僕たちが出来る精一杯のモノを形に。身近な存在になるために考えること。
冠婚葬祭で着用するフォーマル(礼服)。
実は、日本特有の装いだそう。ヨーロッパではダークスーツが一般的であり、日本に今の装いが広まったのは第二次世界大戦後と言われています。
相手を敬う想い、慈しむこの文化を大切にしたい。お客様の気持ち、期待に応えたい。先日、その気持ちを形にした究極のフォーマルが遂に完成しました。
今回は、当社でフォーマルのバイイングをしている、中村さんに話を伺ってきました。ぜひ最後までご覧ください。
商品部 副部長 中村敦司
製造メーカーの営業を経験後、2008年に青山商事へ入社。前職で培ったキャリアを活かし、商品の品質管理・フォーマル(礼服)のバイイングを担当。
ここが僕の仕事場
僕は出社後、オフィスフロアを離れ商品部のために造られた専用の商談部屋で仕事をしています。
ここでメーカー様と打ち合わせを行なったり、商品のサンプルをチェックしたり、合間に業務をしていると1日中ここで過ごしてしまっています。
究極のフォーマルにたどり着くまで
今回遂に完成した究極のフォーマルである「SavileRow 匠ブラックフォーマル」。
実は僕らの中では本当に良いものとは何かを数年前に描いていたんですよね。
コロナ禍によって徐々に広がってきた家族葬や家族挙式ですが、以前から相手を敬い慈しむ気持ち、時間、価値観にウェイトを置いた服装選びに変わっていました。つまり価格や機能だけではないんです。
そういったお客様の想いや期待に応えるのが僕らの仕事ですから、洋服の青山がとことんこだわったらどのようなフォーマルが出来るのか?そしてどこまで追求できるのか?最高峰のものを作ってみたい好奇心がありました。
ただ当時は課題が多く形にすることができず、それが今回実現できることになり企画スタートの際は非常にワクワクしました。
匠のこだわり
匠ブラックフォーマルでこだわった点は、生地選び。世界で0.04%しか採れないニュージーランド産メリノウールSuper140’を使用しています。この生地は非常に希少価値が高く、既製品ではあまり使われていません。
見た目の光沢感はもちろん、柔らかさも特徴ですよ。ぜひ触っていただき、その柔らかさを感じていただきたいですね。
あとは、キュプラ裏地。日本で2台しかない織機で作られています。この織機は一般的のものと比べると低速で動くという特徴があります。低速でゆっくり織るので時間がかかってしまうのですが、柔らかく、ソフトな仕上がりになるんですよね。着用した際に柔らかい生地に包み込まれる感覚とそのフィット感、独特な風合いが楽しめるものになってます。
この織機はしばらく稼働していなかったようで、メーカー様にお願いして特別に作っていただきました。
他の資材にも日本クオリティのものを取り入れています。
例えばボタン。群馬県太田市で作られているカゼインボタンを使用しています。このボタンは牛乳由来で自然に還るエコボタン。カゼインに材料を混ぜ、熟成と乾燥を繰り返しながら作られています。光沢が出やすく、ツヤが非常に美しいんですよ。
他にも岐阜県大垣市の毛芯や富山県南砺市の接着芯を採用し、日本にある地域こだわりの厳選資材を匠ブラックフォーマルへ踏襲しました。
今まで培ってきたメーカー様との信頼もあり99,000円という価格を実現し、僕たちが出来る精一杯のフォーマルが完成しました。
お客様の身近な存在になるために
僕は「着用品質」という言葉を大切にしています。僕が作った造語なんですけど、これはお客様に着用していただいた時に実感した品質のことを指しています。着用した際に感じる「柔らかい」「動きやすい」などポジティブな言葉を引き出せるモノづくりが大切です。
今後は、商品の企画と同時に使用される素材の品質と商品のクオリティを見極めるのが私の仕事ですから、バイヤーひとりひとりがこだわって生み出した一着と、そのブランド価値を高められるようにしていきたいです。最終的にお客様に満足してもらえることが僕らモノづくりをする立場の喜びや、やりがい、モチベーションに繋がるんでね。
そのためにも、安定したクオリティの維持と更なる向上に向けて人材の育成フォローも行っていきたいなと考えています。
また、お客様にとって身近な企業になれたら嬉しいですね。
今はまだ「スーツが欲しいから青山に行こう」という志向だと思うんですが、それだけではなく「正しい着こなしがわからないから青山で聞いてみよう」とか「青山のサイトを見たら冠婚葬祭当日のマナーがわかる」という、どんな時でもお客様に向き合った形にしていきたいです。