【エッセイ】『格納容器を早く!』
大雨洪水の多い夏だった。
毎年のように練り歩く豪雨。
私が住む京都はさすが千年の古都だけあり災害は少ない。それでもこれまでにない土砂降りに町屋の軒先にまで水が押し寄せた。近所のどぶが数カ所でも詰まりさえすれば、一気に治水は機能を失い、床下浸水となっただろう。昔ながらの土嚢を欲した。
山は大いなるスポンジ。普段は生け花のように美しい東山も嵐山も、その容量を超えそうだと手元の警告が泣き叫ぶ。
街中のホテルに泊まろう。コンクリートに固められた、高層で、涼しい客室に。ここなら一階が沈んだって別に構わない……
原発が爆発した時、建屋を懸命に塞いだ。
雨雲が爆発した時、自らの居場所を塞いだ。
格納されゆく人類。年々生きられる場所を自らの手でせばめている気がしてならない。
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