マネジメント基礎⑧
前回の続きです。
ここからは、具体的な方策についての話になる。
マネジメントの方法。
三菱や、フォードのような巨大企業は、かつてマネジメントをもたなかった。オーナーや起業主に助手をつけて、その支配のもとにあったし、そうするべきだと考えられていた。
しかし、どの有名企業も同じ壁にぶち当たった。それは、「規模の拡大に伴う組織の複雑さへの対応」である。
この課題は、それぞれの企業は、権限と責任を伴うマネジメント・チームが組織されることで、解決へと向かう。それぞれのマネジメントチームが、かつてオーナーの力が最大化されていた時代より、企業の規模を拡大へと向かわせた。
これは、オーナーは硬い皮膚で覆われた昆虫のようであると比喩される。彼らは単体で強くはあるものの、その硬い皮膚に覆われてしまっているので、それ以上大きくなることはない。もっと大きくなる、つまり規模を拡大するためには、皮膚をとっかえる必要があり、その機軸として、マネジメントという「骨格」が必要となるのだという。
では、マネージャーとはなんなのか?
かつて、工業が産業の中心を占めていた時代、マネージャーは人の仕事に責任を持つ者とされた。やることが決まっている以上、それを命令し監視することで特別な存在になった。
しかし、今や時代は変わった。「組織の成果に責任を持つもの」が、急速に増えた。結果、各企業や団体で、専門家が力を持つようになったのだ。
そこで以下の二つのファクトがマネージャーの定義で問われるようになった。
「責任」
「権限ではなく貢献」
の二つである。
マネージャーは、専門家とのコミュニケーションを取る際のエージェント/ハブとなる必要がある。なぜなら、専門家はコミュニケーションに一番の課題を抱え、それを伝達する方法がなければ、彼らの力は発揮されないからだ。
むしろ、専門家はマネージャーの上に立ち、彼らの組織の導きを正しい方向へ進ませるための助言ができる上司とならなければいけない。
この点から、「マネジメントをする」点に関してはマネージャーと専門家は、同じマネジメントの一員であることがわかる。
では、具体的にマネージャーの役割はなんなのか。
あらゆる決定や行動は
① 投入した総和以上のものを生み出す生産体を作ることを目的に行われる。
オーケストラのように、それぞれの個が持つ強みを発揮させ、弱みを消すことで、部分の和よりも全ての成果を見なければならない。
② あらゆる決定において、今と未来を調和させるように行われる。
犠牲を払う場所はどこであるべきか、そのバランスを考えながら行動し決断しなければならない。
これは、全体結果を拡大するためにマネージャーは存在する。と言っているようなもの。
そして、その共通する仕事は以下の5つ。
① 目標設定
② 組織
③ 動機付けとコミュニケーション
④ 評価測定
⑤ 人材開発
これらは、マネージャーとして適切に振る舞うためのスキルや能力であり、これがあるからマネージャーになれるというわけではない。
では、そのマネージャーに必要な資質は何か?
それは、愛想の良さとか、人付き合いがうまいとかではなく、「真摯さ」である。人との付き合い方など、後天的に学べるものは所詮道具にすぎず、根本に真摯な姿勢で、「誰がではなく、何が良いのか」を評価したり、一流の仕事を自分にも仲間にも求めることが正しいマネージャーとしてのあり方である。