【エッセイ】高熱の向こう側
久々に高熱を出した。
終夜、のたうち回った。
意識が朦朧としながら、或る夢を見た。
町中のはずなのに広々とした園のような空間。お城の石垣のように高い壁のふもと。強い日差しを避けるように、芝生の上に懐かしい大学の後輩たちと腰を下ろしてチルしていた。「こんなにみんなが集まるのいつぶりだろう」と顔がほころぶ。
そこにあの人もいた。詳細は忘れたけど、悩みを打ち明けられた。今住んでいる町があんまり気に入らなくてとかなんとか。
「何年住んだ?」と聞くと彼は「二年」と答えた。
「僕は名古屋に六年半住んだ。最初は大嫌いだったけど、最後は大好きになれた。最低でも三年は住んでみなよ。それでも好きになれないなら出たらいい」なんて。いかにも先輩らしく。
ニコニコとうなずく彼に無性に触れたくなった。すかさず思いっきり、両手でその短髪頭をクシャクシャと撫でまわしてやった。犬のように。
コラコラと恥じらいながら笑ってより細くなる目。
やっぱり……!!!
そこで目が覚めた。熱が引いていた。
それでもまだ息は荒く、懸命に酸素を取り込もうとしていた。
深層心理で最期に見たい風景だったんだろうか?
理由なんて何でもいい。
このまま熱が上がり四十二度を超えたら、帰ってこられなくなるかもしれない。その前に伝えたかったことがあったのに、今回もうまく言えずに終わってしまった。
『あのときは、ごめん』
クスっと笑えたら100円!(笑)そんなおみくじみたいな言霊を発信していけたらと思っています。サポートいつでもお待ちしております。