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ものづくり未経験。31歳のわたしが食品ブランドを立ち上げるまでの話

「なんであまざけブランドを立ち上げたんですか?」
はじめましての方に、必ずといっていいほど聞かれる質問だ。

そこで、なぜわたしがあまざけブランド『KOMEGY』を立ち上げたいと思ったのか、そして、想いを抱いてからどうブランド立ち上げに取り組んでいったのかを書くことにした。

31歳。ゼロ→イチでのものづくりはこれが初めて。
わからないことだらけの中で奮闘するのは、不安やもどかしい気持ちが湧いてくる。けど、商品を手に取ってくれたお客さんからのうれしい声が聞ける瞬間は何にも代えがたい幸福感があるものだ。

マルシェ出店時の様子

新卒後のキャリアが応援購入サービス『Makuake』だったこともあり、社会人になって以来ずっと、ゼロ→イチでものづくりに挑戦する人たちの熱意に憧れを抱いていた。

「いつか、ブランドや事業を立ち上げてみたい。」
いつだって、今が一番若いとき。ということで、自分のやりたいことに正直になってみることにした。

ものづくりに取り組む人たちの熱意やそこに込められている想いはすばらしいものだ。中には、好きで好きでたまらなくて、「NO ●●, NO LIFE」ぐらい熱狂している人も多い。そんな人達と比べると、私のあまざけに対するスキ度は、普通かもしれない。正直、そんな気持ちで取り組んで良いのだろうかと思うこともあったし、今もある。

でも、知れば知るほど、古くから日本人の生活を支えてきたあまざけに魅了されていく自分がいた。もっと深く関わりたい、そう思う自分がいた。

そんな私の奮闘を書き記したnoteです。よければ、お付き合いください。


わたしとあまざけ

実家にいた頃は、母が買ってきたあまざけを季節問わずよく飲んでいた。でも、社会人になってひとり暮らしを始めてからは、意識的に飲むことは少なくなったように思う。

20代後半に務めていた日本酒蔵では、あまざけをつくっており、その美味しさに感動したのだが、その後、定期的に飲むような習慣にはならなかった。

それから30代に突入し、どうやら周りの大人が言っていたように、自分も疲れが取れづらくなってきたし、脂っこいものを食べた翌日は胃が痛むようになってしまった。

そんな時、あまざけと再会した。

「そういえば、あまざけってなんで冬に飲むんだろうな」

そんな素朴な疑問から、あまざけに興味を抱いた。あまざけには2つ種類あること(原料の違いによる。米糀と酒粕)、冬の飲み物のイメージが強いが、実はもともとは夏の飲み物だったこと(夏の季語)を知る。
"飲む点滴"といわれるほど、栄養素が豊富で、米と米糀で一晩発酵させたらできあがるそうだ。

初めて自作した甘麹。水をいれていないのでドロドロ。

へえ、知らなかった。あまざけって、よく知っているようで実は知らない存在だったかも。おもしろい。

気づけば、あまざけのことばかり考えるようになっていた。そして、もともと抱いていたブランドや事業をつくりたいという想いと重なっていった。

あまざけの魅力を伝えていきたい。私の挑戦が始まった。

より自由にあまざけの魅力を伝えていきたい

最初は、オリジナルブランドをつくるのではなく、既存の商品を仕入れて販売することを考えた。すでにおいしい米糀あまざけはたくさんある。ストーリーをもった酒蔵や味噌蔵などの製造所もある。

ただ、仕入れ商品では限られた範囲でしか展開できず、自由度が下がり、理想とするコンセプトや伝えたい魅力を広く伝えることが難しい。

飲むことで心が癒され、元気が湧き上がるような、そんな特別な米糀あまざけをつくりたい。そして、米糀あまざけの素晴らしさをもっと多くの人々に伝えたい。

そのためには、商品の品質からブランドのメッセージまで、一貫したこだわりを持って提供することが重要だと考えた。

そこで、自分自身のブランドを立ち上げることを決意した。

これだ!!!と思うと、猪突猛進的に動き始めるのが私の性格。まずは全国各地の酒蔵や味噌蔵から取り寄せたあまざけを飲み比べたり、スーパーで売られているあまざけを買い漁ったり。一口に「あまざけ」と言っても、作り手によって全く異なる味わい・口当たりであることを実感する。多様性のあるあまざけ、やっぱり魅力的だ。

想いはある。けど、口にするのは怖かった

それから、特に健康に気を使っている層の中で米糀あまざけがどんな受け入れられ方をしているのか気になり、SNSでヒアリングさせてくれる人を募った。

投稿してすぐに連絡をくれた友人と、その日のうちにヒアリングを実施。
「普段たべている健康食品はなに?」「それを摂り始めたきっかけは?」「健康に対する意識はいつ頃から芽生えたの?」など、まずは健康に関して聞いていく。

ヒアリングも半ば。なぜこのヒアリングを実施したかを伝える時、それまで勢いづいていた自分の中に質感のちがう自分がいることを感じ取る。

「オリジナルのあまざけをつくりたいんだ」

その言葉を口にすることに恐れを感じている自分がいる。

否定されたらどうしよう。
バカにされたらどうしよう。
これまでものづくりをしてきたわけではない自分。どうしていまさら?と思われたらどうしよう。

ひと呼吸おいている一瞬の間に、ネガティブな言葉が頭の中をかけめぐる。

でも沈黙しているわけにもいかない。
思い切って、言葉にしてみる。

…パソコンの画面越し。
ZOOMの四角い枠の中から放った友人の言葉は、

「すごい、めっちゃいいね!!!」

「あまざけをつくりたい」
たった10文字の言葉だけど、
自分にとっては未知の領域で、口にするのに勇気が必要な言葉だった。

その言葉に対する友人のポジティブな反応に、ものすごく勇気づけられた。

その後もひとり、またひとりと、自分が思うあまざけの魅力をプレゼンする中で、やっぱり私は米糀あまざけのブランドを創りたい。その気持ちがどんどん強くなっていくのを感じた。

数日間で合計20人にじっくり話を聞かせてもらった。
あまざけが好きな人、ニガテな人。
ふだんから飲む人、全然飲んだことがない人。
いろんな話を直接聞かせてもらうことができた。

忘れられない660円

次第に、自分がつながっていない人にも話を聞いてみたい。
そう思うようになり、リサーチする中で見つけた新宿のマルシェに出店。

初めてのマルシェ。何がどれくらい必要なんだろう。足りなくなるよりはと思って大量に仕入れたあまざけを車に積んで、いざ出陣。寒空の下、ビル風で凍えながらもなんとか準備完了。

隣のパン屋さんに絶えずお客さんが吸い込まれるのを横目に、少しおどおどしながら声をだしてみる。「米糀のあまざけ、いかがですか?」

足早に素通りしていくお客さん。会釈はしてくれても、立ち止まってはくれないお客さん。「あまざけだ」と言いながらも、そのまま通り過ぎていくお客さん。

こりゃ、いかん。ほかの出店者さんのブースをみたり、声の掛け方をこっそり聞いて、自分の声掛けを変えてみる。

「どこのあまざけ?」

そういって立ち止まってくれた初めてのお客さん。うおおお!!立ち止まってくれてありがとうございます!と、心躍っていることがバレないように、素人だとバレないように、内心ドキドキしながらも、準備してきた話をする。

「じゃあ、これ1本ください」

初めて買ってくれたのは、60代くらいの女性だった。

その方は、少し前はよく飲んでいたけど、最近飲まなくなってしまっていたらしい。理由は特にない。けど、「あまざけ」の文字をみて、そういえば飲んでいた頃、身体の調子もよかった気がする、また飲み始めたいなと思ったそう。

「ありがとうございました!」

お客さんから手渡された660円の小銭をみて、あたたかく、じんわりした気持ちが湧いてくる。

最初のお客さんがひとり立ち寄ってくれたことで、その後、ぽつりぽつりと、お店の前で立ち止まってくれるお客さんが増えていった。

この日買ってくれたお客さんは全部で約20人。興味をもって立ち寄ってくれた人たちも合わせて約50人とあまざけの話をさせてもらった。

もちろん、あまざけについて詳しく知っている人もいたが、そうではない人の方が圧倒的に多かった。そして、魅力を伝えることで興味を持ってくれる人もたくさんいた。

私にできることはまだまだたくさんありそう。そう確信したマルシェ初挑戦の一日だった。

はじめてのものづくり

その翌日。事前に問い合わせをしていた製造所数社とそれぞれオンラインで打ち合わせを実施。人生で初めてのものづくり。製造所の概要を一通り説明してもらいながら、製造のすすめ方や最小ロット数、具体的な費用面などをたずねる。

当たり前のことだけど、製造所によってスピード感の違いや対応できること・できないことがあるのを実感する。

検索欄に「あまざけ 委託製造」と打ち込んで探した製造所、たくさん飲んだ中でおいしい!と思った製造所、あわせて4社に話を聞かせてもらった。

最終的には、一番最初に打ち合わせをさせてもらった新潟の製造所に正式にパートナーとしてお願いさせてもらうことに決めた。

それからあまざけづくり、ラベルづくり、販売サイトづくりを並行して走らせた。「粒感の調整はできるのでしょうか?」「糀を変えることはできるのでしょうか?」「ほかの原料を加えることはできるのでしょうか?」「容量の調整はできるのでしょうか?」…たくさん湧いてくる疑問点・不安点。

製造所の担当者さんは、私の素人質問に対しても、ひとつひとつ、とても迅速に、かつ丁寧に対応してくれて、ここにお願いして良かったと、まだ完成していない中、実感する。


ラベルデザインは、こだわりたいと思っていた点が3つ。

1. シンプルにする
2. 「朝」が伝わるようにする
3. アルコール・砂糖を使っていないことを入れる

ひとつはシンプルなデザインにすること。

もうひとつは「朝に飲んで、元気になってほしい」という想いから、朝が伝わるようなデザインにすること。もちろんいつ飲んでも良いのだけど、個人的には、エネルギー源になるブドウ糖を豊富に含む米糀あまざけを、忙しい朝に、さっと飲んで、1日を活動的に過ごしていってほしいと考えた。

そして最後は、ラベルの中に、アルコールが入っていないことと砂糖を使っていないことを入れること。

友人知人にヒアリングさせてもらったり、マルシェでお客さんとお話をする中で「そもそも、あまざけってアルコールが入っているのか入っていないのかわかりにくい」「甘い印象があるから、砂糖使っているんだと思っていた」という話がよく挙がっていた。

そこで、ラベルを見ただけでパッとわかりやすくなるようにしたいと考えていた。

デザイナーさんがあげてくれたラベルデザインイメージ。最終的に、食品表示法の兼ね合いで「ノンシュガー」という表記はできないということで、「お米の自然な甘み」に変更。

テスト販売スタート

初めてのことを同時並行ですすめて、カオスになりながらも、なんとか製造の目処がつき、ラベルデザインが完成。そのタイミングで、BASEを使って立てた自社サイトでの予約販売をスタート。

最初に立てたBASEでのサイト


ただ、もちろんサイトをオープンさせただけでは、お客さんは入ってこない。

まずは自分のSNSを使って呼び込みをせねば。

テストでラベル貼りしてもらった瓶をつかって素材写真をパシャリ。
SNSに投稿する文章を考える。書いては消して、書いては消して。長くなりすぎていないかな。逆に淡白になってしまっていないかな。

そんなことを思いながら書き上げた文章と写真をSNSにセットする。
いよいよだ。

ここでもまた、友人にヒアリングをさせてもらった時に出てきたネガティブワードが湧いてくる。

全く反応がなかったらどうしよう…。

ドキドキしながら、パソコン画面を眺める。Facebookの投稿ボタンに置かれたカーソル。なかなかクリックが押せなかった。

「ま、しぬわけじゃないんだし。一旦やってみよっ!」
頭の中をいろんな思考がぐるぐる駆け巡った結果、「ま、いっか!」とポジティブな気持ちが湧いてきて、そのノリでポチリ。

投稿後しばらく、パソコンから目が離せなかった。
はやく、誰かいいねつけてくれないかな。誰かコメントくれないかな。誰か買ってくれないかな…。

ドキドキしながら待つこと数分。

「おもしろい試みですねー!購入しました!」

一番最初のコメント。嬉しすぎて、思わず「よしっ!」という声とともにガッツポーズが出てしまう。その後も「いよいよですね!」「あまざけ好きなので、買いました!」「応援してる!」といううれしい言葉が続いていく。

我が子を見送る気持ち

初回のロット数、180本。
これを売り切ることを最初の目標に掲げていた。

結果、2週間ほどで無事に完売。

もともとあまざけが好きな人、そうではないけど応援の気持ちで買ってくれる人もいた。これをきっかけに米糀あまざけを習慣的に飲む人がひとりでも増えていってくれたらうれしいな。

そんなことを思いながら、買ってくれたひとりひとりにメッセージカードを手書きしたり、梱包物をつくったりして配送準備を進めていった。

「KOMEGYの配送準備ができました」
新潟の製造所から連絡があった。いよいよだ!

最初のお客さまへの配送作業は、自分でやろうと決めていたので、スペースのある実家へ配送してもらった。

到着日。180本のあまざけが一室に運び込まれていく。段ボールを開けて、中身を確認する。「これが、これからお客さまの手に届く予定のKOMEGYだ」やっと届けられるうれしい気持ちと、ちゃんと喜んでくれるだろうかという不安が湧いてくる。

一本一本検品しながら、配送時に割れないようにぷちぷちの梱包材を巻いて、箱詰めしていく。「喜んでもらえますように」心を込めて、KOMEGYと同梱物を入れていく。

すべての梱包作業を終え、迎えた初めての出荷日。部屋に積まれたKOMEGY約100箱。

足の踏み場に迷うほどでした

こんなにたくさんの荷物の配送をお願いするのははじめてだな〜なんて思いながら、配送業者のお兄さんが集荷にくるのを待つ。

ピンポーン。集荷を依頼した、青い制服のお兄さんがやってきた。大きなカートに梱包したKOMEGYをどんどん積んで運んでいく。

ここまでくるのにめちゃくちゃ時間かかったのに、運ばれていく時はほんの一瞬だった。母親ではない身でいうのもおかしいけど、我が子を見送るような気持ちで、出荷されていくKOMEGYをながめた。

一番早い人で、翌日には届く。どんな反応があるだろうか、配送途中で割れたりしないといいな…。不安な気持ちを抱きながら、無事にお客さまの元に届くのを祈る。

そして、むかえた翌日。「届いたよ!」最初に受取連絡してくれた友人からのLINEを開く。

「届いてすぐ飲んだけど、めちゃくちゃ美味しいね!飲みやすすぎてびっくりした。」

思わずガッツポーズが出る。よかった。手掛けてきた手触りのあるモノが、大切な人たちに届くことの喜びに満たされた瞬間だった。

その後も、「おいしい!」「ありがとう〜!」「また買うね」といううれしいコメントがたくさん届いた。

本格的な販売をスタート。応援よろしくお願いします!

こうして、初回ロット分の配送は一旦無事に終了。

構想から約3ヶ月。いろんなものを並行して走らせて、てんやわんやしながらもなんとか最初の一歩を踏み出せた安堵感に包まれる。でも、これがほんとに最初の一歩。わたしがやりたいのは、より多くの人にあまざけの魅力を知ってもらうこと。知らない人たちに対してももっとお届けをしていきたい。

それから、突貫だったショップサイトを見直し、EC運営されている先輩たちの意見を参考にしてショップサイトのシステムを移行。

そして、6月5日。ショップの準備が整い、5月に設立申請した法人の設立がみとめられたことから、その報告をSNSに投稿。ここからKOMEGYの本格的な販売がスタートした。

リニューアルしたサイト

KOMEGYは、現在、私ひとりで運営している。お客さま対応も、SNSやメルマガの運営も、マルシェへの出店も、配送作業も。

限られたリソースではあるが、やりたいことは無尽蔵に湧いてくる。思うようにできなくて、ぐぬぬ…と思うこともたくさんある。けど、お客さんに買ってもらえて、うれしいコメントがもらえて、リピート購入してくれる人もいて。そのうれしさはやはり何にも代えがたいものがある。

これからさらに多くの人にKOMEGYを手に取ってもらえるように、オンラインショップでの販売を中心にしながら、マルシェでの販売や、卸を通した販売にも挑戦していきたいと考えている。

運営自体はしばらくひとりで続けようと思っているけど、これから広げていくところは、ひとりではできない。いろんな人のちからを借りながら、米糀あまざけの魅力を伝えていきたい。

ぜひ、あなたにもお力添えいただけたら嬉しいです。
以下、完全にお願いゴトになっちゃうのですが、応援いただきたいこと、書いてみます!

☑ KOMEGYを買って応援!
☑ 販売先を紹介して応援!
(百貨店・飲食店・食品販売店・腸活に関連するサロン・ジムなど…)
☑ #KOMEGYをつけて情報シェアして応援!

🌾 KOMEGYの販売サイトはこちら👇️


「子どもの頃に飲んでからニガテ意識があったけど、KOMEGYは飲みやすいね」

そう言ってもらうことがとても多いです。

明治期創業の味噌蔵さんの糀と新潟のお米を製造所がこれまで培ってきた技術をもとにあっさりした甘みを実現。さらに、飲みやすいようにあえて粒感を少なくしていることがポイントです。

これからもいろんな人に応援してもらえるよう、駆け抜けていきたいと思います。

ここまで長文を読んでいただき、ありがとうございました!オリジナルあまざけブランドづくりに取り組み始めてからの日々はあっという間に過ぎていった感覚があったので、それを残しておきたいと思ってこのnoteを書き始めました。

たった数ヶ月前の出来事ではありますが、怒涛すぎて忘れているところもしばしば…。当時書いていた日記やカレンダーを見直して、時系列を整理しながら、「そうだ、あの時こんなこと感じていたんだった」と思い出しながら、書き進めてきました。
改めて言葉に落とし込むのはとても時間がかかったし、大変ではありましたが、振り返る良いきっかけになりました。

まだまだこれから。応援してもらえるように頑張っていきますので、どうぞよろしくお願いします!

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