16の頃、ボロボロの船を乗り換えた。
私は、人を船に例える。
どんなに素敵な船も、長く乗っていれば
風に煽られ敵に撃たれ波に飲まれ、傷だらけになる。
次の島まで、また次の島まで、その先の島まで。
愛着のある苦楽を共にした船を
赤の他人に批判されると尺に触る。
「てめえにこの塞がれた穴のかっこよさがわかってたまるか」なんて。
「この、歪な形がかっけえんだ」なんて。
「これだけ長く乗っていられる船の質が悪いわけがない」なんて。
私ら人間は、歳を重ねるごとに、どんどんどんどん
古き良きその船に固執するようになる。
傷を見つめて手を添えて、
これが栄光だと信じてやまない。
そして、避けきれない大砲が突然放り込まれた時
限界を迎えて沈み、慌てて見つめ直すんだ。
海に散らばる船の木屑や残骸にしがみついて
「あぁこうなる前に乗り換えておくんだった」なんて。ね。
愚かなんだよな?
私が傷だらけの船に気がついたのは、16の頃。
時に荒波に飲まれ、時に暴風に吹かれ
時に体当たりでどこぞの船と正面衝突したりなんかして
勝手に、より強くなっていると信じてやまなかった。
ある時、ある人に
「いつまでその渦の中にいるの」と笑われた。
ふと見上げた帆が折れていて、
波に任せてしか前に進んでないと気がついた。
修理の仕方すら知らずに旅に出てしまったもんだから
まだ16の未熟な私は、自分の船が穴ぼこで
沈みかけていることを、ここでようやく知った。
なくなく、旅を途中で切り上げて
新たな船を作った。
半年間をこれだけに費やした。
基盤を変えてより軽く
モーターを取り付けてより効率よく
自分の席をより広く居心地よく
色んな船の設計図を見漁って見比べて
もっともっと素敵な船へ。
出来上がったのが今の船。大好きな、私自身。
人を蹴落とす嫌な大人に出会った時も
夢を否定された時も、叶える為に東京へ出てきた時も
どんなに傷をつけられても、どんなに傷ついても
毎晩修理をして一緒に眠って、
翌日また大きな帆を張って前へ進んできた。
何度も継ぎ足した私だけが知っている、最高なこいつ。
乗り換えてしばらく経った今、
信じ難いがどうやら最近
また穴が広がり浸水してきているようで
舵もなんだか上手く効かないし、
そろそろかなと思い立ちこれを書いている。
次はどんな船になるだろう。
ワクワクして夜も眠れない。眠ってなんかいられない。より大好きな大切な最高な自分になれるように
ふんだんに愛情をかけて、
また誰も真似できない設計図を描いていこうと思う。