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営業とプリセールスエンジニアの真の協働を考える 〜車の両輪アプローチ〜
車輪の大きさと回転速度
営業とプリセールスエンジニアは、まさに車の両輪です。車が真っ直ぐに進むためには、両輪が同じ大きさで、同じ速度で回転する必要があります。この当たり前の物理法則は、両者の協働における本質的な課題を示唆しています。
異なる視点がもたらす価値
一般的に、営業は「Why」と「What」を追求し、プリセールスエンジニアは「How」を追求すると言われます。しかし、実際にはそれほど単純ではありません。優れたプリセールスエンジニアは、適切な「How」を提案するために、「Why」と「What」への深い理解を欠かすことができません。
なぜなら、技術であれソリューションは、顧客のビジネス課題や目的に対する深い理解があってこそ、真の価値を生み出すことができるからです。プリセールスエンジニアは、単に技術的な実現性を検証するだけでなく、その技術がなぜ必要で、何を解決するのかまで踏み込んで考える必要があります。
二つの視点から見える景色
営業の視点
顧客の経営課題
予算の制約
競合との差別化要因
意思決定プロセス
ステークホルダーの利害関係
投資対効果(定性と定量の両面)
プリセールスエンジニアの視点
技術的な実現可能性
システム要件の整合性
運用上の課題
技術的なリスク要因
将来的な拡張性
投資対効果(定性と定量の両面)
これらの視点は、互いに排他的なものではありません。むしろ、プリセールスエンジニアは積極的に営業の視点を理解し、取り入れることで、より効果的なソリューションを提案することができます。技術的な実現性と顧客価値の最大化は、決して二律背反ではないのです。
リスク評価の深度
営業は「この案件は受注できるか」を問い、プリセールスエンジニアは「この案件は実現できるか」を問います。しかし、真に優れたプリセールスエンジニアは、さらに一歩踏み込んで「なぜこの案件を実現すべきか」「何を実現することで顧客に価値を届けられるか」までを考え、様々な示唆を示します。この積極的な姿勢が、案件の質を高めることにつながります。
コミュニケーションの質
両者の対話は、まるでギアのかみ合わせのように正確である必要があります。特にプリセールスエンジニアは、技術的な情報を伝えるだけでなく、顧客のビジネス課題に対する理解と、それに基づく提案の意図までを明確に伝える必要があります。それによって、営業との真の協働が可能となります。
時に営業からすれば、実現可能性を問うプリセールスエンジニアが疎ましく思うこともあるでしょう。目に見えた受注に対してリスクを伝える存在だからです。ただ見えているゴールは顧客の成功であり価値の創出だと考えれば、やはり共に協業する道を探し出すのがチームとして必要になるのです。
二つの専門性の融合
両者の対話は、先に示したように意見の相違を生むこともあります。しかし、これは決してネガティブなことではありません。むしろ、それぞれの専門性に基づく率直な意見交換こそが、提案の質を高める原動力となります。重要なのは、その対話が建設的なものとなるよう、共通の評価基準や言語を持つことです。
顧客価値の定義
リスクの評価基準
案件の優先順位付け
成功の定義
これらを共有することで、より効果的な協働が可能となります。
社内連携の重要性
二つの車輪は、それぞれが独自の役割を果たしながら、一台の車を確実に前進させます。プリセールスエンジニアは、技術的専門性を持ちながらも、顧客のビジネス課題や目的に対する深い理解を持つことで、より大きな価値を生み出すことができます。
しかし、案件の成功は営業とプリセールスエンジニアの二者間だけで実現できるものではありません。社内のサポート部門、製品開発チーム、カスタマーサクセスチームなど、関連部門との密な連携も欠かせません。これらのチームとの早期からの情報共有と協力体制の構築が、提案の実現性と顧客満足度を高めることにつながります。
パートナーシップの活用
多くの案件では社外のパートナー企業との協業も重要な要素となります。パートナーの持つ専門性や実績を適切に活用し、提案内容に織り込んでいくことで、より充実したソリューションを顧客に提供することができます。そのためには、パートナーとの円滑なコミュニケーションと、提案内容の正確な共有が不可欠です。
おわりに
このように、営業とプリセールスエンジニアの協働を軸としながらも、社内外の関係者との連携を広く視野に入れた活動を展開することで、真の意味で顧客価値を最大化することができるのと信じています。