リーダーになろう
最近英語を勉強しなおしているのですが、英語の短編物語をたくさん集めた「英語で笑おうよ」というYouTubeチャンネルは大変おススメ。英語の勉強になるだけでなく、人としての道理や良心に突き刺さるエピソードに心を打たれ、気持ちも豊かになります。
数ある物語の中で、企業に勤める人であればきっと共感が得られるだろうと思った以下のエピソード動画「自分勝手なボス社長に対して優秀なリーダーが論破してスッキリ!」の所感を綴らせて下さい。
「人を潰すクソ野郎」という、少々下品なサムネイルですが、私はこの動画からはそういったネガティブ感情は抱きませんでした。「組織に求められるのはリーダーであってボスではない」。平たくいうとこんな内容です。私自身も十年以上前に自身が初めて課長職という役職に就いた時のことを思い返しつつ、また昨今の自身の身の回りの役職者の振る舞いとを重ね合わせながら視聴していました。
熾烈な競争原理が伴い、利潤を追求し続ける資本市場の中であっても、企業の存在の本質は社会貢献であり、預かった社員やその家族に対する責任もあります。働く人間であれば人生の大半の時間を費やす会社/職場。人によって求める幸福感は違うかもしれませんが、成果・昇進・昇給といったOutputや報奨以前に、心身が健康な状態で働ける環境であることは、そもそも大前提にあるように思います。以前に読んだアンデシュ・ハンセンの「メンタル脳」という本に、人間が幸福を感じるレシピは二つとありました。一つ目は、心から信頼がおける人たちに囲まれた環境に身をおけること。二つ目は、そのような環境の中で他者のために意味を感じられる活動や行動を続けられること。私は会社というのはそういう場でなくてはならないと思っていて、ゆえに社会の課題や顧客の課題を解決できる優れた製品なりサービスなりが生まれるのだと考えています。
さて、近年多くの企業のコンプライアンス規定の中でも厳格になっているパワハラ・モラハラ・セクハラなどのハラスメント対策ですが、やはりまだまだ撲滅には程遠いように感じています。うち、例えばのケース、会社で課長職や部長職に就いた時に、それが会社の中で期待される「役割」ではなく「立場」と勘違いする輩は多いですよね。課長なり部長なりのジョブタイトルを「立場」、即ちポジションと捉える人は、自分が偉くなったのだと勘違いし、独裁的な振る舞いに変貌したり、部下を粗末に駒のように扱ったり、目上の先輩が部下に転じた途端にリスペクトを忘れて見下した口調に変わったり、権力を振りかざしてボスを演じてしまう傾向にあるように思います。そういう職場は決して気持ちよく仕事ができる環境とはいいがたいように思います。動画に出てくるシチュエーションは、それをかなり誇張した演技にはなっていますが、主人公のビジネスマンが使っていた言葉や表現の中には、組織に求められるのはボスではなく、最大の成果をあげるためのリーダーであるべきその姿や役割、つまりリーダーの定義が謳われています。本短編ドラマは4分ほどですので、詳しくは是非一度視聴してみて下さい。
私に一番刺さったのは以下の場面でした。
「リーダーによって動機づけられた組織はROIを最大化することができる」。そんな台詞が発せられた場面でした。ROIとは経営学によく出てくる用語ですが、一般的にはReturn On Investment(投資対効果)を意味します。ただ、この動画でのROIはReturn On Intentionという使い方をしていました。”意図/行動に対する収穫”。つまり社員の意欲を引き出して、組織活動を活性化し、それぞれの目的に対する行動を促すことでOutputを最大化するという意味合いのように私は捉えました。この表現は目から鱗でした。
ある心理学の本に、「上下関係が人間関係を壊す」とあったように記憶しています。会社では組織の運営や意思決定をするために、組織の単位毎に組織長を配置しますが、上司と部下は会社の役割上の関係であって、人として優劣はありません。そこを大きく勘違いしている人があまりに多いように感じます。私自身も初めて役職に就いた時に舞い上がって調子に乗っていたこともあったかなと、今更ながら我が身を振り返り反省の念に駆られます。
そもそも会社は人が資本。上位職に立つ人ほど謙虚な姿勢を忘れてはならないように思います。人は命令で動かない。行動に意味を覚えることは行動の源泉。だから動機付けって大事なのだと思います。本来人は心が動かされることで行動に移せる生き物だから。
社会的な責任、株主に対する責任、顧客に対する責任を全うするのが企業の活動の目的。それを実践しているのは従業員。働く人たちのIntentionを奮い立たせるのがリーダーの役割。役職を立場と勘違いしてボスを演じるのはむしろ組織の風紀を乱す行為のように思います。会社という組織の中で、ボスではなく、たくさんのリーダーが育つことで企業の事業活動は活気づき、組織風土は潤いを取り戻し、一人ひとりの従業員が先にある社会や顧客の課題解決に素直に向き合い、それに意識を尖らすことができるのだと思います。この動画からそんなことを改めて感じた次第。