、運動もできなかったのでどちらもコンプレックスでした。唯一は自信があったのは音楽くらいだったでしょうか。
トムハンクス演じる主人公フォレスト・ガンプは、知能指数は人より低いのですが、足だけは速く、ひょんなことがきっかけで様々な人と出会い変化していきます。
バカにされている姿と勝手に自分を重ね、誠実にただまっすぐ生きていく、自分を信じで前に進むことの強さに心打たれました。
幼馴染のジェニーの”走って”の一言で、駿足を活かしその人生を走り続けます。アメフト、軍隊、卓球、えび漁業と様々な取り組みすべてに対して、「いま目の前のことに全力で取り組む」に集中しています。
フォレスト・ガンプは、自分を受け止め、人との出会いを大事にし、まっすぐ向き合うことで、応援してくれたり、救ってくれたりする人がたくさん現れます。ただ誠実に、自分にも相手にも。
◎在り方
コーチングはクライアントと時間を共有し対話を重ねます。私たちは日々、数多くの思考を繰り返しています。そのなかで、言葉として表現されるのは、検索と選択がされたもので、「今ここ」で生まれるものです。
まさに、一期一会です。
もちそん、少しずつ経験を積んでいく中で、この場面にはこうすればうまくいくというパターンができあがります。するとそのセッションは、「型にはまっている」、「面白くない」、「問題解決になる」、「すっきりした」コーチングになります。
国際コーチング連盟が定めるコア・コンピテンシーには、次の項目があります。
コーチングはスキルやノウハウの大事さはもちろんですが、学び、研鑽すればするほど、
—このコア・コンピテンシーにある「今ここに在り続ける」とは何なんだろう?
と、ずっと頭の中をめぐります。
対話はその場でしか生まれず、その場での対話の内容、関わりかた、選択の仕方などで、クライアントが起こす行動や未来が大きく変わるものと考えています。
つまり、「今ここ」に集中し、"私"と"あなた"ではなく"私たち"の関係で、未来を共に創っていくことなのかと思います。
この相手との対話に向き合うスタンスや姿勢のことを「在り方」と言えるのかもしれません。
◎未来へ向けて
これまでは、成功事例があり、それをまずは真似することで誰もが成功してきた、そんな正解ともいえるものがあったのかもしれません。
しかし、今ではそのやり方を真似してもうまくいかないことのほうが多いように思います。それは、その人の能力や取り組み方ではなく、その人がいる環境や背景、その時間軸上では機能しきれない部分が多く占めているのかもしれません。
先の見えない、正解のない世の中で、一歩踏み出していくことが求められます。
このような状況で、「今ここ」での誰かとの対話が、新しい未来を創り出すかもしれない、というスタンス、「在り方」で周囲の人と関わるのとそうでないのとでは、そこに関係している自分自身も、関わる人々の未来に大きな違いを生むのではないでしょうか。