【エッセイ】漁港に生きる男と女

「J系」―—それは女子高生でなく「国有系」。


JR…国鉄

JT…日本たばこ産業

JA…農協

むかしはJTBだって日本交通公社という半官半民組織だった。


その中でも僕は特にJFが好き。「漁協」(Japan Fisheries.)

響きがいい。


何がいいって、あの人たちは嘘偽りなく死ぬ覚悟で仕事に従事している。


広告代理店時代に「全国の旨いものを見つけに行こう!」系の番組を担当してた時、野菜・家畜(肉)・魚介類を求め、全国津々浦々取材に行っていた。


その中でも漁協っていうのは一番とっつきにくくて取材も大変だった。

一言に言えば「シャイ」!

家畜系の方もシャイだが、”海の男達”っていうのは言葉選ばずに言えば、荒くれもので、そのくせシャイ!


それでも「この食材のおいしさは?」とか「漁師町ならでは調理法は?」とか一生懸命に聞き出す。でも、答えは「うまいもんはうまい!」とか「刺身」とか単純なものでそこの広げ方もとっても苦労した。笑)


彼らと話しているとふと暗い表情になる。


「この前は、アイツがいってしもた」


アイツ・・・?


そう、海にのまれて亡くなったのだ。


取材した選別や加工をしている奥さんがそうだった時もある。

「あたしの旦那はこの前、海に出たまま帰らぬ人になってしまってさぁ――」


いろんな漁港に行ってはいろんな取材に立ち会ったけど、それでも彼らは前しか向いていないように見え、毎度新鮮だった。


『男は海に出て、女は港と家を守る。』

……こんなことを言うと、今の時代では女性蔑視だとかなんとか言われそうだけど、違う。全く違う。


漁師の男達は、女子供を懸命に守っているのだ。自分の命と引き換えに。


夫が仮に海の藻屑となっても、嫁には港の仕事があれば食っていける。残された子供達も。逆に夫だけ生き残っても子育てができない、そんな”自信”があるんだろう。


『女は家にいろ!』……そんな言葉も裏を返せば……

全て差別だと一括りにするこのご時世もおかしい。あえて揺さぶりたい。


女性の漁師だって今はいる。それはもちろんそれでいい。


口の荒い海の男達に、僕はたまに会いたくなる。差別とは別世界にいる不器用だが優しい旦那と、その帰りを毎日想う嫁と、港町で無邪気に遊ぶ子供たちと。

クスっと笑えたら100円!(笑)そんなおみくじみたいな言霊を発信していけたらと思っています。サポートいつでもお待ちしております。