【年齢のうた】Creepy Nuts●30才の俺を見る「15才」のお前
2月から3月に入り、この週末までは忙しかったです。やっと少し落ち着きました。ふぅー。
行く予定のライヴがあまりなかったのが幸い。いくつか断念したけど。
そして仕事がきつくなると、私生活に支障が表れてしまい、周囲(家族)に迷惑をかけがちになる。ということを続けて、生きております。すまない。
それにしてもこの春は、あたたかくなってきたと思ったら、晴れていても風が強くて、それで寒い。強風は油断できないですね。いろいろ飛ばされそうで。
そんな中で買い物や図書館には行っています。あまり書いてませんけど僕はかなりスーパーに通ってて、主に生活のための食材を買っております。なので物価の状況などは把握していますね。最近は卵の価格がやや落ち着いてます。とはいえ、全体的な物価は高いままだけどね。今後もこの水準でいくのでしょうか……泣。
さて今回は、Creepy Nutsです。
現在、「Bling-Bang-Bang-Born」が世界的に大ヒットしているふたりです。
それがあるのでしょう、彼らの公式が、世界向けに紹介ビデオを作っていました。
同調圧力やスクールカーストに埋もれる「15才」の心情
Creepy Nutsに「15才」という曲がある。この曲について書こうと思う。
その前に。
15才というのも年齢ソングには多いテーマだ。
ここで過去に取り上げただけでも、これだけある。
15才ソングは、思春期のまっただ中の年齢だけに、それゆえのときめきとか不安定な気持ちについて唄われることが多かった。心も身体もまだ未熟な年頃であり、おかげであらゆることのバランスが崩れることは多いだろう。もちろん、感情面で刺激を受ける出来事も多々あるわけだから。
しかし、Creepy Nutsの「15才」が描いている世界は、ひと味違う。
この歌は6年前の2018年には存在していて、その頃に曲を収録したカセットテープが出回っていたようである。
下記は当時の記事。
番組前半、リスナーから「Creepy Nutsの楽曲が入ったカセットテープが渋谷で配られていた」という報告がメールで届き、動画配信サービスNetflixで配信中の海外ドラマ『13の理由』(※シーズン2は5月18日から配信)にインスパイアされて制作した楽曲だと説明する。
『13の理由』は、主人公の女子高校生が自殺に至った“13の理由”をめぐる海外ドラマで、ストリーが進むに連れ、ちょっとした勘違いやクラスメイト達が犯した同調圧力という些細な罪の積み重ねが明らかになっていく物語。
Creepy Nutsが提供した楽曲『15才』も学校での同調圧力やスクールカーストを考えた作品となっており、この重いテーマにR-指定は「現代社会や若者の中はSNSというもう一つ社会があって、学生の力関係がより複雑になっていると思う」と、現代は“リアル”と“SNS”の2つの社会が存在して複雑なものだと語る。松永も「人間は3人以上いると政治が始まるから、複数で接している時は同調圧力から逃れられない」と、同調圧力は必ず存在して避けては通れない問題だと続けた。
このニュースを見るかぎりは、「15才」はドラマ『13の理由』のインスパイアソングというところだろうか。
ネトフリの公式では、「意見楽曲」という表現がされている。
ラップも、DJ松永によるトラックも、非常にヘヴィだ。聴いていて、こちらの心にずしずしと迫ってくる、
内省的な曲である。なにしろこれは、今の自分と、過去の、15才の自分との、自問自答の歌なのだ。
歌詞を見ると、歌の主人公は、15才から15年先の未来にいる。つまり30才の男が、15才時の自分を回想し、彼に唄いかけている。そういう曲だ。
先の記事では、同調圧力やスクールカーストと言った、主に学校という場所での人間関係やそこでの空気のことが書かれていたが、曲自体はもっと15才の内側に入り込み、そこでの苦悩や葛藤を描いている。
そして若い時分に重く抱えていた居場所のなさ、生きる苦しみを思い起こしながら、その気持ちのままに30才の自分自身に対しての感情を向けている。その刃は非常にリアルで、シリアスだ。
そんな30才でいいのか? そんな大人になりたかったのか?
これはMCのR-指定による、自分に向けての刃でもある。
この歌が作られた2018年の春頃の段階では、彼はまだ26才。アラサーというほどの年齢ですらない。
大人の年齢になっていく自らの心に立ち返って、これを書いたのだろう。それはCreepy Nutsが人気を得て、メジャーな存在にのし上がっていった時期でもある。
この歌は、15才の時の少年の葛藤が描かれている上に、30才の大人の葛藤も、同時に描いているのだ。
「15才」をアルバムに収録したのは、R-指定がまさに30才の時
「15才」は2018年当時から演奏されてはいたようだが、2021年になってアルバム『Case』に収録されることとなった。この時期にR-指定は、まさに30才になっている。歌詞の通りの年齢に至ったのである。
R-指定 例えたり隠したりすることに重きを置いてはいないですね。それは自分としても作っていて面白い部分だし、自分の武器でもあると思うんですが、今回はそこにこだわってはいないですね。だからデジタルタトゥーのことを歌うから「デジタルタトゥー」、15才のときの感情をテーマにしたから「15才」(笑)。
──それはまさに「のびしろ」で書かれていたことですよね。では「のびしろ」を制作するに至った経緯は?
R-指定 去年、松永さんが30歳になって、そこで「ヤバ!」「キモ!」って言ってたんですけど(笑)。
DJ 松永 「オジサンだ! キモ!」って(笑)。
R-指定 で、自分も今年の9月で30になるから、10代からお互いに知ってる2人が三十路を迎える節目の曲を作ろうと、去年の段階で考えてたんですよね。でもそのことはすっかり忘れてて。だけどアルバムの構成をまとめていく段階で、「風来」と「デジタルタトゥー」「15才」の間にスペースが空いてたんですよね。
R-指定 それに前半はラッパーとしての顔が中心になってるんだけど、「風来」ではいち人間をテーマにしたんで、もう1曲そういう部分を書きたいと思ったんですよね。それで「そういえば30歳をテーマにしたアイデアがあったな」と。実際、歳を重ねることに対してはポジティブに捉えてるし。
DJ 松永 仮タイトル「ポジティブ30」だったもんね(笑)。
R-指定 そういうポジティブに人間を捉える曲を入れようと。それが見事にアルバムのど真ん中になってくれましたね。
こうしてできたのが、あの「のびしろ」だったということか。
Creepy Nutsの15才ソングは、過去のこの年齢の歌たちとは、質感が大きく違った。
思い返す、当時の苦しみ。そこで今の自分の内側に湧いてくる苦み、反省、やり場のない思い。
ただ、僕の見方はこうだ。
そんな15才が、30才まで生き抜いて、居場所を見つけ、なんとか毎日を送っているということ。
そして、それだからこそ、この歌が生まれているということを思うと、それは素晴らしいことだと思う。
僕はヒップホップやラップの界隈にまるで明るくないが、そのシーンにしてみれば、Creepy Nutsは断然メジャーな存在であり、セルアウトした連中と見なされているはずだろう。
そういう側面もあるとしても、だ。ここまでたくましく音楽シーンに君臨している事実は、本当に並大抵のことではない。
とんでもないふたりだと思う。
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