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観察する
オリンピックメダリストを育成した名コーチである、マラソンの小出義雄監督は、選手の性格に合わせた個別対応の育成スタイルが有名です。
幼いころから人より秀でた才能がないと思い込み、常に劣等感と戦ってきた有森裕子さんには、「マラソンこそお前を表現するものであり、がんばれば皆が認めてくれるんだ」と励まして、こうすれば本番でも走れるとコンディショニング重視の指導を行ったそうです。
走ることが人一倍大好きでありながら大レースで勝ったことがない高橋尚子さんには、コンプレックスを取り除くために、とにかくほめてほめて、その気にさせて、やる気も力も伸ばしていく方法をとりました。
強みを活かし、弱みやコンプレックスをコミュニケーションで解決している小出監督の育成方法は、クライアント一人一人の特徴にフォーカスして、目標達成をより早く実現できるようにサポートするコーチが実践している方法と非常によく似ていますね。
◎個別対応
スポーツやコーチングに限らず、ビジネス、医療、教育のほか、サプリメントや食事など様々な分野で「個別対応」ののサービスが見られるようになりました。
個別対応の第一歩は、「人それぞれ違う」という前提の下、相手を理解すること、そのための観察から始まります。観察の対象は「相手」だけではなく、「自分自身」についても改めて観察し理解する必要があります。
それは、私達は無意識のうちに自分の基準に照らし合わせて「相手も同じだ」と思いがちだからです。
しかし、目の前の相手があなたと同じ考え、感じ、行動するのはむしろ稀です。
観察を通して、自分と相手の物事のとらえ方や見方の「違い」を知ることではじめて、相手を理解し、個別対応することができるようになります。
◎阻害するもの
個別対応が阻害する要因はなんでしょうか。代表的な要因は次の2つです。
●レッテル・・・過去のある一面からみたその人の残像
ある個人に対して、過去の言動・行動に対する印象から「レッテル」を貼ってしまうことがあります。
例えば、過去に何らかの理由で大事な納期を守れなかった人に対して、「彼は納期を守れない人だ」というレッテルを貼ってしまっていることはないでしょうか。
レッテルを貼ることで、その人の未来の行動を予測し、制限している弊害が発生していないでしょうか。
●ステレオタイプ・・・ある属性に対するレッテル
例えば、「日本人は~」「アメリカ人は~」「中国人は~」と、国民性や民族にレッテルを貼ることは最もわかりやすい例です。
これには「2000年代生まれの若者は~」「都会の人は~」「上海出身の人は~」と、より細分化された新たな属性が次々と生まれてくる危険性をはらんでいます。
「日本企業に勤める日本人の40代の男性は~」「20代後半の女性は~」というステレオタイプ化された情報だけで、相手と関わるとき、また逆の立場で、違う環境のパートナーが関わってきたとき、私達の関係性はどうなるのでしょうか。
◎変化に対応するために
日々何が起こるのか予測できない状況となっています。COVID-19がよりそれを強く認識する機会となりました。
私たちが「現実」ととらえているものは、その事実ととらえ方によって、個々に受ける影響がずいぶん異なります。
どんなとらえ方にも意味と価値がありますが、偏ったとらえ方の影響を受け続けるのではなく、別のとらえ方もできるように、幅を持たせるようにバージョンアップしていくことで、行動に向けた選択肢が増えるのです。
具体的な観察の仕方についてはまた今度。
※参考資料 コーチングの基本、コーチングマネジメント、コーチング流タイプ分けを知ってアプローチするとうまくいく
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